世界にアニソンはどう受け入れられた? 藍井エイルら出演『SONGS』から感じたこと

 藍井エイルが海外進出に成功しているポイントは、「バトルもの」の要素が強い作品の楽曲を担当しているということだ。今回『SONGS』で藍井エイルが歌った「IGNITE」の『ソードアートオンラインⅡ』、はまさにその系譜にある。実際、海外のコミックコンの来場者は国内で根強い「日常系」「萌え系」アニメよりも「派手なアクション作品」を好む傾向にあり、海外で人気のアニメには戦闘シーンを作品の軸に据えることで、その裏にある人間ドラマを描くようなものが圧倒的に多い。そうしてアニメ作品と分かちがたく世界観を共有するアニソンならではの魅力を追い風にして、彼女の人気が高まっているのは間違いない。

 もちろん、パフォーマーとしての華やかさを持っていることも大きい。ルックスはさることながら、ライブにはロックスター然とした魅力があり、生バンド編成でのパフォーマンスがライブでの魅力を増幅させている。13年から海外公演を重ねてきた彼女は、15年には15本もの海外公演に出演。篤志(THE野党)、楠瀬タクヤ(元Hysteric Blue)といった面々が揃うエイルバンドの演奏力と藍井自身の伸びやかな歌声はライブアクトとしても高い評価を得た。

 今後海外でも二次元を使った表現への敷居が下がることがあれば、これまで海外ではなかなか受け入れられる機会のなかった『ラブライブ!』『アイドルマスターシンデレラガールズ』を筆頭にした2次元×3次元のメディアミックス型アイドルグループの人気が高まる可能性もあるだろう。少なくとも国内では、今後そうした作品と同じコースを進むことが期待されている『TOKYO 7th シスターズ』がセカンドライブとして8月にパシフィコ横浜・国立大ホール公演を控えるなど、非常に楽しみな状況が生まれつつある。

 アニメファン=オタクという図式は成立しなくなりつつある昨今。海外でもアニソンがポップ・ミュージックの選択肢のひとつとなる日が来ても、それほど不思議なことではないのかもしれない。その流れを牽引するアーティストとして、藍井エイルの今後の活躍にも、ますます期待したい。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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