anderlustが“スランプ”を乗り越えた先に見た景色 「これまでの中で一番自分自身を投影させた」

anderlustが“スランプ”を越えた先に見たもの

 越野アンナ(Vo./Gt.)と西塚真吾(Ba.)によるユニット・anderlustが、8月24日に2ndシングル『いつかの自分』をリリースした。同作は、前作に引き続いて小林武史のプロデュースで制作され、表題曲は“ノイタミナ”アニメ『バッテリー』(フジテレビ系)のオープニング・テーマに、カップリングのカバー曲「明日、春が来たら」(松たか子)と「若者のすべて」(フジファブリック)はエンディング・テーマとして起用されるという、トリプル・タイアップシングルに仕上がっている。ほかにも、YEN TOWN BANDの名曲「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」をカバーするなど、幅広い楽曲に挑戦したことは、2人にとってもプラスの体験になったという。リアルサウンドでは今回、越野と西塚にインタビューを行ない、同作での経験がanderlustに何をもたらしたか、そして越野が制作期間中に陥ったというスランプなどについて、じっくりと話を訊いた。(編集部)

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「ついに私たちにもバトンが回ってきた!」

ーーメジャー1stシングル『帰り道』は、映画『あやしい彼女』の主題歌に起用され、越野さん自身も映画に出演するなど、話題の多い作品となりました。そこから今回の2ndシングルに至るまでの“メジャーデビュー以降の活動”で、印象的な出来事を教えてもらえますか。

越野アンナ(以下、越野):私は『帰り道』のリリースイベントですね。ショッピングモールでライブをするなんて初めてでしたし、あそこまで距離感の近いものだとは思っていませんでした。屋外ステージでライブをさせていただいたときは、外も結構寒かったのですが、それでも来てくれる方たちがたくさんいて。歌いながら泣きそうになりました。

ーーライブハウスとはまた違った形で「人の温かさ」を知る体験だったと。

越野:そうですね。デビュー後はほぼ毎週LINE LIVEでの生配信でコミュニケーションを図ったりもしていたんですけど、物理的に近いというのは、やはりインパクトが強いですね。

西塚真吾(以下、西塚):僕も一番印象に残ったのはリリースイベントかもしれません。CDを買ってくださる方のありがたみを知ったというのは、自分たちにとっても大きくて。

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ーー前回のインタビューでは、越野さんから「変化していく様子を面白がりながら見守ってほしい」という主旨の発言がありました。今作はどちらかというと、大きな変化はなく、前作からの地続きのように感じているのですが。

越野:小林武史さんと私が一緒に作曲や作詞をして、それを私と真吾さんで形にしていくという大枠の部分は変化していないですね。今作はアニメ『バッテリー』に溶け込ませようと夢中になって作ったもので、アニメの思いや世界観をどう表現するかという部分に比重を置いた作品なんです。

ーー表題曲はフジテレビ“ノイタミナ”アニメ『バッテリー』オープニング・テーマとして書き下ろし、エンディング・テーマの松たか子さん「明日、春が来たら」のカバーのほか、フジファブリック「若者のすべて」、YEN TOWN BAND「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」のカバーも収録されていますよね。カバー3曲については、どういった判断基準でセレクトしたのでしょうか。

越野:アニメ『バッテリー』の制作スタッフさんから「エンディングには四季を表現できる曲を」ということで、春の曲として「明日、春が来たら」を提案して頂き、「若者のすべて」はスタッフのみなさんと相談してご提案し、この2曲を仮歌で歌わせていただいたときに「すごく良かった」と言っていただけたので、今回作品にも収録することになりました。

ーー「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」についてはどうでしょうか。

越野:私は個人的にこの曲への思いが強くて。自分と同い年の曲ということもありますし、今までもいろんな偉大なるアーティストさんがカバーしてきたものなので、「ついに私たちにもバトンが回ってきた!」と感慨深い気持ちになりました。

西塚:僕もこの曲ですね。CHARAさんが好きでライブを見に行って、そこで歌っている現場を見たことがありますし、今回のカバーも作った張本人である小林武史さんがプロデュースしてくださったので光栄なことですし、現場はすごく緊張しました(笑)。

ーー「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」は、原曲とはかなり色を変えたアレンジが特徴的ですよね。テンポも性急なものに変わっていますし、印象的だったアナログシンセの音色もあえて取り払っているような印象を受けました。

越野:anderlustとして原曲とは異なる色を添えるうえで、“初々しさ”を重視して、テンポを倍にし、ハキハキした歌声を入れようと思いました。小林さんからは、特に歌い方に関するディレクションはなかったのですが、CHARAさんの特徴的な声は私にマネできるものではないので、自分らしい歌を乗せることができたと感じています。

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ーーベースはどうですか? 原曲に比べ、西塚さんは今回かなり攻めた演奏をしていますよね。メロディーに当たるように、しかもかなり動いているように聴こえます。

西塚:anderlustのベースとしては、バックに徹するものでなく、歌と対等になるような演奏を心がけているので、カバー曲の中で僕たちらしさを出すうえで必要だと考えました。あとは作品全体に言えることですが、『バッテリー』の世界観を表現するために、若さや青さを意識してプレイしているので、そのあたりも作品には反映されていると思います。

ーーこのままほかのカバー曲についても聞かせてください。「明日、春が来たら」では、anderlustらしさを出すために何を心がけたのでしょう。

越野:この曲はかなり歌詞を意識しながら歌っていました。松さんもまた、歌うたいとして誰にも真似できないものを持つ方なので、無理に近づけようとするよりもどこまで初々しさを出せるかという部分を心がけました。

西塚:原曲で松さんが歌っている声って、大和撫子というか、日本的な美しさがあるのですが、今回はちょっとアメリカンな子(越野は幼少期をアメリカで過ごした)が歌うので、どんな感じになるかなと思いつつ。

越野:根は日本人ですよ!(笑)

西塚:(笑)。演奏的には原曲の雰囲気を意識して、Fenderの74年モデルのジャズベースやチューブD.I.を使いました。今時のハイファイな音というよりも、ヴィンテージ感を出したかったんです。

――確かに、温かみのあるベースが曲全体を包み込むように鳴らされていますね。「若者のすべて」に関しては原曲がバンドサウンドで、かつ男性ボーカル曲なわけですが、難しさはありましたか。

越野:そうですね。この曲だけは歌い方に関して、違った意識を持って取り組みました。自分の声を鐘として響かせるというか。1番のBメロに<夕方五時のチャイムが>という歌詞がありますが、楽曲全体に伸ばして歌う個所が多いので、鐘のように打ってからしばらく反響するような歌い方を心がけたんです。

西塚:僕は、バンドの曲なのでほかの曲よりもライブ感を意識しました。

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