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石井恵梨子のチャート一刀両断!

嵐、66万枚突破で圧倒的首位の背景 “横綱相撲”に終わらない攻めの一手とは?

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石井恵梨子
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初週セールスが自己最高記録となった嵐。

参考:2014年10月20日~2014年10月26日のCDアルバム週間ランキング(2014年11月03日付)(ORICON STYLE)

 スリップノット6年ぶりの新作が一位となり、洋楽ラウド・ロックファンが「快挙だ!」と騒いだあと、各方面から「1.8万枚で一位になれちゃうチャートってどうよ?」とツッコミが入ったのは先週のこと。あれから一週間が経って、一位は嵐。安定が戻ってきました。

 その嵐。サラリと「安定」と書いてみたが、11年連続でアルバムが一位というのは確かに快挙だし(EXILEの記録に並ぶそうだ)、発売初週で660,204枚というセールスは、このご時世、ほとんど驚異と言ってもいい。だって66万枚のあと、2位の『名探偵コナン テーマ曲集』は11,860枚だよ? 1万人と66万人を同じ世界の出来事として語ってよいものか、これだけの数字の差を前にして「1位」と「2位」にどれくらいの意味があるのかと、しばらく真面目に考えこんでしまった。

 66万人に支えられ、いまや日本のマジョリティ代表となっている嵐だが、アルバム『THE DIGITALIAN』はただの横綱相撲では決してない。むしろ果敢に攻めまくった会心の一枚で、アイドルに疎い私にさえ脂が乗りきっているグループの充実が伝わってくる。今年15周年なのだから、おめでたムードの記念盤を出すこともできたはずだが、今回は「デジタル×嵐」という新たなコンセプトを掲げたダンス・ミュージック・アルバム。流行りのEDMを意識したもの、近未来風、ディスコ風、ビタースイートなポップス、ラップ調などなど曲調は多彩。ただし全曲が止まらないスピードに乗っているというか、何をやっても上手くいく(いや、上手くいかせる)と全員が確信しているような強さがあって、うん、これは一位になるべき作品。トップアーティストが見せるべき冒険心とタフネスの詰まった作品だと思う。

 そして2位のコナン以下、U2、ストレイテナー、ピロウズ、スリップノット、グドモ……とロック系が続いていく。洋楽なら『ロッキング・オン』や今はなき『クロスビート』、邦楽なら『JAPAN』や『音楽と人』が表紙にしてもおかしくない中堅ばかりだ。音楽専門誌のインタビューを読めば「守りに入るのは嫌だ」「自分たちらしさを更新していくことが、いかに大変でやり甲斐のあることか」などの発言がよくあるが、それはロック・バンドだからできる発言ではない。嵐も新作について絶対に同じことを感じていたであろう。

 雑誌の表紙を飾って素敵なことを語っていても、セールスは1万枚を下回る。それがロックの世界の現実なのかと、自分の住む世界の小ささを痛感させられた今週のチャート。そっかぁ、66万枚かぁ……(遠い目)。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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