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『farewell holiday!』インタビュー

DE DE MOUSEが音楽で表現する“ファンタジー”とは?「その奥にある毒がじわじわ染みこんでいく」

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 ある日突然、新しい季節を運ぶ役目に選ばれた少年たちは、昂ぶる気持ちのまま空飛ぶ回転木馬に乗り、「おまじないの歌」を口ずさみながら、日常を抜け出す――ー

 DE DE MOUSEの新作『farewell holiday』がリリースされる。前作『sky was dark』から3年。傑作『A journey to freedom』(2010)も手がけた吉田明彦(『ファイナル・ファンタジー』『タクティクスオウガ』のキャラクター・デザイン)がイラストを手がけたジャケット・デザインも含め、ファンタジックでドリーミーな世界観は変わらないものの、サウンド面では大きな変化を遂げた。

 DE DE MOUSEがたった1人で作り上げたサウンドは、ルロイ・アンダーソンなど1940~50年代の軽音楽を彼流に展開したもの。これまでのDE DE MOUSEらしいエレクトロニックなダンス・ビートやキュートなテクノ・ポップではなく、生楽器の音色やアンサンブルをシミュレートしたノスタルジックなオールディーズ風のサウンドを展開している。『sky was dark』以降にリリースされていたミニ・アルバムや配信楽曲では、従来路線のテクノ・ポップ~エレクトロニカが聴かれただけに、この変化は衝撃的であり、大きな話題を呼ぶことになるだろう。

 その変化の背景にあるものを探るべくインタビューに臨んだが、アルバムの制作意図やコンセプトから始まり、その表現原理や原風景、そしてアーティストとしての野心にまで話題は及んだ。(小野島大)

「ダンス・ミュージックって消費される音楽だから」

――3年ぶりの新作なんですが、いろいろな意味で予想を覆す作品でした。

DE DE MOUSE :(笑)。そうですね。

――今作に至る経緯を教えていただけますか。

DE DE MOUSE :前作『sky was dark』を出した時に、自分が好きだった音楽がどんなものなのか、やっとわかってきた気がしたんです。前作に入っている「my alone again」とか「sky was dark」って曲がそうなんですけど、1940~50年代の軽音楽(主にアメリカで流行したジャズとクラシックとポップスが混ざり合ったような大衆音楽。代表作はルロイ・アンダーソンの「そりすべり」)のサウンドがすごく好きなんだなと自覚したんです。それを遡っていくと、自分が子供のころにワクワクした想い出や気持ち(のバック)には、だいたい軽音楽が流れてるんですよ。クリスマスだと必ず「そりすべり」が流れてるような。自分なりにそういう音楽をやってみたいという気持ちが膨らんだんですね。

――なるほど。

DE DE MOUSE :もうひとつは東日本大震災です。計画停電があった時に、「電気がなくなったら、オレってゴミだよなあ」って思ったんです。作曲家ならペンと紙があれば音楽作れるし、演奏家なら楽器が弾ける。でも僕は電気に依存してるから、電気がなかったら使い道がないよなと思ったら、なんかすごいニセモノの音楽やってるような気持ちが湧いてきたんです。

――電気グルーヴが昔歌ってましたよね。♪停電だけが恐ろしい♪って。

DE DE MOUSE :そうそう(笑)。「電気ビリビリ」でしたっけ? 電気がなくなったら使い物にならなくなる自分がなんか情けなくなってきて。そこで、自分の中でもう一度<音楽>に挑戦したいという気持ちがすごく湧いてきたんです。2012年の末ぐらいに、今作の1曲目の「friday comers」の雛形みたいなものを作ってみたらすごく手応えを感じて。1度楽譜に起こして、他の誰かが演奏してもちゃんとDE DE MOUSEの音楽になっているようなアルバムを作りたくなったんですね。つまり普遍性を狙ったり裾野を広げるためにわかりやすい音を使ったというわけではなくて、自分の中では挑戦という気持ちがすごく強いんです。

――それはわかります。

DE DE MOUSE :電子音って融通が利くんですよ。高音の音が欲しいと思ったらすぐ作れちゃうし、低音が欲しいと思ったら簡単にできる。でも生楽器を使うという制限の中だと、高音域の音が欲しいと思ったらグロッケンとかしかない。そういうものをどうやって使いこなしながら自分の音楽として完成させていくか考えながら作っていったら、3年かかってしまった。

