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冬将軍が綴る“振り文化”クロニクル

氣志團、金爆、GLAY、ハロプロ、米米CLUB……日本独自の“振り文化”が定着した背景を探る

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氣志團『One Night Carnival』

 アーティストの歌と音を生で体感すると同時に、ステージと客席ともに創り出される一体感もライブ/コンサートならでは醍醐味である。リズムに合わせて身体を揺らす、手拍子をする、といった一般的なものからヴィジュアル系やアイドルファンの独特の“振り”を用いた複雑なスタイルまで、ノリ方は様々だ。矢沢永吉「トラベリン・バス」「止まらないHa~Ha」のタオル投げ、長渕剛「勇次」のクラッカー、サザンオールスターズ「みんなのうた」の腕振りなど、キメ的なお約束があるアーティストも多い。そこに参加することで一人前のファンになれたような充実感を得られたりするものだ。

 このようなライブの楽しみ方は、とくに日本で顕著に見られる光景である。海外では、観客個人が自由気ままに愉しむスタイルが主であり、歓声や合唱が巻き起こることはあっても、「サビで一斉に手を上げる」といった楽しみ方はほとんどない。レゲエやレイブの高揚感を表す、人差し指を突き立て空砲を撃つポーズ、“ガンフィンガー”や、クラシック音楽のコンサートなどにおける賛辞を込めた“スタンディングオベーション”があるが、あくまで個人の感情表現であり、複数の連帯感を伴うノリ方は、古くから盆踊りや、合いの手を入れる文化が土着してきた日本だからこそ主流となった応援スタイルでもある。

“ヤンキー”+“パラパラ”という日本文化の組み合われで鮮烈なデビューした氣志團

 バンドブーム期、他所の熱気があからさまになるホコ天を含め、アーティスト独自のノリ方が生み出されていった。ユニコーン「大迷惑」、BUCK-TICK「ICONOCRASM」など、ライブの定番曲に振りがつくバンドが多い。X JAPAN「X」の“Xジャンプ”はアマチュア時代のTAKUYA(ROBOTS, ex. JUDY AND MARY)らが考案したのは有名な話である。反面で、強制されるように捉えるファンや、予定調和を嫌うアーティスト自らが異を唱えることもあり、しばし論争の種にもなった。形は違うが、アイドルからアーティスト志向を強めたチェッカーズや吉川晃司は、「ペンライト禁止」「バラードでの手拍子禁止」「過剰な声援禁止」など、本人自らがファンへ呼び掛けをした。シーンが盛り上がって行く中で、ライブ/コンサートにおけるファンマナーが問われていった時代でもある。

 ヴィジュアル系ファンの振りの定番、現在は両手をヒラヒラさせながら左右に「∞」を描く“手扇子”はステージに手を差し伸べるようにする動きに始まり、バンドブーム以降に多くのライブで見られた光景でもある。次第に“ヴィジュアル系っぽい”振りとして発展、定着していくとともに「ヴィジュアル系」という言葉自体で括られることに違和感を覚えるバンドからは敬遠された。現在でもラウドロックなどを基調とするバンドでは、暗黙の了解で非推奨となっている場合が多い。逆にその“ぽさ”を、リズミカルな躍動感で払拭しようと発展したのが“GLAYチョップ”だろう。

「誘惑」はアタマのサビから“GLAYチョップ”が炸裂する人気ナンバー

<GLAY EXPO ’99>の20万人が両手を前後に振る、稲穂の揺れるような光景が話題を呼んだが、同年代のアリーナクラスのバンドにも波及したことから、“メジャー振り”とも呼ばれた。

ヴィジュアル系の“振り文化”

「V系=振付け」をお茶の間にも持ち込んだゴールデンバーの功績は大きい

 ヴィジュアル系の振付けといえば、優雅に羽根扇子を揺らせていたSHAZNAや、舞踏会さながらのパフォーマンスを見せていたMALICE MIZERの印象も強いが、近年のゴールデンボンバーにみられるような、ファンも一緒に踊ることになった発端ともいえるのは、PIERROTだろう。台に上がったキリトが、頭上に掲げた両手首を打ち鳴らす姿に会場全体が導かれる「Adolf」(1997年『CELLULOID』収録)は、90年代のヴィジュアル系ファンなら誰もが出来る、“最もアガる”振りとして知られている。そして、ヴィジュアル系バンドのボーカリストがライブで用いる舞台装置“お立ち台”は、黒夢の清春がはじまりとされるが、PIERROTによって広められたといっても過言ではない。当時「いろんなバンドから羨ましがられた」というこの台をキリトは“ボーカル要塞”と呼んでいたが浸透せず、現在に至るまで“お立ち台”の呼称で定着している。見た目の頑強さとは裏腹に、アルミやステンレス製など軽量なものも多く、今やヴィジュアル系ボーカリスト必須の“機材”である。黒夢のローディーであったDIR EN GREYの京が演出効果や舞台オブジェとして昇華させ、DIR EN GREYの元ローディーで清春のレーベルからリリースしたMERRYのガラは、お立ち台として学級机を用いるという斜め上をいく形でも引き継がれている。

 2000年代になると振りが多様化、複雑になり始めた。耽美や退廃な非現実的世界観の同シーンにポップでカラフルさを持ち込んだ、バロック(現・BAROQUE)の登場は大きく、以降「ライブはみんなで楽しもうよ」とハイテションで軽いノリを演出する「オサレ系」と呼ばれるバンドが一気に増えた。シーン自体の人気が下火になる中で、盛り上げようとする風潮から発展したこともあるのかもしれない。

「オサレ系」に対して、“コテコテの~”、“古典的な~”という意味の「コテ系」バンド、Phantasmagoria「神歌」の振りのインパクトが大きかった

 メンバー自ら振付け指導をするDVDが作られたり、インターネットの普及により、動画がアップされることも今や自然な流れになっている。

「和製ホラー」「痛絶ノスタルジック」をコンセプトに掲げる己龍の振付講座

     
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