GOMESS、初ワンマンで見せた息苦しいほどの感情表現 3時間半の公演を振り返る

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 4月12日。代官山LOOPにてGOMESSによるファーストワンマンライブ『人間失格』が開催された。

 GOMESSは、2012年に開催された『BAZOOKA!!!第二回高校生ラップ選手権』で準優勝を獲得し、独自のフリースタイルが話題となった静岡県出身のラッパーだ。

 NHK教育の『ハートネットTV』や『バリバラ~障害者情報バラエティ~』といった番組に出演したことから、自閉症で元引きこもりのラッパーとしても注目されている。

 今回のライブは2ndアルバム『し』のリリースにあわせて開催されたもの。アルバムに参加したミュージシャンたちが多数登場する一方で、今のGOMESSが抱える葛藤や苦悩が、ラップという形でそのまま観客に投げつけられる壮絶なライブだった。

 まず前置きとして、これを読んでる方で、もしもGOMESSのラップを聴いたことがないという方がいるのなら、ライブでも動画でもCDでも何でもいいので、まずは一聴してほしい。特に、即興でリリックを生み出すフリースタイルのスキルは素晴らしく表現として圧巻だ。

 そのスキルの高さを楽しんだ上で言うのだが、すごく感想が言いにくいライブだった。

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GOMESS(左)と木村仁美(右)。

 ライブの序盤は、A.Y.A、緑川マリナ、Nej、サクライケンタ、いな(QQIQ)、木村仁美、姫乃たま、E TICKET PRODUCTIONといったアルバム『あい』、『し』で共演したアーティストたちとのコラボがおこなわれ、曲の間では、登場するミュージシャンに対する紹介や、彼らについて自分がどう思っているかについてGOMESSが和気藹々と説明していく。

 しかし、その幸福感はやがて暗転する。「THE MOON」、「遺書PT.2」、「カーテンのない部屋」ではGOMESSの中にある孤独感が膨らみ、彼の中にいる“もう一人の自分”が本名の森翔平をdisり出す。

 今までの一体感なんて嘘っぱちだ。人間は一人なんだ。と、否定されたかのように感じた。

 そして「ゆうかい」(with BOKUGO)の途中でGOMESSは舞台から退場してしまう。

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中原中也の詩「盲目の秋」を朗読するGOMESS。

 しばらくして、ジャケットを着たGOMESSが戻ってきて、ライブは再開されたが、もしかしたら、もう、戻ってこないのではないかと不安になった。それくらいヤバいムードが会場を覆っていた。その後、トーンは少し落ち着きを見せ、中原中也の詩「盲目の秋」を朗読する。

 多くの仲間たちに囲まれ幸せだと言う一方で、自分は孤独だとGOMESSは語る。

 ライブで盛り上がっている観客に対して「みんなうそつき」と口にし、嫌な気持ちになって帰ってもらうと言う。かと思えば、少年の面影の残る愛嬌のある笑顔を振りまき、ライブを盛り上げる。

 絶望と希望、仲間といる時の一体感と部屋に一人でいる時の孤独感。GOMESSの中にある相反する感情が、未整理のまま投げ出される。

 もちろんそこには、パニック障害を抱えたラッパーとしてメディアに露出していることに対するジレンマもあるだろう。テレビで自分のことを知り、応援してくれるファンに感謝をする一方で本当の自分をわかってもらえないという憤り。それでも、自分のことを理解してもらいたいから、次から次へと言葉を吐き出していく。

 だが、言葉を機関銃のように激しく乱射するほど、言葉の煙幕が周囲を覆っていき、意味が届きにくくなっていく。その悪戦苦闘は、「LIFE」の中で歌われる自分の中にいるもう一人の自分との闘いを見せられているようだ。

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