Theピーズ初武道館に向け、盟友たちが“エール” 兵庫慎司のARABAKIスペシャルライブレポ

Theピーズに盟友らが送った“エール”

 2017年4月30日、『ARABAKI ROCK FEST.17』2日目の磐越ステージにて、多数のゲストアーティストを招いて『Theピーズ30周年スペシャル』が行われた。

 『ARABAKI』はこのような特定のアーティストのスペシャルライブを毎年企画しており、前日の4月29日には『ACIDMAN 20th Anniversary Special』が行われ、浅野忠信や小林武史、斉藤和義、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦&加藤隆志などが出演した。もうひとつ、29日にはLOVE PSYCHEDELICOがスペシャルバンド編成&ゲスト多数でボブ・ディランの曲をカバーするライブも行われている。そして30日には、仲井戸麗市・三宅伸治らによるスペシャルバンドがRCサクセション『COVERS』の曲をやるトリビュート・セッションも行われ、奥田民生、吉川晃司、甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)、斉藤和義、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、中納良恵(EGO-WRAPPIN')、Leyonaがボーカルをとった。

 ちなみに昨年は、サニーデイ・サービスがはっぴいえんど『ゆでめん』を、シアターブルックが亡くなったばかりだったデヴィッド・ボウイの『★(Blackstar)』をカバーするトリビュートライブが行われている。

 要は「特定のアーティストのステージにゲスト多数」と「特定のアーティストの作品を誰かがカバー」の 2種類があるということですね、『ARABAKI』のセッション企画には。いずれにせよ、「この年のこのフェスでしか観られないものを観せたい」という主催者の志が毎年貫かれていて、今年のそのひとつがピーズになった、というわけです。言うまでもなく、ピーズが結成30周年記念の日本武道館ワンマンを6月9日に行うので、それへのエールとして組んでくれた企画なのだろう。

 なお、ピーズがこのような、ゲストを多数招いた記念ライブを行うのは2回目。1回目は結成20周年の2007年6月9日に、今はなきSHIBUYA-AXにて。ゲストミュージシャンの多くが……というか、ほとんどがこの『ARABAKI』と同じだったりする。あれをこのタイミングでもう一回やりたい、というご本人たちの希望もあったという。なお、そのライブは『Theピーズ 20周年ライブat SHIBUYA-AX』というDVDになってリリースされた。

前置きが長くなったが、では以下、その4月30日の『Theピーズ 30周年スペシャル』の模様について。

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 磐越ステージで14時30分スタート。ひとつ前のSHISHAMOのステージが終わり、ステージスタッフが転換に入る。フェス等の場合、メンバー自ら出てきてセッティングやサウンドチェックをするバンドが多く、ピーズもそうなわけだが、はる(大木温之)、オーディエンスに話しかけたり、メンバーやスタッフをいじったりしている。

 で、セッティングが終わり、アビさん(安孫子義一)とシンちゃん(佐藤シンイチロウ)はいったんステージを下りたのに、はるは残ったまま。そして曰く、「あと10分ぐらい、なんにもすることがない」。「じゃあはければいいのに」と思ったが、「大変なんだ、ひとりでお客さんの相手しなきゃいけないから」みたいなことも言っていたので、スタートを待ってくれている人たちへのサービスのつもりだったようです。

 その後、「今日これから出てくる中で武道館やったことがないのは俺とアビさんとトモ(TOMOVSKY)だけ。武道館童貞三兄弟」という話をして「ああ、そういえば確かに」とオーディエンスを納得させたり、ステージに出てきて意味なくうろうろしていたトモが前に出てビシッとしたかと思うと急に「ピーズをよろしくお願いします」と言ってお辞儀したり、阪神タイガース掛布雅之のタオルを掲げて己の掛布愛を叫んだり、アビさん&シンちゃんがやや早めに出てきて持ち場についてニコニコするなどして、その10分をつぶす。

 そして定刻、14時30分。ARABAKIの登場ジングルが鳴り、ビジョンにこの前日に「Theピーズ30周年特設サイト」にアップされた仙台在住の作家、伊坂幸太郎の直筆コメントが大映しになってから、ライブがスタートした。ちなみにこんなコメント。

