牧野由依がライブで見せた明確な変化 彼女がいま“歌い踊る”意味とは

牧野由依がいま“歌い踊る”意味

「今までは弾き語りだけをやってきましたが、“歌って踊る牧野由依”が普通な人もいるのかなって。だから“普通”を具現化して取り入れたいし、私自身の成長に繋がるといいな」

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 牧野由依が、ソロライブで踊ったーー。1月22日、恵比寿ガーデンホールで開催された牧野由依のワンマンライブ『YUI MAKINO LIVE―Thanx Beginning♪―』は、彼女のステージングにおける明確な変化を感じ取れる公演だった。

 牧野は数々の作品に出演する人気声優の1人だが、一方で音楽家としての側面も持つ。音楽大学の器楽科を卒業したピアニストでもある彼女は、ステージ上では鍵盤での弾き語りやピアニカを演奏し、観客は伸びのある声で歌唱する姿をゆったりと楽しむ。牧野のステージは、音楽的にも毎回貴重な体験を聴き手に与えてくれる「コンサート」なのだが、今回は「ライブ」がテーマであったことを、公演が進むにつれて感じることとなった。

 その音楽的な充実は、ジャズコンサートのようにしっとりと始まった冒頭から明らかだ。コートを羽織って登場した牧野は、松ヶ下宏之(Key./バンマス)率いるバンドメンバーが奏でた音に乗せ、ジャジーな「ウイークエンド・ランデヴー」、ピアニカを手に取った「Merry-go-round」、デンジャー今西(Ba.)と誇太朗(Dr.)によるリズムセクションと歌の絡みが心地よい「星に願うなら」を続けて歌唱。コートを脱ぎ、純白の衣装でピアノを弾きながら歌った「三月物語」と「What A Beautiful World」、そして「ウンディーネ」と“清い牧野由依”(本人談)が続く。

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「去年一昨年と、私、アイドルになる機会が多いんです(笑)。今日はそこを通して知ってくれた人も多いんじゃないかな。タイトルが『コンサート』じゃなくて『ライブ』であることの衝撃は、この後わかると思います」

 ミュージカルのような展開をみせる「ソルフェージュ」、要所に差し込まれるウィスパーボイスにドキドキさせられる「太陽を巡って」、雰囲気がぱあっと明るくなり会場の温度が上がった「secret melody」のあと、ついにその時が訪れる。MUSIC FOR MUSICのNaoki ItaiとMEGの手によってライブ用として機動力高めにアレンジされ、三宅“バスター”亨(Gt.)のギターも激しく響く「囁きは“Crescendo”」で、牧野由依が踊ったのだ。その衝撃は、これまでいつもの着席スタイルでライブを見守っていた観客が、牧野から「みんな、立ってもいいんだよ?」という声を掛けられるまで立ち上がらなかったほど。本人は「(曲の最初で立ってくれなくて)一瞬心が折れたんだよね」と自嘲気味に笑っていたが、客席から観ていた身として、これは決してネガティブな反応ではなかったのだとフォローしておきたい。

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 牧野の「ライブモード」はこの1曲だけに留まらず、キュートな振りを入れた「88秒フライト」や、セクシーな黒いワンピースに着替えたあとの「CESTREE」「Brand-new Sky」では、大胆にダンストラックへとアレンジが施された楽曲を、バックダンサー(これも牧野のライブでは初の試みだ)を従えながら激しく歌い踊ってみせる。

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 確かに、最近の牧野は黒須あろま(プリパラ)に佐久間まゆ(アイドルマスター シンデレラガールズ)と、メジャーなアイドルアニメコンテンツへの参加も多く、後者に関しては筆者も先日『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story』で、アイドルとして歌い踊る牧野の姿を目にしている。そこから入った新規のファンからすれば、歌い踊ることこそが“普通”であり、牧野はその価値観を通して自身のライブをもう一段上のレベルに上げることをこの数年で画策してきた。その成果が一連のパフォーマンスにはっきりと現れていたのだ。

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