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市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第2回

SMAPの新作アルバムが示した「底力」 アイドルの概念を一変させた5人はどこに向かう?

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市川哲史
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 1990年代中期、昭和歌謡の象徴と言えるアイドル文化は、一億総J-POP化の波に押され滅亡の危機に瀕していた。それを救うどころかジャニーズ・ブームを見事復活させた最大の功労者が、言うまでもなくSMAPだ。

 1991年デビューながら初めてシングルチャート1位を獲得したのが1994年の12作目『HeyHeyおおきに毎度あり』なのだから、ブレイクまでかなりの苦戦を強いられた。しかしその雌伏期間中から『夢がMORIMORI』や『SMAP×SMAP』などTVのバラエティー番組に積極的に出演し、コントにトークに高い順応力で5人全員がキャラクターを開花させたことが、その後の大躍進に繋がったと言える。要は<笑われても全然アイドル>的な覚悟が、新しかったのだ。

 98年に『夜空ノムコウ』、00年に『らいおんハート』がミリオンを記録すると、03年の『世界に一つだけの花』は歴代シングルチャート9位のダブルミリオン。そもそもアイドルの持ち歌が学校の教科書に載る日が来るとは、誰が想像できたろう。

 彼らの登場によって、アイドルの概念は一変した。かつては全国各地の地方公共団体ハコものめぐりだったコンサート会場は、最低でアリーナどころかドームが当たり前。全国ドームツアーも国立霞ヶ丘陸上競技場コンサートも、そしてコンサート通算観客動員数が1000万人突破したのも、SMAPが日本人アーティスト初なのだから。

 グループ外の個人活動も活発でその露出度が半端じゃない分、芸人顔負けの達者なトークが必須アイテムとなり、俳優としてドラマや映画に主演する風景も日常茶飯事になった。そういう意味ではジャニーズ系内にとどまらない、SMAPこそ平成アイドルのモデルケースそのものなのである。

かかわる者を輝かせる、一種のメディア機能

 そんなイノベーター的存在のSMAPなだけに、アルバムも「従来のアイドルらしくない方法論」で制作してきた。

 まずリリースの頻度。かつてのアイドルは年3枚以上など量産が常識だったが、近年のSMAPは2年に1枚のペースと大物バンド並みだ。ジャケットデザインも斬新だった。アイドルの生命線であるはずのニコパチ本人写真を、一切載せなくなったのだから革命的ですらある。しかも新鋭クリエイターたちをアートディレクターに起用し、たとえばアルバムコンセプトに合わせたドリンクを発売するなどそのトータルデザイン性の高さは、もはやCDジャケットではなく<コンセプトそのもの>と言える。

 そんな脱アイドル志向は当然、収録曲の作家陣にも反映されている。ざっと挙げてもスガシカオ、山崎まさよし、槇原敬之、TAKUYA(ex.JUDY AND MARY)、久保田利伸、LOVE PSYCHEDELICO、宮沢和史、エリック・クラプトン、デヴィッド・フォスター、トータス松本、田島貴男、山口一郎(サカナクション)、石野卓球、小西康陽、ケツメイシ、KAN、つんく♂、中田ヤスタカ、前山田健一、ナオト・インティライミ、椎名林檎、久石譲、鈴木おさむ、太田光、町田康、野島伸司など、世代やジャンルに囚われないアーティストたちが積極的に起用され続けてきた。

 これだけ多彩な楽曲スタイルの競演は収拾がつかなくなる危険性を孕むが、SMAPの場合は<彼らが唄っている>という唯一の共通項だけで、空中分解することなく一枚のアルバムとして成立してしまう。しかも「あの」歌唱力なので一聴すれば、「あ、SMAPの曲だ」と誰もがすぐ判別できるのだった。怪我の功名ですわ。

 思うにSMAPのアーティスト性とは、実は<圧倒的な記名性>という存在感に他ならない。だからこそジャケットに姿が写ってなくともどってことないし、ツアーやアルバム・リリースのインターバルに焦る必要もない。

 そして彼らの存在感には、かかわる者を知らず知らずに輝かせる一種のメディア機能がある。SMAPのアルバムを聴いてると、曲提供したアーティストたちの個性的なクリエイティヴィティーが、彼ら自身の作品以上にクリアに見えてくることに気づく。いや、提供する側もSMAPを通して、音楽的好奇心や冒険魂を満喫しているに違いない。

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