BiSHが“リフト禁止”ノンストップライブで体現した、ライブの新しい楽しみ方

BiSHが体現した「ライブの楽しみ方」

「突然ですが、BiSHのライブではお客さんのリフトを禁止します! なぜなら、BiSHのステージが見えないから!! 仙台で、僕は後ろから見ていて、壁になってしまって俺のみたいメンバーが見えない! と正直むかつきました。だから禁止にします!」

 BiSHマネージャーの渡辺淳之介氏が2月26日にオフィシャルホームページに上記の告知を出してから約1カ月後。BiSHが、3月27日に品川ステラボールにて『IDOL SWINDLE TOUR FINAL』を開催した。前身グループであるBiSで、アイドルグループとしては異端のパフォーマンスを形にしてきた渡辺氏の“リフト禁止宣言”はあまりにも突然のことであり、SNSを中心に大きな反響を呼んだ。

 BiSHにとって大きな変革となるであろうライブを観ようと、品川ステラボールには超満員の清掃員(BiSHファンの呼称)が集結。ライブステージの中央には、何段にも続く階段、その両脇には立ち入り禁止の金網フェンスが怪しげな雰囲気を醸し出しながら鎮座していた。開演少し前には、恒例である渡辺氏の前説が始まった。渡辺氏は改めて「リフトが発見された次第で即公演が終了になってしまいます」と真摯に説明し、続けて「みんなでリフト以外で楽しめる方法があると思うんですよ」と提言した。

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 渡辺氏が前説を終えると、ステージセンターにあるスクリーンには<avex trax>からのメジャーデビューの勢いを感じさせるサイバーな映像が流れ、一人ひとりの自己紹介とともに階段上のステージにポップアップでメンバーが登場。アイナ・ジ・エンドの「BiSHはじめます!」の掛け声とともにパンクロックチューン「beautiful さ」でライブをスタートした。BiSHはここから一切MCなしで本編22曲を完走。アンコールでのMCも短く、7曲を歌いきり、品川ステラボールに集まった約1,800人にそのパワーを見せつけた。

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 ライブ冒頭から「beautiful さ」「ウォント」と激しいナンバーを披露する中、強烈なインパクトを残したのが3曲目の「MONSTERS」だ。1stアルバムに続き、2ndアルバム『FAKE METAL JACKET』にも「MONSTERS ’16」として再録し、改めてMVも撮影したこの曲は、BiSHの代表曲のひとつである。ハスキーかつ伸びのある声を持つアイナ・ジ・エンドが「MONSTERS」のメインボーカルを務めているが、1番サビの<さあ涙を落とす時間なんてないのさ でももう一度だけみせて>という歌詞では、アイナが口元近くでマイクの先端を両手で握り、右足をステージ前方にあるスピーカーにかけ熱唱する一幕があった。この歌い方はラウドロックやメタルバンドでよく見かける姿だ。さらにこの曲では、間奏部分でヘッドバンキングが会場一体で巻き起こる。

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 そのまま、熱を帯びた会場でBiSHは初期代表曲「スパーク」を披露した後に、8曲目オルタナティブ・パンク調の「カラダイデオロギー」へと流れる。歌い方、振り付けともにフリーダムで、脱力感のある楽曲だ。曲の終盤、“無口担当”のリンリンがステージ上手より、金切り声で絶叫しながら客席に向かって低空ダイブ。すぐに関係者スタッフに引きずり降ろされステージに戻るも、そのまま絶叫し続けていた。思い起こせば、前回筆者が観た1月19日の東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催した『TOUR FINAL 'IDOL is SHiT’』でも、リンリンがメンバーの中で一番最初に客席に飛び込んでいた。普段は大人しい彼女だからこそ、その予測不可能な行動には惹きつけられるものがある。彼女こそが、グループのキーパーソンになる予感がした。

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 一方の清掃員は、「リフト禁止」と掲げられたライブでどう振る舞ったのか。前回の恵比寿LIQUIDROOM公演では、1曲目「BiSH -星が瞬く夜に-」から清掃員が会場前方に押し寄せ、クラウドサーフとリフトの嵐になっていたのを鮮烈に覚えている。今回、2階席からアリーナを覗くと、1曲目「beautiful さ」がはじまった途端、大きな波のうねりが起きるように、前方へ清掃員が飛び跳ねながらフロントエリアに押し寄せ、会場全体が圧縮しているようにさえ見えた。「beautiful さ」は、サビの<どんなとげとげな日でも息してれば 明日は来るんだし>で両手人差し指を上下に突き出す振り付けが特徴的な楽曲だ。ミディアムロックナンバーの「スパーク」では、Bメロ部分で、メンバーが3対3に分かれ「はないちもんめ」をする振り付けがあるが、フロアのファンも真っ二つに分かれ「はないちもんめ」をしていた。それはさながらBiSH版の“ウォール・オブ・デス”といったところか。ほかにも曲中でメンバーが客席に背を向けて両手両足を広げる振りにあわせ、ステージに背を向けて同じポーズをする「Primitive」や、ステージにあげた清掃員のTシャツを脱がせ馬乗りになったり、ビンタをして恍惚の表情を浮かべさせる「TOMIN SHOJO」、両手人差し指を上下に突き上げ最大の盛り上がりを生むポップチューン「ぴらぴろ」……とBiSHには“ファン参加型”の楽曲がとにかく多いことに気づく。それと同時にマネージャーの渡辺氏が前説で言っていた「みんなでリフト以外で楽しめる方法がある」の言葉を思い出した。本編最後の楽曲「ALL YOU NEED IS LOVE」では、メンバーも清掃員も会場一体が肩を組み<All you need is love.>と合唱しライブの本編を締めた。

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