トライセラ和田×バイン田中が語る、ロックバンドの美学(後編)「音楽にはセクシーさがすごく大事」

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「黒人音楽の節回しだったり、グルーヴィーなところにセクシーさを強く感じる」(和田)

――TRICERATOPSはアルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』が12月にリリースされ、GRAPEVINEはアルバム『Burning Tree』が1月28日にリリースされます。お互いの新作について、それぞれの感想はいかがでしょう?

和田:聴きましたよ!

田中:あざーっす。いや、俺も聴かせていただきましたよ。

和田:俺、何の曲が好きだったと思う?

田中:ははは、何やろうな。「KOL」とか?

和田:あのバラードの「Weight」っていう曲がすごく好き。ああいうタイプのバインの曲は昔から好きなんだけれど。

田中:メロが際立った曲やもんね。

和田:うん、でもここにきてさらに磨きがかかってきたと思う。田中くんの声にまた艶が出てきたというか、もともと中性的な声だと思うんだけれど、そこに男っぽさが加わってきたというのかな。なんかね、いいんだよ。

田中:いやいや、ありがとうございます(笑)。

和田:あ、あと田中くんがいいのはあれだね。これは俺の好きなヴォーカリストの条件でもあるんだけど、強烈なロックのシャウトもできるし、すごくスウィートにも歌える。これが共存できる人って実はあんまりいないんですよ。

田中:そうね。やれてるかどうかはわかんないけれど、自分でもそれを共存させようと思ってやってる。ジョン・レノンだってミック・ジャガーだってみんなそうでしょ? でも、周りをみると意外とそういう人は少ないなって思うこともある。

和田:そうそう。田中くんは、それがどんどんできるようになってきてると思う。俺の理想のヴォーカリストになってるなぁって思います。ちょっと偉そうですけど(笑)。

田中:いやいやいや、嬉しいです。じゃあ、今度はそろそろ僕が褒めます(笑)。

――田中さんはトライセラの新作をどんな風に聴きました?

田中:アルバムは抜群に良かったですね。まず最初に、もうバンドで、ライブで再現することを一旦置いといてレコードを作ってるなって思って。そういう、いろんなことを試してる感じにすごく、まず嬉しさとワクワク感がありましたね。

和田:ほうほうほう。

田中:で、シングルになった「スターライト スターライト」とかもそうですけど、随所に古い音楽が好きな人間をニヤリとさせるフレーズと音色がある。かと思えば、「あれ? ストロークスじゃん」みたいなイントロの曲もある。また新しいトライセラに会えたっていう感想です。

――曲でいうと、どのあたりがお気に入りでした?

田中:2曲目の「HOLLYWOOD」かな。あれを聴いて、もう、うふふって思いました。

和田 あはははは! ありがとうございます!

田中:アウトプットは違うけれど、理解ができるというか。そういう感じなんですよね。

和田:そうそう、そうなんですよ。俺もそう。

田中:で、トライセラに関しては、今回のいろんな実験的な録音の仕方というのは置いておいたとしたら、音楽的には一貫してやっぱりやりたいことの筋が通ってる。で、最近はトライセラを真似をするようなバンドもたくさん出てきているわけですよね。でも明らかに違いがあるんですよ。

――それはどういうところにあるんでしょう?

田中:トライセラ以降に出てきたスリーピースのバンドのアレンジって、ざっくり言うと歪ませたギターのパワーコードと四つ打ちのリズムで曲を作る人が多いと思うんです。「♪ドッチードッチー」って。最近は高速の四つ打ちが多かったりしますよね。あのパターンってすごく曲が作りやすいんだろうと思うんですよね。でも、そういうことをやるスリーピースのバンドの多くには足りないものがある。何が決定的に足りないかというと黒人音楽の素養が足りない。

和田:ははははは! いやあ、見事に言い放ってくれましたね。でもほんとにそういうことだと思う。

田中:トライセラはそういうところがいいと思うんですよね。和田唱の作る曲のコード進行とメロディは完全にそれがある。だからもうマイケルに感謝ですよ。

和田:ははは! やっぱり田中くんはそうやって全部わかってくれてるんで、嬉しいですよね。

――黒人音楽のルーツがあるかどうかが、多くの若いスリーピースバンドとの大きな違いになっている。

田中:そう。これは真似しようと思っても、そこが染みついてないとなかなかできないですからね。

和田:ほんとにそうだと思うんですよ、こればっかりは。ひょっとしたら、これがさっき言ったセクシーさにつながるのかな。特に俺とか俺とか田中くんは、黒人音楽の節回しだったり、グルーヴィーなところにセクシーさを強く感じるので。

田中:だから、トライセラの魅力って、もしかしたらファンの間でも3〜4割ぐらいの人が勘違いしてるのかもしれないですよね。ゴリゴリなリフの踊れるロックだと思われているし、自分たちでもそう言ってたりわけなんですけれど、決定的に重要なのは、黒いフレーバー。これは勘違いしてほしくないというか、これが真似できへんポイントやっていうのはみんな知っといてほしいなと思いますね。

和田:そうなんです。いや、ほんとに。R&B系の人はともかく、自分たちより若い世代のロックバンドの中には、そういうフレーバーを感じることがほとんどない。

田中:いや、ほんまにないのよ。ゴリゴリなロックのリフで始まったとしても、トライセラの曲は、一筋縄ではいかないコード進行のメロディが出てくる。転調が行われたりする。そこで「うわ、黒っ!」って思う(笑)。

和田:これは染みついてないとなかなか難しいもんだと思うんですよね。やっぱり10代の頃に聴いてたものって大事だよね。

田中:大事やし、もし、例えばトライセラのことが好きだとかGRAPEVINEのことが好きだって言ってくれる若いバンドがいたとしてね、それは単純に嬉しいんですけど、もしそう思ってもらえるのであれば、僕らの背景に脈々とあるルーツのほうまで見通してほしいなっていう気はしますね。

和田:うん。その通りだね。

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