嵐・櫻井、SMAP中居、TOKIO・国分……大型音楽特番とジャニーズ司会者の関係とは?

 それに対して、同じく1990年代を代表する音楽番組の『うたばん』(TBS系)は、他の番組ではそれほど目立たなかったモーニング娘。の保田圭をとんねるずの石橋貴明がいじり倒すことで人気者にしたように、アイドルを輝かせることに一日の長がある番組だった。そしてそこで石橋とMCのコンビを組んだ中居正広が、番組開始の翌年1997年の『NHK紅白歌合戦』に白組史上最年少司会者として抜擢されることになる。さらに1991年のCDデビュー以来『紅白』での実績を積んでいたSMAPも、2003年には『世界に一つだけの花』で史上初めてグループ歌手として大トリを取る。

 そして2005年の『FNS歌謡祭』、それまでほとんどアナウンサーがやっていた男性司会者に草彅剛が起用され、SMAPが番組のトップバッターと大トリを務めることになった。『SMAP×SMAP』など彼らのフジテレビへの貢献度もあったとはいえ、そうなったのは、今ふれた『紅白』に象徴されるように、大型音楽特番でのジャニーズの存在感がぐんと増していたからこそのことだろう。

 そこに私などは、戦後日本社会とジャニーズの深い関わりを感じてしまう。ジャニー喜多川を生みの親とし、少年野球チームから出発したジャニーズには、戦後民主主義の申し子のようなところがある。野球は、誰もが適材適所で参加でき、チームに貢献できる民主主義的スポーツの理想形として戦後日本社会に普及した。一方、エンターテインメント集団としても、そんな戦後日本社会の理想をジャニーズは追求してきたのではあるまいか。一方、戦後まもなく始まった大型音楽特番の元祖『紅白』の原点にも、実は男女チームによる歌のスポーツというアイデアがあった。そう考えると、ジャニーズと大型音楽特番の結びつきには何か必然的なものがあるに違いない。

 昨年2014年の『FNS歌謡祭』では、そんなチームエンターテインメントとしてのジャニーズの醍醐味を味わえる企画があった。近藤真彦がデビュー35周年を記念して、SMAP、TOKIO、KinKi Kids、V6、嵐など14組の後輩とスペシャルメドレーを披露したのである。『THE MUSIC DAY』で恒例のシャッフルによるジャニーズヒットメドレーも楽しく壮観ではあるが、参加グループが限られている部分で、どうしても巷間囁かれている“派閥”などという単語が脳裏をかすめてしまう。だが一視聴者とすれば、事情はどうあれ制約などなく自由な顔合わせが見られる方が面白いに決まっている。2014年の『FNS歌謡祭』のコラボは、その夢をひとつ叶えてくれるものであった。

 さて、『MUSIC STATION ウルトラFES』にも、番組発表によればジャニーズから嵐、A.B.C-Z、KAT-TUN、関ジャニ∞、KinKi Kids、近藤真彦、ジャニーズWEST、SMAP、Sexy Zone、タッキー&翼、TOKIO、NEWS、V6、Hey! Say! JUMPの14組が勢ぞろいする予定だ(9月22日時点)。それぞれのパフォーマンスはもちろん、10時間という大型音楽特番ならではのチーム「ジャニーズ」の企画があることをぜひ期待したい。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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