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矢野利裕のジャニーズ批評

ジャニーズWEST、デビューアルバムに冠された「GO WEST」が示唆する壮大な物語とは?

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 「ズンズンドコ、ズンズンドコ♪」となにげなく聞こえてきたことに嬉しくなって書いたのが前回の記事(参考:ドリフターズ、氷川きよしから、ジャニーズWESTへ……今も歌い継がれる「ズンドコ節」の系譜)だが、その流れで、デビューアルバム『go WEST よーいドン!』を聴いたら、これが想像以上にすごかった。デビューシングル「ええじゃないか」も楽しいが、かなり低音の効いたダブステップ調の曲「粉もん」や、湘南乃風顔負けのダンスホール・レゲエ「バンバンッ!!」など、ほとんどやりたい邦題である。とか言っていると、クール&ザ・ギャング「CELEBRATE!」をさらにオシャレにしたような好曲「P&P」なども流れてくるので侮れない。

 その流れで、デビューアルバム『go WEST よーいドン!』を聴いたら、これが想像以上にすごかった。デビューシングル「ええじゃないか」も楽しいが、かなり低音の効いたダブステップ調の曲「粉もん」や、湘南乃風顔負けのダンスホール・レゲエ「バンバンッ!!」など、ほとんどやりたい邦題である。とか言っていると、クール&ザ・ギャング「CELEBRATE!」をさらにオシャレにしたような良曲「P&P」なども流れてくるので侮れない。

 しかし、なにより印象的なのは、これでもかというほどに讃えられる「KANSAI」(関西)である。この関西賛美は、「KANSAI BANZAI イケてます!」と叫ばれる「LET’S GO WEST~KANSAI!!~」を筆頭に、全編にわたって繰り広げられる。なんたって、「この地球もほら、たこ焼きのかたち」(「浪速一等賞!」)なのだ。ジャニーズWESTは、西側のジャニーズとして、東京のジャニーズにはない魅力を打ち出そうとしているのだろう。

 その「LET’S GO WEST~KANSAI!!~」という曲名にも使われているが、本作に冠された「GO WEST」というのは、実は重要なキーワードである。というのも、世界史的に見ると、文化は西へ西へ移動してきた、という経緯があるからだ。新天地を目指したヨーロッパ人がアメリカに行き、さらにそこから一攫千金を目指した移民たちによって西部が開拓されていく……。長い歴史のなかで、人と文化はつねに西を目指していたのだ(もちろんその歴史はヨーロッパ中心のものでしかなく、そこには侵略された先住民など語り落とされた存在がいくらでもいるわけだが)。

 「GO WEST」というのは、ニューヨークの有名なディスコグループ、ヴィレッジ・ピープルの曲名でもある。ゲイのアイコン的な存在だったヴィレッジ・ピープルは、もともと西部開拓の合言葉だったこの言葉を流用して、「アメリカ西海岸を目指そう!」と呼びかけた。というのも、アメリカ西海岸、とくにカリフォルニア州サンフランシスコは、ゲイの解放区とされていたからだ。東海岸で抑圧されたマイノリティが、西海岸で抑圧からの解放を目指すこと。とくにディスコの文脈において、「GO WEST」という言葉はこのような意味が込められている。やはりゲイをカミングアウトしているニール・テナントはかつて、ペット・ショップ・ボーイズで「GO WEST」をカヴァーしたことがあったが、このカヴァーにもそのような背景を読み取ることができる。だとすれば、アメリカ西海岸のカリフォルニアで生まれ育ったジャニー喜多川にとって、「GO WEST」という言葉の響きは特別なものだったろう。

     
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