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lyrical schoolが新作で示した「アイドルラップ」の可能性 再録曲に表れたグループの成長を読む

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香月孝史
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 清純派ヒップホップアイドルグループ・lyrical schoolは、2010年にtengal6として結成され、2012年に現在の名前へと改名。タワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」へと移籍し、以降その勢いを着実に伸ばし続けているグループだ。今回は結成4周年を迎え、新作『PRIDE』をリリースした彼女たちについて、ライターの香月孝史が分析した。(編集部)

 lyrical schoolの新曲「PRIDE」は、彼女たちのイメージからすれば一見新鮮でもあるような、ハードさやタイトさを打ち出したナンバーになっている。しかしそれは彼女たちにとって、変化球やあえてのイメージチェンジのような位置づけのものではない。ライブで見せつけてきたパフォーマンス力、彼女たちの今を象徴する力強さからごく自然に導かれた、現在のlyrical schoolを代表する「誇り」に満ちた楽曲である。

 そんな彼女たちの姿を刻みつけるのは、表題曲「PRIDE」だけでなく、各メンバーの名前が冠された6種類の初回盤に収録された、初期曲のリテイクである。グループとして年数を重ね、様々なライブ、イベントで軽やかに爪痕を残してきた彼女たちは、それらの初期曲をライブの定番曲として進化させ、あるいは折にふれて久々の披露をしてみたりしながら、欠かせないレパートリーとして育ててきた。しかし、観たばかりのライブの記憶をたどろうとしても、ファンがアクセスできるレコーディング音源はごく初期のもの、言ってしまえば今よりはるかに未熟な段階のものしかなかった。今回、「photograph」や「プチャヘンザ!」などの初期曲が新録されたことで、ようやく音源が現場に追いついてくれたとも言える。リテイクされた現在形の初期曲群と、まだメンバーそれぞれのフロウにもさほど違いがなかったかつての音源とを聴き比べると、スキルの差を実感するのはもちろんだが、その差はまた、彼女たちが歩んできたユニークな歴史の証明にもなっている。

 tengal6というグループ名で活動をスタートしたlyrical schoolだが、その立ち位置は当初から独特のものだった。アイドルグループでありつつも、アイドル中心のイベントに出演する割合はさほど高くなく、ヒップホップ畑の出演者たちやバンド編成のグループなどの中に混じって、結成間もない「ヒップホップアイドル」はたびたびライブを行なっていた。かといって、ヒップホップシーンに完全にコミットしようとするわけでもない特有のスタンスは、メンバーやスタッフの試行錯誤と唯一無二の面白さとを同時に垣間見せるものだった。アイドルとして頭角を現したグループが他ジャンルのイベントに出演してインパクトを残すことは今や珍しい光景ではないが、lyrical schoolの場合、初期のライブ活動と方向性の模索の中で、他ジャンルとの融合が自然と多くなっていたのだ。

 その頃から一貫して印象的なのは、そうした独特なスタンスが、決して奇をてらった結果ではないということだ。自らのベストポジションを探りながらも、その活動には過剰な気負いは感じられなかったし、もちろん「アイドル」というジャンルから距離を置こうとするものでもなかった。アイドルという立場でラップを選択し活動する彼女たちに対して、当初ネガティブなリアクションが少なからずあったことも事実だ。にもかかわらず、不思議なほど彼女たちに悲壮感は見えず、また身の丈に合わないハードさを気取ることもなかった。方向性もモチベーションも、現在のようには定まっていなかったに違いない。それでも、今と変わらないテンポ感のステージングで、ラップを揺るぎない武器にしながら、まぎれもないアイドルグループとして歩みを進めていた。

     
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