トライセラ和田×バイン田中が語る、ロックバンドの美学(後編)「音楽にはセクシーさがすごく大事」

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 ともに97年デビュー、同期として互いに認め合うTRICERATOPS・和田唱とGRAPEVINE・田中和将の特別対談・後編。前編(『トライセラ和田×バイン田中が語る、ロックバンドの美学(前編)「お互い違う場所で切磋琢磨してきた」』)では両者の出会いからバンドを続けてきた原動力を語ってもらったが、後編では自身の音楽的ルーツから現シーンへの提言、さらには新作の内容について、率直に語り合ってもらった。(編集部)

「今の若い子らは企業家気質の方が多いと思いますね」(田中)

――和田さんと田中さんは、音楽ビジネスやフェスを巡る風潮など、今のシーンの状況や若い世代のアーティストをどう見ていますか?

田中和将(以下、田中):まあ、やっぱり僕らは狭間の世代なんですよ。僕らがバンドを始めた時代っていうのは、バンドでやっていくとなると、もうアマチュアかメジャーデビューか、その二者択一だった。でも今はもっとやり方が多様化してる。いろんな発信のやり方がある。だからか、今の若い子らは企業家気質の方が多いと思いますね。

――企業家気質?

田中:自分で企画を立てて音楽を作ってるというかね。バンドであってバンドでないような、デスクトップ上でかなりのクオリティのものを作っちゃうようなやり方もたくさんあるわけじゃないですか。発信するのも別にメジャーでなくてもいいわけで。僕なんかは個人的にそういうやり方を全く勉強してこなかったんで、悪く言うとあまりにも世間知らずなんです。だから、そういうことを一生懸命やっている若い世代を見ると、すごく立派だと思う。

――和田さんはどうでしょう?

和田唱(和田):そうだな……確かに自分たちが狭間の世代だなっていうのはすごく思ってます。あと、今の若いバンドの曲はテンポが速いですよね。

田中:はははは、確かに。

和田:フェスに出ても、みんなテンポ速いなってすごく感じるんですよ。今の若いバンドはどんどんテンポが速くなってる。あとは声が高いですね。なんだろう? これって何が関係してるのかな?って思うんですよ。やっぱり草食化かな?とか。

田中:あははははは! 草食化と関係してんの!? マジ!?(笑)。

和田:だってさ、ドスがきいた男性ヴォーカル、いる? 

田中:確かに肉を食ってない感じするな、みんな。

和田:だから、たぶんセックスとかもあんまり興味ないんじゃないかなって(笑)。俺が気になるのはそのへんですね。

――そのあたり、田中さんはどう思います?

田中:それを無理やり僕が言いたかったことにこじつけると(笑)、バンドをやることの肉体的な喜びよりも、デスクトップ上でしっかりと構築することの方が大きくなってる気はしますね。ビジネスにしても、例えばグッズを売ったり、CDのジャケットを自分たちで作ったり、プロモーションビデオも作ったり、配信の仕方を考えたりしてる。そういう企画力、企画のことに腐心しているバンドがすごく多いと思うんですよ。そういうバンドは、デスクトップ上で作った曲を一応バンドで表現するんやけども、結局バンドならではの「よっしゃー!」っていう感じにならない。頭の中でできたものをなぞるようなことになることが多い。そういう気がしてますね。それはもしかしたら草食化と言えるかもしれない。

和田:そうそう! そういうことだと思う。

田中:無理やりのこじつけかもしれんけどね。

和田:いや、実際ここ数年、特に感じますね。男の子たちもみんな顔が見えなくなってきちゃってるし、前髪で顔を隠してる子も多い(笑)。もちろん僕は、いわゆるロックバンドのロック然とした佇まいとか、特に好きではないんですけど――。

田中:あ、俺もそうやな。「ロックはこうあるべき」って言ってるヤツ、ちょっとウザいもんね(笑)。

和田:そう。別に何でもありだし、自由なんですよ。もともといろんな音楽のジャンルが好きですし、いろんなものが共存してる今のフェスとかも楽しくていいとは思う。でも、それと同時に、やっぱりセックスに興味ないのかな?って思うんです。セクシーさがなくなってきてるのは残念。俺が好きなヴォーカリスト、好きな音楽にはそれがあるんです。

田中:それはすごくわかる。

和田:わかるでしょ? フェスで若いバンドを観ててもそれがなくなってきてるなぁって。僕らより上の世代の人たちはそれがあるんですよね。

田中:そのセクシーさっていうのは、いろんなことを含めてのことだよね? 単に見た目がセクシーとかそういうことじゃなくて、奏でる音やフレーズがっていう。それはすごくあると思うよ。

和田:そう、そう。なんでかなって思うんだけど。

――たしかに、曲のテンポが速くなるとセクシーさは出にくくなりますよね。

和田 そう! テンポが速くて「オイ!オイ!」だとセクシーじゃなくなりますね。やっぱり優雅な動きっていうのは、ゆっくりじゃないとできない。

田中:若いんだよ、それはきっとね。もう自分が気持ちよくなりたいねん(笑)。

和田:わかる。でもバインは若い時から速いテンポの曲なかったよね。

田中:ないね。俺らはいまだにない(笑)。

和田:そこには俺はすごく共感する。やっぱり最初に会った時「この人たちは理解できる」と思った俺の気持ちは正しかった。

――田中さんは、音楽性とセクシーさの関係ってどう捉えてますか?

田中:僕もそれはすごく大事なもんだと思ってますしね。セクシーさという言葉ですべてが言えるかどうかはわかんないですけど、自分たちもそういうものを求めて聴いてるような気がしますし、作るもんもやっぱりそうでありたいと思ってる。

和田:田中くんは大丈夫よ。

田中:ははは! そういう意味では、自画自賛するわけじゃないけど、僕たちはかなりグルーヴィーな音楽を志してると思います。

和田:そう! それに田中くんはどんどん声に色気が出てきているしね。

田中:嬉しいなあ。歌に関してはヴォーカリストとしての覚醒が繰り返されていくので、自分でもそういうことは思います。

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