『つぐもも』『恋愛暴君』『ひなこのーと』……今期アニメ注目OPテーマを徹底分析

あ・え・い・う・え・お・あお!! / 劇団ひととせ(作詞・作曲:松浦勇気 編曲:睦月周平)

あ・え・い・う・え・お・あお!! / 劇団ひととせ

 曖昧3センチ(『らき☆すた』OP「もってけ!セーラーふく」/2007年)の系譜というかGJ部(『GJ部』OP「もうそう☆こうかんにっき」/2013年)の遺伝子というか(でもダンスは2011年『日常』っぽい?)、久しぶりにやってきたバッチバチでガッチガチなアニソン。最近ではあまり聞くこともなくなった“電波ソング”というワードをここで使わずしていつ使うというのか。今やアニソンとひとまとめにしてしまっても、その中でもロックだったりポップスだったりシンフォニックだったりするものだが、拡大し続けるアニソン大陸において、こうした原始アニソンとでも言うべき楽曲が2017年になっても生まれてくることに感謝したい。

 この曲はオフィシャル的にも変拍子と早口をアピールしており、開幕10秒でその威力を思い知ることになる。ズレる部分を全て四分音符単位でカウントするべきか、アクセントを意識して<楽しんでください>を5/8でとって、次を3/8、次を6/4で取るべきか悩ましいところだ。続く早口言葉の部分では5/4が出てきたりもするが、こうした変拍子が好きな人はしっかりカウントをとってタイミングを覚えるのがひとつ楽しみだったりもするだろう。音ゲーになった時が楽しみな楽曲といえる。

 イントロで変拍子フェスの洗礼を受けたならば、メロの5拍子くらいならそれほど違和感なく聞けてしまうのが慣れの恐ろしいところだ。この後Bメロでは3/4がやってくるが、それすらも自然な流れに聞こえてくる。ボーカルは電波ソング恒例のわちゃわちゃトークパートで、「もってけ!セーラーふく」を思い出す10年来のアニメファンも少なくないだろう。しかしこのBメロ、後半はややミュージカル仕立てになっていて新鮮さを感じられるところでもある。キャラソンでこうした歌い方をしているのはいくつかあれど、OPとしてやってしまっているというのはこれもまたアニソンの懐の深さを感じるところだ。キャラクターの性格をOPの段階で伺い知ることができる。

 紆余曲折(?)あってのサビへ。ここはイントロと同じメロディーになっていて、いわゆるちゃんと聞けるパートとして作られている。全体のテンポこそ大人しいが、16分が混ざっていたりとややリズムキープを要求されるメロディーになのが歌ってみるとわかると思う。また、サビ自体のダイナミクスが抑え目なおかげで曲の印象のほとんどを変拍子成分にもってくことができると捉えることもできる。サビがサビ以外を引き立てるという、コペルニクス的楽曲とでも言うべきか。ちなみにサビラストの単語連打部分は全て4/4で取ることができる。 これぞアニソン、これぞ電波。個人的に、今期のファンタジスタ・アニソンだ。

 ピックアップはしなかったが、優しくないアニメの雰囲気を存分に感じさせる『正解するカド』のOPテーマ「旅詩」(徭 沙羅花 starring M・A・O)や、(K)NoW_NAMEの細やかなアレンジが光る『サクラクエスト』のOPテーマ「Morning Glory」など、聞き応えのある楽曲は他にもあった。特に『正解するカド』は岩代太郎が劇伴だけでなくOP曲も手がけているというのが特徴で、叙情的で壮大な雰囲気に『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』(1998年)の「奇跡の海」(坂本真綾)を思い出した次第だ。

 とはいえ、OPテーマを楽しむ最も良いスタイルは、そのアニメのOPとして視聴することだろう。作品としての面白さと、楽曲としての感動。それらを同時に味わえるのなら、これに越したことはない。今期はどの作品で最終話にエモーショナルなOPテーマを聴くことができるのか、特に『つぐもも』あたりには期待したいところだ。

■ヤマダユウス型
DTM系フリーライター。主な執筆ジャンルは音楽・楽器分析、アーティストインタビュー、ガジェット、プリキュアなど。好きなコード進行は<IVM7→VonIV>、好きなソフトシンセはSugarBytesの「Obscurium」。主な寄稿先に『ギズモード・ジャパン』、『アニメイトタイムズ』、『リアルサウンド』。

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