世界にアニソンはどう受け入れられた? 藍井エイルら出演『SONGS』から感じたこと

20160610-songs2.jpg
藍井エイル

 6月9日、NHKの音楽番組『SONGS』で、『アニソンSP ~世界を熱狂させるNewヒロイン~』が放送された。番組チーフプロデューサーの柴崎哲也氏が「アイドル、バンドなどとは異なるジャンルとして確立されたアニソン。10年頃から年々、市場も拡大する。新しいムーブメントがあるんだ、と知ってほしい。人気を支えるのは、作品の世界観とリンクしたテーマ音楽だが、歌い手は、アニメの世界を表現する存在として熱烈な支持を受ける。藍井エイル、Kalafina、LiSAからはアーティストとしての覚悟、熱意を強く感じた。それがライブでも伝わっている」とコメントしている通り、この番組では5月にニューヨークでの初単独公演を成功させたばかりの藍井エイル、Kalafina、LiSAの3組の活動から海外でのアニソン・シーンの広がりを分析。同番組でアニソン・アーティストが取り上げられるのは初めてのこと。これはアニソン・シーンの広がりを象徴する出来事のひとつと言えるだろう。藍井エイルは放送前、自身のブログで番組への気持ちを語っている。

■藍井エイルブログでのコメント

今回NHK「SONGS」のアニソンSPに出演させて頂き、『ソードアート・オンラインⅡ』のテーマソングである「IGNITE」を歌わせて頂きました。
オンエアは6月9日予定なので是非楽しみにしていて欲しいです。
さて、今回の番組の趣旨は
「なぜ今世界は日本発のアニメに熱狂するのか。その秘密を、音楽を通して探りたい。」
という事。

私自信も非常に興味がある内容なのでとても楽しみです!

確かに世界各国でライブイベントに出演させてもらっていると、
日本の「アニメ」はもちろん、そのテーマソングも含めて
愛してもらっている事を肌で感じます。
特にこの「IGNITE」を歌う時の反響は大きいのでなおさらです。

5月に行った初のニューヨークワンマンライブでも、
「アニメ」を通じて私を知ってもらった多くの現地ファンが
会場に来てくれてとてもうれしくなりました。

「アニメ」が私と世界をつなげてくれた事に感謝しながら、
日本人が誇りをもって大切に育ててきた「アニメ」と「アニソン」という
素晴らしい文化を世界に紹介していく橋渡し的な存在として
これからも微力ながら続けていきたいなと改めて思いました。

番組を通じて、そんな想いが伝わるといいなと思っています。

 今回は、NHKで『SONGS』の『アニソンSP ~世界を熱狂させるNewヒロイン~』が放送されることになった経緯と、海外でのアニソン・シーンの広がりについて考えてみたい。

 その最大の理由として挙げられるのは、年々拡大傾向にある国内のアニメ市場の好況だ。2015年の時点で、日本のアニメ市場のエンドユーザーを含む市場規模は5年連続続伸の1兆6296億円と、過去最大の市場規模に達している。そうした状況を受けて、日本では近年アニメ作品のOP/EDテーマを担当するアーティストの楽曲が、よりポップ・シーンへとブレイクスルーする現象が見られるようになった。15年5月には、藍井エイル&LiSAが揃って『ミュージックステーション』に出演し、昨年末の『紅白歌合戦』には『ラブライブ!』からμ'sが出演。今年に入ってもryo(supercell)がプロデュースを手掛けたEGOISTが担当する『甲鉄城のカバネリ』の主題歌「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」がオリコン週間シングルチャートの2位を記録し、MYTH & ROIDによる『Re:ゼロから始める異世界生活』のEDテーマ「STYX HELIX」もiTunes総合チャートの2位を獲得。今回『SONGS』に出演した3組は、年末に放送される同局の『紅白歌合戦』に出演する可能性もあり、今後アニソン・アーティストの楽曲がより普遍的な日本のポップ・ソングのひとつとして国内で受け入れられていく可能性は高い。

 では、日本とは異なる文化圏にある海外で、アニソンが受け入れられている理由は何だろうか。まず考えられるのは、コミックコンなどを筆頭にしたイベントの充実だろう。海外ではLAの老舗『Anime Expo』、6万人規模の動員を集める英ロンドンの『HYPER JAPAN』、フランスの『Japan Expo』などを筆頭に様々なイベントが開催され、その多くが来場者数を伸ばしている。これには恐らく、『SONGS』内でも紹介された『Crunchyroll(クランチロール)』を筆頭に、配信サービスの整備によって海外でもタイムラグなくアニメ作品を楽しめる環境が整ったことで、作品自体やコスプレ文化への理解が高まったことが大きい。また、間接的な理由としては、ボカロ・シーンへの海外での注目も挙げられる。ここ数年に限っても14年5月にはレディー・ガガのアメリカ公演で初音ミクが前座に起用。同年10月にはアメリカの超人気番組『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』に初音ミクがライブゲストとして出演するなど、ボカロ・カルチャーの魅力が一般層へも届く機会は増えている。アニメ文化とも親和性の高いボカロ文化の盛り上がりが、海外の音楽ファンにアニソン・アーティストへの注目をもたらしている部分もあるだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる