アイドルネッサンスが初オリジナル曲を歌う意味ーー「交感ノート」お披露目ライブを観た

アイルネ、初オリジナル曲を歌う意味

 アイドルネッサンスにとって初のオリジナル曲「交感ノート」を、4月2日に渋谷WWW Xで行なわれた『シブヤでオリジナルネッサンス!!』で聴いた。まずは、この「交感ノート」に触れる前に、アイドルネッサンスがオリジナル曲を歌う、ということの意味を説明したい。

 2014年に結成したアイドルネッサンスは、これまで1950年代から2010年代までの古今の名曲を歌とダンスで表現する“名曲ルネッサンス”をテーマに活動してきたグループである。Base Ball Bear「17才」にはじまり、最新カバー曲であるジャパハリネット「物憂げ世情」まで、2017年4月現在でカバーの持ち曲は全71曲にも上る。昨年、11月6日にZepp DiverCityで開催したワンマンライブ『お台場で迸るネッサンス!!』は、グループ史上最大キャパシティを誇る会場での公演。スペシャルバンドとゲストを迎え、彼女たちが目指した一つのゴール地点であり、これまでのキャリアを総括した集大成のようなライブであった。そのライブ終盤でメンバーの石野理子から発表されたのが、オリジナル曲への挑戦であった。

「新しいアイドルネッサンスをみなさんに見せていくために、私たちが成長していくために。来年、2017年春にオリジナル曲に挑戦し、CDとして発売することが決定しました」

 会場に集まった全員が固唾を飲む、あの瞬間の空気は今でも忘れられない。それは、オリジナル曲初披露となった『シブヤでオリジナルネッサンス!!』においてもそうだった。どこか心が落ち着かない、緊張感に満ちた空気が立ち込めていた。アイドルネッサンスが、オリジナル曲を歌う。これは新しい挑戦であり、見方を変えればコンセプトを崩し、一から始めるということ。何色にも染まっていない彼女たちが、白い制服に身を包み『17才』で鮮烈なデビューを果たしたのが3年前。長い月日をかけ、一つひとつ、丁寧に、彼女たちの世界観を築き上げてきたのは、この会場に集まった全員が痛いほど分かっていた。それほどまでに、アイドルネッサンスが今回のオリジナル曲で背負うものは大きい。

 「交感ノート」は、この日のライブでは6曲目とラストの2回歌われた。作詞、作曲は「17才」を手掛けたBase Ball Bearの小出祐介。メロウな優しい打ち込み音に、エレクトロニカをベースとした淡く、温かな電子ピアノ。派手に盛り上がるアイドルソングというわけではなく、極めて少ない音数で構成されているのが分かる。開かない踏切の前にいる私と僕、女の子と男の子の刹那の感情の揺れ。一番の歌詞では女の子、二番では男の子の心情が描かれ、三番では二人の気持ちが重なり合う。

<“ねぇ、交換しよう?”/君に伝えたいよ>

 サビではこのフレーズが繰り返され、ラストは「ねぇ、おはよう」と言葉を交わす。踏切と心の壁を表したサビの振り付けも印象深い。タイトルが表す通り、交換ノートを“交感ノート”と表現する、“青春”を歌い続けてきた小出らしい楽曲だ。楽曲の季節は初夏。サウンドは違えど、「交感ノート」を聴き終えた後に覚える感情は、どこか「17才」に似たまっさらなものだった。以前、アイドルネッサンス運営チームの照井紀臣氏のインタビュー取材(http://realsound.jp/2016/10/post-9932.html)に同席した際、彼はこんなことを話していた。

「まさに青春真っただ中で、良くも悪くも日常的な香りがする子たちだったので、Base Ball Bearの曲に描かれている、青春時代の弾ける雰囲気、加えて葛藤や切ない感情などの部分が似合いそうだと考えました」

 小出は、アイドルネッサンスのYouTubeチャンネルに上がっている動画を全て見た上で、楽曲の制作に着手し、本番前のリハーサルにも顔を出し、最後まで音響を確認したのだという。Base Ball Bearのアルバム『光源』レコーディング、バンドのツアーも並行して行われていることを考慮すると、恐ろしいスケジュールだ。

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