Spotify、ついに日本上陸ーー注目すべきポイントは「更新性」と「グローバル化」?

 全世界に1億人以上の登録者が存在する音楽ストリーミングサービス「Spotify」が9月29日、ついに日本でのサービスを開始した。現在、招待制によるユーザー登録がスタートし、CMが流れる「Spotify Free」という無料プラン(スマホはシャッフル再生のみ/無制限、PC・タブレットはフリー再生/月最大15時間まで、以降はシャッフル再生で無制限)と、「Spotify Premium」という有料プラン(月額980円税込)を選びサービスを楽しむことができる。

 日本ではすでに、昨年からさまざまなストリーミングサービスが提供されているが、Spotifyを利用するメリットやほかサービスとの違いはどのような点にあるのか。音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏、柴 那典氏に話を聞いた。

 コウガミ氏は、音楽ストリーミングサービス各社が力を入れているプレイリストについて「Spotifyがプレイリストで音楽を聴く文化をつくった」と評価しながら、オリジネーターとしてのプレイリストの強みについて以下のように語る。

「Spotifyは各国にプレイリストのエディターチームをおいて、その国独自のプレイリストを制作しています。もちろん日本にも専門のエディターチームがいて、現在日本独自のプレイリストが続々と公開されている。エディターがその国の楽曲や音楽市場を知っていることが重要。たとえば、世界的な新譜は金曜日リリースなので『New Music Friday』というプレイリストで新曲が紹介されている。しかし邦楽は新譜が水曜日リリース。その新譜をどうやって多くの人に聴いてもらうかということは、ローカルでなければ考えることはできないですよね」

 また、コウガミ氏はプレイリストの「更新性」や「量」についてもほかサービスとは異なる点であると語る。

「SpotifyはPC版でプレイリストがいつ更新されたのかがわかるようになっているのでとても便利です。毎週月曜日に30曲ずつ自分の好みにあった曲が自動でキュレーションされる『ディスカバー・ウィークリー』という、リスナー一人一人に用意されるSpotify独自のプレイリストも特徴的。自分が聴いた音楽を分析してコンパイルしてくれるので、ちょっとしたMIXCDのようなものが毎週月曜日に更新されます。また、ユーザーがプレイリストを作って共有することもできるので、いいプレイリストを作れば、そこにフォロワーが増えていくというSNS的な機能も。ユーザー、Spotify、インフルエンサーと呼ばれるミュージシャン・DJが更新しているプレイリストがあわせて20億個くらいあり、これからもどんどん増えていくでしょう」

 一方、柴氏はSpotifyのプレイリストのリコメンド性について高く評価しながら、パーソナルにとどまらないコミュニケーションが生まれるサービスであることについてもふれた。

「Apple MusicもGoogle Play Musicもパーソナライズが進み、リコメンドの精度はあがっているけれど、基本的には個人で楽しむことを主体にしたもの。しかし、それに比べるとコミュニケーション性を内包しているのがSpotify。音楽を通した話題がつきない設計になっています。Facebookとも連携し、自分が好きな音楽だけでなく、自分の友達が聴いている音楽も知ることができる。人間関係のコミュニケーションのなかに音楽がある、という印象を受けました」

 さらに柴氏は、Spotifyの機能のなかでは独自サービスの一つ「チャート機能」に注目しているという。

「個人的に関心があるのはチャート機能。『グローバルTOP50』はSpotifyでの再生回数の上位50曲が毎日更新される。『グローバルバイラル50』はSNS上で拡散されている上位50曲が更新されています。これはApple Musicなどほかサービスにはない機能でとても面白く、“グローバルヒット”を可視化している。そして、サービス提供各国のTOP50やバイラル50もすべて見ることができます。自分が行ったことのない国のチャートの音楽にもふれることができるんです。見ていると、ほとんどの国で、その国のアーティストとグローバルなヒット曲が混ざり合っている。おそらくこの先は日本でもヒットチャートのあり方が全然変わってくるでしょう。Spotifyは全世界的な音楽マーケットに開けているものであるということが、チャートという可視化できるもので示されています」

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