Acid Black Cherryが武道館公演で融合してみせた、不変のエンタメ性と『L-エル-』の世界

Acid Black Cherry、日本武道館公演レポ

 どんなスタイルも全て自分のものにしてしまう、ロックアーティストとしての“円熟”--そんな堂々とした姿を見せつけるステージだった。バンドJanne Da Arcのヴォーカル・yasuのソロプロジェクトであるAcid Black Cherry(以下、ABC)が2015年2月リリースのアルバム『L-エル-』を引っ提げて行ったアリーナツアーのファイナルが12月14日、日本武道館にて開催され、超満員の観客が熱狂の渦に包まれた。

 アルバム『L-エル-』は一人の女性の人生を描いたコンセプトアルバム。悲鳴のような歓声とともにステージが暗転すると、『L-エル-』の物語の序章となる映像が流れ、yasuのハイトーンボイスで語るように唄われる「Loves」で公演が始まる。続き披露された「versus G」では早くも会場全体が一斉にヘドバンの嵐となり、ステージで特効が爆発した「liar or LIAR?」でも観客の折り畳みが止まらない。そんなオーディエンスの熱に応えるように、yasuとサポートメンバー(YUKI(Gt/from DUSTAR-3、Rayflower)、HIRO(Gt/from Libraian、La’cryma Chisti)、SHUSE(Ba/from †яi¢к、La’cryma Chisti)、淳士(Dr/from.SHAM SHADE、BULL ZEICHEN 88)たちもパワフルなステージングで飛ばし、序盤からボルテージは最高潮だ。

 2015年のABCは、まさに精力的な活動という言葉がぴったりの一年だった。2月のアルバムリリース後、3月から全国25本のホールツアーが始まり、夏には3カ所で10万人を動員した国内最大規模のフリーライブを開催。そして9月からはアリーナツアーを行い、10ヶ月をかけてアルバム『L-エル-』の世界を作り上げてきた。「ファイナルだけど、みんな元気ある!?」とyasuが問いかけると、オーディエンスからは大きな大きな歓声が。それを聞いたyasuも思わず笑う。

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 SHUSEのグルーヴィーなソロから始まり、サビで会場中がクラップで盛り上がる「黒猫〜Adult Black Cat〜」、アダルトな雰囲気でyasuが熱っぽく唄い上げる「指輪物語」など、『L-エル-』の楽曲とこれまでのABCの楽曲を織り交ぜながら、ステージの色は変化自在に変わっていく。そしてオープニングの続編ともいえる映像と、それから披露された「Round & Round」で、オーディエンスは『L-エル-』の物語にまたぐっと惹き込まれていった。

 アリーナツアーを廻ってから武道館公演があったことで「やっぱり武道館は近くていい」と感じたというyasu。そんな大規模会場が続いたツアーでも欠かさず行われてきたのがTwitter上でファンから寄せられた質問にメンバーが答えていくコーナーだ。さっきまでのステージの怒濤の展開はどこへやら、ざっくばらんなトークタイムが観客を和ませる。この飾らなさもまた、ファンを惹き付けて離さないABC の大きな魅力だ。

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