星野源が『YELLOW DANCER』で成し遂げた快挙 チャート1位作の音楽的達成を読む

参考:2015年11月30日~2015年12月06日のCDアルバム週間ランキング(2015年12月14日付)(ORICON STYLE)

 2015年12月14日付の週間CDアルバムランキングは、星野源の『YELLOW DANCER』が1位。これ自体はそれほど驚きませんでしたが、推定売上枚数が131,990枚であることには驚きました。最近のアルバム・チャートではなかなか出ない初週10万枚越えです。CDが売れない時代に。

 2015年のアルバム・チャートでは、7月にリリースされたDREAMS COME TRUEの『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム2015』が初週にして推定売上枚数344.395枚を叩きだしていました。『YELLOW DANCER』はその約半分としてもかなりの数字です。スケール感的には、安室奈美恵が6月にリリースした『_genic』の初週の推定売上枚数160,474枚に近いと言えば、現在の星野源の勢いが実感できるでしょう。そんなに売れているのかと。彼の前作である2013年のアルバム『Stranger』の推定累積売上枚数85,459枚すらも1週にして越えました。

 しかし、星野源がコマーシャルな音楽に転換したかというと、本質的には大きな変化はないとも『YELLOW DANCER』を聴いて感じました。「若者の『脱・ロック』は『サケロック』によって初めて明確に示された。」とは、細野晴臣がSAKEROCKの2008年のアルバム『ホニャララ』に寄せたコメントです。SAKEROCKが、星野源が在籍し、2015年6月2日に解散したバンドであることは言うまでもないでしょう。

 星野源の『YELLOW DANCER』を聴いたとき、1曲目の「時よ」に感じたのは、いわゆる「ロック」とはかなり異なる感覚でした。エレクトロな音も響きますが、SAKEROCK時代からの付き合いである岡村美央のアレンジによるストリングスが前面に出たサウンドです。ギターも弾かれているものの、あまり前に出てきません。この点で、ギター、ベース、ドラム、ピアノによるフォー・リズムという、現在のポピュラー音楽において一般的な編成とは異なる感覚を『YELLOW DANCER』の冒頭から感じることになりました。

 それは細野晴臣がベースで参加した「Nerd Strut」でも感じたことです。彼がYellow Magic Orchestra(YMO)を結成にするにあたって、マーティン・デニーの「ファイヤークラッカー」をシンセサイザーで演奏するアイデアがあったことは有名ですが、そのマーティン・デニーの楽曲のようなセンスが「Nerd Strut」にはあります。わずか1分21秒のなかに。「Friend Ship」で鳴り響くマリンバの音色にもマーティン・デニーを連想しました。

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