ロックンロールは恰好良くて楽しくて気持ちいい、ということを30年間恰好良い言葉を一切使わずに表現してきたことは偉大なことだと思うのです。
伊坂幸太郎

1.ドロ舟〜2.ブラボー

 まず頭2曲は3人だけでプレイ。はる、さっきの掛布タオルを首に巻いて歌っている。コンディションよさそう、3人とも。「ブラボー」は「新しめの曲なんで3人ででしかできない」という前置きありで演奏された。

3.グライダー

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THE COLLECTORS古市コータロー

 最初のゲスト、2カ月前に初の日本武道館を大成功に終わらせたばかりのTHE COLLECTORS古市コータロー、佐藤シンイチロウに呼び込まれ、裸の上にTheピーズ30周年ハッピを羽織って登場。これ以降のゲストもステージスタッフも全員、つまりピーズの3人以外はこのハッピ姿でした。

 「コータローくんのギターの音、モニターに返してください」と頼み、彼のテレキャスターの「♪ジャーン」という鳴りを確かめたはる、その音のあまりのかっこよさに「絶対いいぞ、これ。俺もうダメだ、今日」「(このライブが終わったら)毎日泣いて暮らします」などと漏らす。

 で、演奏スタート。曲がミドルテンポの「グライダー」なこともあってか、コータローのギターの超かっこよさに、みんな盛り上がるというよりも固唾を呑んで聴き入る空気になる。曲終わりではる、「コータローくん、終わったらすぐ出なきゃいけないスケジュールなのに来てくれた」とお礼を言う。

4.とどめをハデにくれ

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フラワーカンパニーズ鈴木圭介

 コータローとすごい身長差、ハッピがまるでハーフコート状態のフラワーカンパニーズ鈴木圭介が登場。ライブ会場&全国のライブハウス限定リリース中のニューシングル『あまくない』に収録、武道館へのエールとしてカバーした「とどめをハデにくれ」をここでも歌い、ハープを吹く。圭介、「この曲こそ、レコーディングした時の俺の気持ちにぴったりだった」「今いちばんリアル、この曲が」と最近のインタビューで話していただけあって(こちらです)、熱のこもった歌を聴かせた。

5.実験4号

 はる、「ベース弾くの飽きてきたんで」と、ウエノコウジを呼び込む。告知されてなかったウエノの登場に沸き立つオーディエンスの前で、彼に自分のベースを渡し、「ザ・トータス松本!」とコール。トータス、「“ザ”てなんやねん! “ザ”なんてないわ!」と出るや否やツッコミを入れるも意に介さないはる、「山奥に芸能人がやって来たぞー!」と叫ぶと、トータスが間髪入れず「♪クリアアサヒ!」と歌い、オーディエンス爆笑。トータス曰く、前日のLOVE PSYCHEDELICOのステージでやったらウケたもんで、つい……だそうです。

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ウエノコウジとトータス松本

 ウルフルズが1999年にリリースしたベストアルバム『Stupid&Honest』に、ピーズのこの曲をカバーして入れたい、ついては参加してほしいとトータスがオファーしたが、当時はピーズ活動休止中、ミュージシャン廃業状態で料理人だったはるは断った。しかしトータスはあきらめず、ピーズのレコーディング・トラックからはるのボーカルとベースを抜き出し、それに自分たちの歌と演奏をかぶせてウルフルズ・バージョンを作った(なのでツイン・ボーカル)ーーという、とてもとてもいい話のある曲、「実験4号」をこの日もトータス、歌う。

 はるは、「僕ハンドマイクかっこ悪いから歌うなって友達に言われてます」とのことで、手ぶらでトータスの横でウロウロしたり、時々叫んだり歌ったりしている。

 曲が終わってはる、「ウエノコウジ、音でかくね? すごいゴリゴリじゃなかった?」。応えてアビさん、「すっごいやりやすかった」。みんな大笑い。

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