>  > 陰陽座が語る、妖怪ヘヴィメタルの真髄

13thアルバム『迦陵頻伽』インタビュー

陰陽座が明かす、妖怪をコンセプトに掲げる理由「海外のバンドが竜や魔法や騎士なら、こっちは妖怪だ」

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 “妖怪ヘヴィメタル”をキャッチコピーに、約15年にわたりメジャーシーンで活躍するバンド陰陽座。彼らの通算13枚目となるオリジナルアルバム『迦陵頻伽(かりょうびんが)』がリリースされた。迦陵頻伽とは人頭鳥身、比類なき美声で鳴く想像上の生き物のことで、アルバムジャケットには黒猫(Vo)が迦陵頻伽に扮した幻想的な姿が描かれている。アルバム自体も独自のヘヴィメタルを極めつつも、その音楽性の幅をさらに広げており、唯一無二の存在感を示している。

 リアルサウンド初登場となる今回のインタビューでは、バンドのリーダーでありメインソングライターでもあるベーシスト兼ボーカルの瞬火(またたび)に、陰陽座における迦陵頻伽の意味するもの、独特な楽曲制作方法、バンドのスタンスなどについて話を聞いた。(西廣智一)

「『迦陵頻伽』をどういうものにするかは2011年には決まっていた」

ーー今回のニューアルバム『迦陵頻伽』は、2作同時リリースとなったアルバム『風神界逅』『雷神創世』(2014年9月発売)から2年2カ月ぶりの新作となります。このアルバムに向かうにあたり、どういう方向性、テーマを考えていましたか?

瞬火:今回の『迦陵頻伽』というアルバムをどういうものにするかは、実は2011年頃にはもう決まっていて。

ーーえっ?

瞬火:10作目のアルバム『鬼子母神』(2011年12月発売)を作っているときには、その次の11、12枚目(『風神界逅』『雷神創世』)が2作同時リリース、その次の13作目は『迦陵頻伽』という名前でこういうような内容のアルバムっていう、向こう3作のことは考えていました。

ーー例えば今作を作っているタイミングも、常にその次を考えていたと?

瞬火:はい。もちろん、そのとき作っているもののことしか考えず、時が来たら次に作りたいものを考えるというのも、創作におけるひとつの正しい形だと思うんですけど、僕の場合は点ではなくて線で捉えるというか。この先どういうふうに流れていきたいかを常に考えるのが、自分にとっては自然なんです。次にこうしたいという思いがあるからこそ、今作はこうするのだという明確な創作の方向性もできますし。なので、当然今回の『迦陵頻伽』を作っている中でも、次作というものはすでに見据えてはいます。

ーーなるほど。これまでの陰陽座の活動を振り返ると、ビジュアルイメージ含めて非常にコンセプチュアルだと思うんです。今回もアルバムジャケットで表現されている迦陵頻伽が、写真なのに絵のようでもあるという不思議な作風ですし。

瞬火:これは、いつもジャケット写真を撮っていただいている野波浩さんという写真家の方の写真なんですけど、こういう「写真なのに絵画のようでもある独特な世界観」を写真で作り出すことができる、世界でもかなり稀有な天才写真家なんです。この迦陵頻伽に扮しているのはボーカルの黒猫なんですけども、あたかも迦陵頻伽が実際にそこに存在しているかのような、それでいて絵に描いたようなという幻想的なビジュアルにしていただこうと思って。今回は思っていた以上に迦陵頻伽の姿を切り取ることができて、おそらく迦陵頻伽というものを実写的なビジュアルで表現したものとしては金字塔だと思うんです。音楽と関係ない話ですけど。

ーーいえいえ。そこまで含め、バンドとして表現したいものがあるということですもんね。

瞬火:そうですね。陰陽座の楽曲テーマは主に、日本の伝承であったり妖怪であったりという、音楽シーンの中で見ても特異なものを扱っているとは思いますので、そのテーマにしているものがアルバムの顔になるアートワークで感じられたほうがいいと思いますから。それはいつも心がけています。

「海外のHR/HMバンドが竜や魔法や騎士なら、こっちは妖怪だ」

161130_member_Main_MTB_2016.jpeg瞬火(歌唱、ベース)

ーーちょっと新作の話題から脱線しますが、日本の伝承や妖怪をコンセプトにしたヘヴィメタルバンドというのは、陰陽座の登場までシーンの中で見られませんでしたよね。

瞬火:ここまで特化した形では、極めて珍しいとは思います。でも、例えば日本語にこだわって日本的なロックをやるということで言えば、大先輩に人間椅子さんという、今もバリバリ活躍されている最高にカッコイイ先達の方がいらっしゃいますけど、“妖怪ヘヴィメタル”というようなものを掲げているという意味では、ほとんどいないとは思います。

ーー海外のハードロック、ヘヴィメタル(以下、HR/HM)には中世の神話などをテーマにしたひとつのスタイルがあって、そういうストーリー性のある歌詞を仰々しいサウンドに乗せるという、それこそ70年代にロニー・ジェイムス・ディオがレインボーで表現した世界観がHR/HMリスナーの中に根付いていると思います。だけど、そういうスタイルを日本に置き換えて表現しようと思った人たちがこれまでメジャーシーンにいなかったというのが、すごく興味深い事実なんですよ。

瞬火:HR/HMが日本に伝わって、最初にいわゆるジャパメタブームが盛り上がったときは、「日本のバンドだって海外のバンドたちに負けないんだ」という意味合いが強かったと思いますし、その頃は題材としての妖怪だの戦国時代の武将だのというのは多くの人にとっては歴史の教科書に載ってる、テストのために覚えるようなジャンルという認識だったと思うんです。それを歌にする意義をあまり感じられなかったんでしょうけど、僕は歴史や妖怪が好きだし伝承や伝説も好きだったので、「海外のヘヴィメタルバンドが竜や魔法や騎士をテーマにするなら、こっちは妖怪だ」と。それになぞらえるというよりは、完全に個人の趣味、興味あるものとして、妖怪というものを通して人間の心を描くという着想を持っただけなんです。

ーーなるほど。

瞬火:でも音楽というのは例えば、できるだけ身近でリアルに感じられる、誰の胸にも届きやすい恋愛や青春など、汎用性の高いことを歌うほうが人々には届きやすいというのはわかっています。HR/HMでもそのような内容が歌いやすいと思うんですけど、もともと陰陽座はメジャーシーンに打って出ることを意識して作ったバンドではないし、メジャーデビューするとか人気が出て売れるとかいうことと無縁だと思っていたのに、うっかりメジャーシーンに躍り出てしまったという(笑)。単純に珍しかったのかもしれませんね。

ーーさらに、10数年にわたりメジャーシーンで活動している実績があるわけで、日本という土壌を考えるとそれ自体すごいことだと思います。

瞬火:そうですね。特に昨今、音楽やバンドを取り巻く状況は、ここで僕が改めて言うまでもないくらい厳しくなっていて、いい音楽を真面目にやっていればいつまでも続けられるとは限らない。ただバンドを続けるってだけでも大変なのに、そこで少なくともまだ存在していられるということは本当にただただ聴いてくださる、この陰陽座の作品を手に取って聴いてくださるファンの方に対しての感謝しかないですね。

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