――生楽器の音をサンプリングした音源を使って、ご自分で全部打ち込んでいったそうですね。

DE DE MOUSE :僕にとってこのアルバムは<テクノ>という気持ちがすごく強いんです。僕にとってテクノって、表面上の音はどうでもいいんです。生楽器だろうが電子音だろうが。自分がちゃんと全部コントロールできているかどうかが大事で。そういう意味で今回はmidiベースで打ち込みだけで、こういうオールディーズ・サウンドを自分なりに作るのがテーマだったんです。実際に楽譜に起こしてバンドでせーので演奏すればすぐ終わるかもしれないけど、そうじゃなくて誰の助けも借りず、自分一人で全部やるのが今回のテーマでした。

――自分が全部コントロールするのがDE DEさんのこだわりなんですね。

DE DE MOUSE :そうですね。ずーっとそれでやってきたし。今回も一度そういう形でやらないと先に進めない気持ちがあって。もしかしたら今後生の演奏を録音したものを出すかもしれないけど。

――私の聴いた印象を言いますと、サウンドは確かに大きく変わったんですけど、根本的なDE DE MOUSEの世界観というかアティチュードというか、本質は前からちゃんと引き継がれているのかなと。

DE DE MOUSE :ありがとうございます!

――だからどっちにフォーカスして聴くかで、このアルバムへの評価や感想も変わってくる気がします。

DE DE MOUSE :そうですね。それはすごくあると思います。自分の活動の仕方も、たとえば深夜帯のクラブ・イベントもやるし、プラネタリウムでやったり、通常のコンサートで管楽器や弦楽器を入れた形式でやったりもする。いろいろな活動をやっていて、それぞれに好きでいてくれる人たちが違う。ライヴと音源も全然違ったりするから。だからDE DE MOUSEはこれっていう評価がしづらい存在であることは自覚がありますね。今作はみんなが入り込むにはすごく時間がかかるだろうと思うんです。派手なリズムが鳴っているわけでもないし、みんなが好きな可愛い感じのシンセサイザーが入ってるわけでもない。そういうフックになるような派手な音が入ってない。でもそういうものを排除しないと、今回僕が出したい音にならなかったから。

――ああ、なるほど。

DE DE MOUSE :だからそのぶん、みんなが最初入り込みづらいものになるだろうなっていうのは、最初から自分もわかって作ってましたね。

――DE DEさんの言う「みんな」とは、要は今までDE DE MOUSEを聴いてきたファンってことですね。

DE DE MOUSE :そうです。DE DE MOUSEってこういうミュージシャンだよねってイメージを持ってると、肩すかし食らう人は相当いると思うんです。でも実は根底の部分は変わってなくて。みんなが見てる世界と僕が見せたい世界はあまり変わらないんです。でも表面の音が変わるだけで評価はだいぶ変わってくる。なので自分が作った音の周りに付帯するもの、ジャケットだったりとか。そういうものでできるだけみんなが入り込みやすいようにイメージの補完をしてあげようっていうのが今回考えてて。CD自体には入ってないんですけど、映像作家のBABさんに今回がっつり映像も作ってもらってるんです。一曲一曲、イメージを伝えてBABさんに作ってもらって。ライヴの時とかに流して、その世界に没頭できるように。お膳立てをできるだけやって、そういうイメージをどれだけ伝えられるかが今回は大事かなと。

――なるほど。

DE DE MOUSE :と同時に、今のシーンに対するアンチテーゼ的な意味も込めてこういう音を作ったところもあるんです。

――今のシーンって、EDMってことですか。

DE DE MOUSE :はい。そっちの方に行くだろうって思ってる人もたくさんいただろうから。でもそれに乗るのはイヤだった。僕自身、そういう流れが来ると必ず反抗したくなっちゃうんですよ。EDMやったほうがわかりやすく売れるし、みんないいねって言うだろうけど、僕があと35年音楽活動をやっていくとして、それじゃ先に繋がるのかどうかわからない。目先の1000円が欲しいがためにEDMをやるか。本当に作りたいと思ってるならいいけど、自分はEDM的な音楽に衝撃を受けたこともないし、ダンス・ミュージックの今の流行りのひとつという認識でしかないから思い入れもないし。

――EDMはいずれ消費されて終わると。

DE DE MOUSE :ダンス・ミュージックって消費される音楽だからそれでいいし本望なんだけど、自分の作品として残すものはタイムレスでありたい。自分は誰も真似できないことをやってる自負があります。アルバムは自分にとって大事なものだから、EDMをアルバムとしてはやりたくない。だから今のシーンに対する自分の答えはこっちだ、という気持ちですね。

――非常にアーティスティックな衝動に突き動かされて、こういうアルバムを作ったということですね。そこに今までのDE DE MOUSEのファンとか、今のダンス・ミュージックの状況みたいなものは念頭にない。だから作ったあとに、これをいかに受け入れてもらうか、いろいろ努力をしなければ、という。

DE DE MOUSE :そうですね。それが今回すごく強いです。

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