>  > 豊田道倫×テンテンコ対談

なりすレコード〈RECORD STORE DAY〉同時リリース対談

豊田道倫×テンテンコが語る、ロックとアイドルのイリュージョン

関連タグ
BiS
J-POP
アイドル
インディーズ
ロック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
001th_.jpg

左、テンテンコ。右、豊田道倫。

 シンガーソングライターの豊田道倫と、元BiSのメンバーで現在はフリーで音楽活動をするテンテンコが、4月18日の〈RECORD STORE DAY〉に、おたがいに初となるアナログ7インチを「なりすレコード」よりリリースする。豊田道倫は“豊田道倫 & MTV BAND”名義で『I Like You』を、テンテンコは学生時代から交流があるアーティストの滝沢朋恵と組んだユニット“フロリダ”名義で『右手左手』をリリースするが、これまでまったく異なる音楽シーンで活動してきたふたりがここにきて交流を深めた理由とは? 互いの活動や音楽観、地方シーンや今後のビジョンについてまで、幅広く語り合った。(編集部)

豊田「BiSにはイリュージョンとしての美しさがあった」

ーー2人が出会ったのは、テンテンコさんがBiSとして活動する前だったとか?

テンテンコ:そうですね。大学生の時にHEADZというレーベルの土屋さんという方と少しだけバンド活動をしていて、その方が豊田さんのファンだったので、ライブを観に行ったのが最初の出会いです。その後、BiSに入りました。BiS解散後、ひとりになったところで何をしようかと試行錯誤していたのですが、自主企画をやってみようと思い立ち、改めて声をかけさせていただいたのが再会のきっかけですね。14年の9月に主催した「ブタゴリラvol.1」というイベントで、向井秀徳さんやBELLRING少女ハートとともに、豊田さんにもご出演いただきました。でも、私はそのときは何もわからずに衝動で動いちゃったので、楽屋がちゃんと準備できていなかったりして、本当に申し訳なかったなぁ、と。

豊田:そういえば、ステージのMCで楽屋のことを言ったかも(笑)。でも、そんなに深い意味ではなくて、ギャグでちょっと言っただけだから。

 BiSは結構、周りの連中が騒いでいたけれども、あまりチェックはしていなかったかな。でもある日、お昼に新宿を歩いていたら、アルタ前のちょっとしたスペースで、男性が「うおーっ!」て叫んでいて、パッてみたらBiSの解散ライブの発表をやっていたんだよね。平日の昼間に発表をしているのに、結構騒いでいる連中がいてびっくりした。「なんなのこいつら?」って。自分と同じで平日からぶらぶらしているのに(笑)、真面目な態度だと思って。僕のライブに来ている連中にも、BiSにハマっているやつはいて、「最近、僕はこっちなんです」って言われて、「じゃあ、お前はそっちにいけよ」って言ったりして(笑)。

テンテンコ:30代くらいで、もともとロックを聴いていた人がBiSにハマることは多かった印象ですね。一方で、私のイベントで初めて豊田さんを見て、すごく感銘を受けたっていう20代のリスナーもいました。その後、「豊田さんのライブに行っています」って報告をされたり。

ーー音やスタイルは全然違うけれど、リスナーはもしかしたら両者に近しいものを感じていたのかもしれません。

豊田:今のロックシーンにはあまりないような現場の熱狂やスピード感とかが、そのときのBiSにはあったと思うよ。それはある種の風俗というか現象というか、イリュージョンとしての美しさがあったんでしょうね。それはもう、中に入らないとわからない。「好きや!」と思わないと。

ーーテンテンコさんはもともとバンドをやっていて、ロックとかポップカルチャー全体のことはよく知っていて、その後にアイドルの世界に入っていったわけじゃないですか。そこで熱みたいなものは感じましたか?

テンテンコ:熱気は全然違うと思いました。U.F.O. CLUBとかでバンドをやっていたときは、純粋なお客さんは3人くらいなんだろうな、っていう日もあったんですけど、BiSに入って一番最初のライブのときに、もう何十倍、何百倍の人がわあーって雪崩みたいにきて、結構ショックでしたね。でんぱ組.incとかがちょうど流行り出して、パルコでイベントやったりしていたから、なんか面白そうな文化だとは思っていたけれど、現場とかは全然知らなかった。だから、BiSのオーディションを受けたのも、衣装が変で面白かったから、という程度の関心で、正直あまりちゃんとは考えていなかったんです。それがいざ現場に立ってみたらものすごい熱気だったので、もしかしたら、かつてロックなどに向かっていた若者の熱狂は、いまはアイドルカルチャーにあるのかもしれないと思いました。今の大学生くらいの年代の人って、私もそうですけれど、熱い人というか、バカを表に出せるような人があまりいなくて、結構スカしているんです。でも、BiSの現場とかでは、みんな面白いからって自らそういうことをやっていて、それは私にはない部分だったので、すごいなと思いました。

豊田:僕は現場を知らないからね。J-POPは、きゃりーぱみゅぱみゅしか聴かないから、それ以外はまったくわからない(笑)。ただ、ロックやポップスが一番の力を増す瞬間っていうのは、大きい資本があって消費があって、そこに搾取が生まれるときであって、そういう現場がロックにはあまりないというのは事実じゃないかな。一方でアイドルシーンには、今も搾取される構造があって、だからこそ気概というか、ものすごいパワー、イリュージョンが生まれている。それは、50年代とかにロックンロールやポップスが生まれたときと、たぶん同じ構図ですよね。いろいろ歪んではいるんだけれど、ちょっとピュアな部分があって、それがマジックになっている。でも、だんだんみんな賢くなって、自分で原盤を持つとかいろいろな方法で、搾取されずに自分たちで管理していくことを考え始めるんですよ。

テンテンコ:たぶん、BiSにハマっていた人は、搾取しようとしている側とメンバーが対立しているという構造に気付いたんじゃないかと思います。BiSはもともとアイドルじゃなくて、すごく可愛い子たちがいるわけでもないから、本当のアイドルファンには好きじゃない人も多かったと思う。だけど、現場に通い詰めたり、メンバーのブログをチェックしていたりすると、そういう内部の衝突が見えてきて、いつの間にかその戦いに自分も参加してしまうというか。

豊田:それは面白いね。昔のアイドルは、裏にどういうスタッフがいるかとかはまったくわからなかった。

ーーBiSは芸能の裏側をさらけ出すプロジェクトでもありましたね。

テンテンコ:いま世間でウケているアイドルというものをやってみよう、というグループで、とりあえず女の子を集めてアイドル風なことをさせてみた、という感じだったんですよ。すごく斜めからシーンを見ているんです。でも、女の子たちはそれをあまりわかっていなくて、結構まっすぐに頑張っていたんですよね。そこにみんな惹き付けられたのかな。ほかのアイドルグループもそうなのかもしれませんけれど。

豊田:今の話で、ロックファンがBiSにハマった理由がよくわかった。

ーーそういう現場にいることは、結構しんどかったんじゃないですか?

テンテンコ:うん、でもライブはしんどくなかったです。ライブの数が多かったから、体力的な辛さはあったけど、ライブ自体は楽しかったですね。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版