AKB48『選抜総選挙』は“変化の季節”を迎えた? 各メンバーの参加スタンスから考える

 AKB48グループの『41thシングル選抜総選挙』は6月6日、福岡・ヤフオク!ドームで開票イベントが行なわれた。今年の総選挙に関して特に注目すべきは、この恒例となった一大イベントに対する個々のスタンスが、例年にもまして多様化してみえたことだろう。その兆候はまず、松井玲奈や小嶋陽菜らの「不参加」という選択にうかがえた。彼女たちは、戦いから「降りる」という選択肢が、「戦う」という選択肢と同等に存在することを、自らの不在をもって提示した。もちろん、過去にも辞退したメンバーはいたし、今回の不参加者も松井や小嶋ばかりではない。しかし、とりわけ通常なら選抜入りが確実視された松井と小嶋の軽やかな離脱は、48グループの外にも広い世界があること、どのメンバーも永遠にこの組織内で戦い続けるわけではないことを示すものだった。それは、すでにグループ外でも地歩を固めつつある二人だからこそできた行動である。総選挙を絶対的なものにしない視野を提案してみせたことは、長期的にみても大きな動きだったように思う。

 また今回、すでに卒業を発表している高橋みなみを1位に押し上げようとするファンの高まりがあったことも、メンバーおよびファンの側も含めてのスタンスの多様性をうかがわせた。従来、AKB48の総選挙1位は、次回選抜シングル曲のセンターであると同時に、その先のグループの顔を託す意味合いも込められるものだった。しかし、来年以降グループにいない高橋が1位を取るとすれば、それは彼女のAKB48でのキャリアの集大成かつはなむけとしての意味を持つ。高橋の順位にまつわる盛り上がりは、総選挙にこれまでなかった機能を見出すものだった。

また、今年の選挙期間中に目についたのは、メンバーが上位を目指せば目指すだけ、ファンに「負担」をかけることになるというこのイベントの一側面を、メンバー個々が自覚したような発言の数々だった。開票イベントのスピーチでは、特にアンダーガールズ以下のメンバーがしばしば、自身の獲得順位を「素敵な順位」と表現した。それは上位を目指すこととファンに負担を強いることとの間で揺れる当事者たちの葛藤を感じさせる言葉だった。立候補者数も投票数も巨大化していく中で決定される「序列」は、その数字の意味をどう受け取ればよいのか、年を追って解釈が難しくなっていく。AKB48の総選挙が、しばしば喧伝されるほどシンプルな「戦い」ではなく、参与する人々もまたそうした悩ましさに対して超然としているわけではないことを象徴する一例だったといえる。列記したような事象の数々は、選抜総選挙というものがひとつやふたつのベクトルで解釈できるほどたやすいものでないことを示している。だからこそ、特に近年の総選挙には「祭り」という、殺伐としがちな空気を和らげるような解釈が選ばれることが多くなっているのだろう。

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