アニメ主題歌の理想形? 『亜人(デミ)ちゃんは語りたい』を彩る、三月のパンタシアの“物語力”

三月のパンタシアの“物語力”を読む

 アニメ『亜人(デミ)ちゃんは語りたい』のエンディング・テーマである三月のパンタシア「フェアリーテイル」が、作品の世界観にほどよく寄り添いながら、物語の余韻を深いものにしている。アニメ主題歌として理想的な良曲だ。

 TOKYO MXほか各局で放送中の『亜人(デミ)ちゃんは語りたい』は、バンパイア、デュラハン、雪女、サキュバスなど、普通の人間とは異なる性質を持つ「亜人」が登場する学園コメディ。亜人はかつて差別を受ける存在だったが、社会の理解が進み、より親しみやすいように「亜人→デミ・ヒューマン→デミ(ちゃん)」と呼ばれるようになっている。

 同アニメはペトスによる原作コミック(講談社『ヤングマガジンサード』で連載中)に忠実に、基本的には、特殊な事情で悩む愛らしい亜人たちと、理解ある教員のほんわかした日常を楽しむ作品だ。一方で、際立った個性を持つ人にどう接するべきか、あるいは日常生活やコミュニケーションにおいて不便を抱える人をどう支えたらいいか……ということを押し付けがましくなく、心地よい温度で考えさせてくれることも、人気の要因だと思われる。

 そのエンディング・テーマに起用されたのが、ボーカリスト“みあ”を中心に、ネットで高い人気を誇るクリエイターが集結したプロジェクト=「三月のパンタシア」による3rdシングル『フェアリーテイル』の表題曲だ。爽やかで心地のいいトラックと、身近な人への感謝に溢れた歌詞が印象的だが、ただ楽観的に前を向く楽曲にはなっていない。それが、同様にただ楽しいだけのコメディではない『亜人ちゃんは語りたい』の世界観に、見事にマッチしているのだ。

 <おとぎ話で聞いたような 不思議な世界の出来事は案外近くにあって>の一節から始まるこの曲は、絆や友情を当たり前のものとして無邪気にシェアするのではなく、しかし目を凝らせば必ず見える大切なものとして描いている。“fairy tale”という言葉には「おとぎ話」のほか、「“信じられないほど”美しい」という意味もあるが、まさに日常の“当たり前じゃなさ”と、それゆえの大切さに気づかせてくれる楽曲だと言えるだろう。みあのイノセントな歌唱が、そのメッセージを強調している。

 このように「フェアリーテイル」は、楽曲単体でも成立する普遍的なメッセージをたたえている。しかし、心から信頼して悩みを共有できる仲間は必ずしも多くなく、それゆえに輝く瞬間をつなぎとめようと必死にはしゃぐ亜人たちの姿に思いを馳せると、相乗的に魅力が高まる一曲だと言えるだろう。まさに理想的なアニメ主題歌で、2月1日のシングルリリース日に際しては、Twitter上で「一通り主題歌聴いて今期最強曲」「アニメの内容を彷彿とさせるような歌詞で それプラスみあさんの素敵な歌声が重なるともうエンディングだけで神アニメだと伝わる」などの言葉も見られた。

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