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きのこ帝国、赤い公園、tricot……女性ボーカル・バンドの“浮つかない”スタンスを考える

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石角友香
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きのこ帝国『猫とアレルギー』

 人に知られたくないような内面のドロドロした感情、もしくは寓話性の高いストーリーテリング…。しかもそれを独自の筆致と新しい価値観でロックミュージックの存在意義を更新し続けるのは基本、男性アーティスト/バンドだ。回りくどい言い方はやめよう。先日、開催されたRADWIMPSのツアー「胎盤」の競演相手が、彼らと同様に「時々エゲツないぐらい真実」な表現でついに今年、トップアーティストになった米津玄師だったことが象徴する、ポップシーンにおける“事件性”。そうした男性アーティストのある種の宿命とはまた違う温度感ーー日常的なことがもたらす自身の変化を素直に受容する感性などで、新しい価値観を描けるのが女性ボーカル、女性フロントバンドの良さだろう。その対バンのひとつに選ばれ、競演を果たしたばかりのきのこ帝国が11月11日にメジャーデビュー・アルバムをリリースする。

 何か裏切りや濁りに対する拒否感や憎悪、諦観が起点になった歌が多かった佐藤千亜妃に変化が現れた名曲「東京」(14年9月)を境に、もしかしたらそれが儚くフェイクであっても愛しい日々を生きる意思——その通過点が昨年の2ndフルアルバム『フェイクワールドワンダーランド』だったように思う。その後、今春、佐藤が上京後10年を経て、ようやく故郷・岩手での時間、つまり青春の時間を慈しむことができた、その結実が今春リリースしたメジャー・デビューシングル「桜が咲く前に」だ。この楽曲を含むニューアルバムが『猫とアレルギー』である。

 さて、肝心のアルバムだが、まず『猫とアレルギー』というタイトルに反応した。愛しくてたまらないけれど、触れると拒絶反応が出てしまうという皮肉。ちょっと笑えるけれど、もしこれが人間同士だったら笑えない。そのタイトルチューンでアルバムの幕が開くのだが、ピアノと歌始まりのこの楽曲での佐藤のボーカルは話すぐらいのテンションで、すでに離ればなれになってしまった”あなた”へ「話せなくていい 会えなくていい ただこの歌を聴いてほしいだけ」と歌う。サウンドプロダクション的にはピアノとストリングスのアレンジと、聴かせるミディアムテンポが驚くほどエバーグリーンな印象。それが豊かなものであることが、歌詞の儚さをむしろ照射する。また、MVで先行配信された「怪獣の腕の中」では吐息の成分が多い声で、弱さゆえに鎧を着てしまうあなたを守りたいと歌う佐藤に正直、驚いた。

     
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