KOHH、5lack、C.O.S.A.……次代を担う若手ラッパーを音楽ライター2氏がレコメンド

 いま、新たな才能を持った若手ラッパーが続々と現れている。これまでにはなかった新鮮なフロウをあみ出したものや、前世代の伝説的ラッパーのスタイルをさらに進化させたものなど、その方向性は様々だ。そこで今回、日本語ラップ・ヒップホップシーンの最前線を取材し続けているライターの二木信氏と中矢俊一郎氏に、次代を担う若手ラッパーをレコメンドしてもらった。

KOHH

[English subtitles] KOHH - 貧乏なんて気にしない (I don't mind if I'm struggling) Official Video

「いま、若手の中で一番勢いのあるラッパーといえば、間違いなくKOHHでしょう。東京・王子の団地で育った母子家庭の不良というバックグラウンドは、先行世代のANARCHYなどとも共通していますが、彼の場合、それだけをウリにするのではなく、韻律の快楽原則に則って簡単な言葉でラップしているのが面白い。たとえば、『FUCK SWAG』(2014年)という曲の『またダッセー奴らがダッセー奴らとダッセー服着てカッケーモノでもダッセーモノに見せる/カッケー奴らはカッケー奴らとカッケーことしてダッセーモノでもカッケーモノに見せる』というラインなんかがそうですね。あるいは、『貧乏なんて気にしない』(14年)や『ビッチのカバンは重い』(15年)という曲などは、子どもにしばらく聴かせたら、意味もわからずにフックを歌い出す可能性もあるんじゃないかと(笑)。それくらい、わかりやすく、なおかつ発声したくなる言葉で表現しているのですが、そういうアプローチは実は簡単なように見えて、これまでの日本語ラップでなかなかなし得なかったことだと思います」(中矢俊一郎氏)

5lack

-HNGRI KILLIN!!- 5lack/Beats by KILLER-BONG

「ソロのほかPSGやSICK TEAMというユニットでも活動する5lackも、まだ20代なので改めて紹介したいところ。彼が頭角を現したのは、『My Space』『Whalabout?』(ともに2009年)の頃ですよね。当時、脱臼したようなビートの上で、東京という都市で生活する若者=自身の日常を切り取りながら『適当にいけよ』とユルく歌う彼の音楽は、日本語ラップのヘッズのみならず、ヒップホップを敬遠していたロック・リスナーや、就職活動で劣等感に苛まれている大学生、営業ノルマに追い詰められる若いサラリーマンなんかにも響いたのだと思います。ただ、5lackは、他ジャンルの要素に頼ることなく、あくまでラップとビートというラップ・ミュージックのフォーマットに沿って新奇かつポップなグルーヴを生み出した。その後、ハイペースでリリースを重ねる中で、だんだんモードが変化したようにも見えますが、本人的には13年の暮れに福岡に移住してからもその追求を続けているのはではないでしょうか。実際、新作『夢から覚め。』では、ミゴスとかエイサップ・ロッキーなど近年のUSヒップホップでよく聴かれる3連でラップする手法を取り入れたりしているのですが、さすがに巧い。先日、取材したところ、『(3連のラップを)真似するほかの日本人ラッパーはみんなヘタクソだなと(笑)。(中略)そういう人たちの仕事を奪っちゃうかも。俺、絶対にラップが巧くなってるんですよ』(参考:サイゾー2015年4月号より)と言っていました」(中矢俊一郎氏)

C.O.S.A.

 

「C.O.S.A.は愛知県知立(ちりゅう)市出身のラッパーで、最近ファースト・アルバム『Chiryu-Yonkers』を出しました。THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOと、2004年に亡くなったTOKONA-Xの才能を合わせ持つような、力強い存在感を放っています。ヒップホップの世界で“クラシック”とは歴史に残る名盤を意味しますが、彼の『Chiryu-Yonkers』はすでにそういうクラシックの風格さえ漂う作品です。10年後にも残る名盤でしょう。自主流通のため、まだあまり知られていませんが、ライヴも素晴らしく、これから確実に名前が広まっていきそうです。最近、特に愛聴していますね」(二木信氏)

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