「Suchmos以降」の視点で見る、2017年のキープレイヤーたち

Kan Sano / C'est la vie feat. 七尾旅人

 では、ここからは「Suchmos以降」の目線に立って、2017年注目のキープレイヤーをパートごとに紹介して行きたい。まず、キーボーディストとしてKan Sanoの名前を挙げよう。先日の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で蔦谷好位置が2016年のベストソングとして「C'est la vie feat. 七尾旅人」を挙げ、「ジャズやピアノ演奏の技術のある人がポップスに来て、ジャズやヒップホップ、ポップスの垣根が無くなった曲」として紹介していたが、これがまさに本稿で言うところの「Suchmos以降」の状況。SanoはすでにChara、UA、土岐麻子、あるいはSeihoのバンドセットなど、多方面で活躍をしているが、メディアへの露出によりさらに活躍の幅を広げることだろう。『関ジャム』で蔦谷はmabanuaの名前も挙げていたが、彼らの所属する<origami PRODUCTIONS>は今や日本の音楽シーンを裏で支える存在であり、その重要性が今年改めて認識されることになるはずだ。

 続いて、ベーシストとしてはハマ・オカモトを挙げたい。言わずと知れたOKAMOTO’Sのメンバーであり、近年では星野源の作品にも参加するなど、ここでわざわざ名前を出すまでもなく、すでに今の日本を代表するプレイヤーの一人ではある。ただ、彼がかつて所属していたズットズレテルズのメンバーを含むヒップホップクルー・KANDYTOWNが昨年メジャーデビューを果たし、そのメンバーである呂布がSuchmosの『THE BAY』に参加していたことを考えると、キーパーソンとしてのハマの存在が改めてクローズアップされるように思う。すでにHSUとはウェブメディアで対談を行い、意気投合した模様。新たな波が起こり始めている、その予兆がヒシヒシと伝わってくる。

 ドラマーとしては、石若駿の名前を挙げよう。海外の新世代ジャズとも共振する若手として、先輩と言うべき関係性のYasei Collectiveの松下マサナオと共に、すでに大注目のドラマーだが、昨年は現在ceroのサポートを務める小田朋美らと共にCRCK/LCKSとしてデビューし、さらには小田も参加したソロアルバム『SONGBOOK』でも歌ものを披露するなど、ポップス志向を提示してみせた。WONKのアルバムへの参加では、日本におけるジャズとヒップホップの融合を体現していたが、新たな展開を見せ始めた石若の動きからは、今年も目が離せない。

 最後に、唯一の女性プレイヤーとして、ギタリストの弓木英梨乃を挙げておこう。もともとソロアーティストとしてデビューした彼女だが、近年はKIRINJIのメンバーとして活躍し、2017年は6年ぶりのソロライブ『弓木流』を開催。RHYMESTERとコラボした「The Great Journey」やソロライブで見せたジャズファンク的な素養は、やはり今のシーンにマッチしたものであり、同じく近年ファンク志向を強めたBase Ball Bearのサポートに抜擢されたのも納得。ゲストに土岐麻子らを迎えた『弓木流』のVol.1に続いて、2月に開催されるVol.2にはNegiccoの出演が決まっているというのも、やはりブラックミュージック×ポップスな志向の表れ。彼女のさらなる活躍にも、ぜひとも期待したい。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

※記事初出時、一部表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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