Maison book girlは一線を画する存在へ “総合芸術的”グループの魅力を考察

ブクガの芸術性を考察

 Maison book girl(以下、ブクガ)に対する注目度がこの春以降、じわじわと高まっているように感じる。それは4月にリリースされたメジャー1stアルバム『image』、および同作を携えて開催された全国ツアーとそのファイナル公演となった赤坂BLITZでの『Solitude HOTEL 3F』に対して好意的な声が多いことからも伺えるだろう。ブクガ史上最大規模のワンマンライブとなった赤坂BLITZ公演は、残念ながらソールドアウトとはいかなかったものの、ほぼそれに近い状態までフロアを埋め尽くすことができたのだから、現在のシーンの中ではかなり恵まれた状況にいることは確かだ。

Maison book girl「cloudy irony」MV

 ブクガは2014年、コショージメグミが音楽家のサクライケンタのもとで結成したポップユニットで、現在のメンバーはコショージ、矢川葵、井上唯、和田輪の4人。サウンドは“割り切れない”変拍子を多用した独特なニューエイジミュージックそのもので、その上に4人の素直な歌声が乗ることで他のアイドルグループ/ガールズグループとは一線を画する個性を確立させている。

 また面白いことに、ブクガの作品には毎回必ず1曲はポエトリーリーディングを導入した楽曲が収録されている。これらの楽曲ではコショージが作詞を手がけており、“歌モノ”とはまた異なる魅力を放つ。その内容もハートウォーミングなものから、不穏な気持ちを抱えたまま終了するものまでさまざま。こういう“聴き流せない”、“一筋縄でいかない”のがブクガの楽曲の強みではないだろうか。

 が、しかし。彼女たちのすごさはこういった音楽面だけにとどまらない。各曲にはストーリー性を強く感じさせる、ある種演劇チックな振り付けを用意。どこかコンテンポラリーダンスにも通ずるその振り付けと、先述のニューエイジミュージック的サウンド、ストレートに歌う彼女たちの歌がミックスすることで、ステージ上ではブクガにしか創り得ることができない唯一無二の世界観が展開されるのだ。初見時こそ度肝を抜かれるかもしれないが、二度三度と回を重ねるごとに、その“エグみ”がクセになり、気がつけば彼女たちの魅力から抜け出せなくなっているはず……筆者も間違いなくそのうちの1人なのだから。

 そんなブクガはインディーズでの活動を経て、昨年11月にシングル『river』でメジャーデビュー。今年2月には新曲「faithlessness」入りCDが付いたライブBlu-ray『Solitude HOTEL 2F+faithlessnesss』を発表し、4月には先に触れたメジャー1stアルバム『image』を発売と、順調に作品を重ねている。特にアルバム『image』の完成度には一聴に値するものがあり、「ending」と題した短いインスト曲から始まり、「opening」と名付けられたポエトリーリーディング曲で終わる構成の独特さ、アルバムのど真ん中に10分以上にもおよぶインスト曲「int」を配置するなど、通常のアイドル/ガールポップでは考えられないようなセットリストとなっている。もちろん、その間に収められたボーカル曲の数々も4分の5拍子や4分の7拍子など変拍子を多用したものばかりなのだが、親しみやすいメロディと心地よい歌声の組み合わせにより、終始気持ちよく楽しむことができる。ある種、ブクガ立ち上げからこの春までの集大成的作品と言えるだろう。

Maison book girl「sin morning」MV

 冒頭でも触れた、同作を携えたツアー最終公演の『Solitude HOTEL 3F』では、ライブ本編でアルバム『image』を完全再現し、1曲目「ending」からラストの「opening」まで順々に披露。紗幕の後ろで歌い踊ることで、フロアからはメンバーのシルエットしか見えないという演出や、曲ごとに用意された印象的な映像を背に歌い踊る4人……視覚要素が加わったことで、『image』という力作が本当の意味で完成した瞬間だった。この貴重なライブの模様は、現在YouTubeでフル公開されているので、会場に足を運ぶことができなかった人はぜにチェックしてほしい。

Maison book girl 2017,05,09『image tour final “Solitude HOTEL3F”』 @AKASAKA BLITZ

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