WEAVERが振り返る、音作りに賭けた5年の日々「楽器の満ち引きのような面白さを出したい」

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映画『百瀬、こっちを向いて』の主題歌も担当するWEAVER。

 若手ピアノロックバンドの代表格であるWEAVERが、6月11日にベストアルバム『ID』をリリースする。同作は、2009年のデビューから現在までの5年間の間に生まれた代表曲を網羅しつつ、新曲「Hope~果てしない旅路へ~」も収録された16曲入りの作品。今回リアルサウンドでは、留学先のロンドンから一時帰国中の杉本雄治(ヴォーカル、ピアノ)、奥野翔太(エレクトリック・ベース、コーラス)、河邉徹(ドラム、コーラス)の3人にインタビューを実施。先日、彼らの楽曲を当サイトで分析(【WEAVERが挑戦する新たな3ピースサウンドとは? シングル「こっちを向いてよ」を楽曲分析】)した小林郁太氏を聞き手に迎え、作詞作曲やアレンジの手法の変遷や、プロデューサー亀田誠治氏から学んだことなど、強いミュージシャンシップを持つ3人の姿に迫った。(編集部)

「それぞれ違うリズムを奏でて合わせたときにグルーブが生まれる」(杉本)

――今日はWEAVERのベストアルバム『ID』のリリースを期に、楽曲作りの視点からお話を訊きたいと思います。まず、作曲者である杉本さんと奥野さんは、曲を作ってからバンドのアレンジに入るまでに、どのくらい作りこみますか?

杉本:最近ではほとんど入れたい楽器は入れて、全体のイメージが伝わるようにしてからメンバーに渡すことが多いですね。昔は本当にピアノと歌だけということも多かったです。

奥野:僕も、ひと通り作って出します。

――すると曲が上がってきた際に、他のお二人はどんな形でそれと向き合いますか。

河邉:まずはデモのイメージを尊重してスタジオで試します。それで印象が変わることももちろんあります。作っていない2人にも「もっとこうしたらいいんじゃないか」という意見が絶対にあるから、作ってきたデモを元にして「リズムをこう変えた方がいいんじゃないか」という相談をします。

――実際にバンドでやってみてアレンジが変わっていくことは往々にしてありますが、作曲者の元々の曲のイメージと、バンドの中で生まれたフィーリングと、どちらを優先しますか?

杉本:僕は自分が作っているから、「こうしてほしい」というイメージはあります。絶対にそうしたいところもありますけれど、全てを自分のイメージ通りに固めてしまったらつまらないので、ある程度2人に考えてもらう余白は作ります。あとは、自分にはないものが生まれてくることを楽しみにして2人に聴かせる部分もあるので、曲の展開が変わったり、新しいフィーリングが出てくるのはウェルカムです。自分も奥野から曲をもらったときには、「新しいアイディアを渡したい」という感覚はいつも持ちながら自分のパートを考えます。

――ドラムとベースのアレンジに関して、奥野さんと河邉さんはWEAVERの中で何を一番重視していますか?

河邉:基準にしているのは歌のアクセントだと思います。

奥野:歌を意識するという部分では、杉本がそういう作曲家だからデモの時点で既にけっこうできています。ただ複雑にしようとする傾向があるから、バンドのアレンジで逆にシンプルなることもありますね。そういうところは、お互いの意識を汲み取りつつ、楽曲が求めているものをどう形にするのがいいか考えます。

――例えば歌の持っているリズムとピアノのリズムが離れていた場合に、ドラムとベースでそれぞれどちらに寄せよう、などと話し合ったりは?

河邉:よく「ピアノだけ食ったら(シンコペーションしたら)いいんじゃないか」というような話はします。全員が歌に合わせたら、ギターがいない分アタックが強くなりすぎちゃうので、ピアノだけ別のリズムを弾く、というのはよくやる方法だと思いますね。

奥野:誰かが接着剤的な役割をして、基本のリズムと裏を取っているリズムのあるセクションをつなぐようにします。全員が同じリズムを取ることは意外と珍しいです。

杉本:全員が全員歌に向かっていくとシンプルすぎてつまらなくなるので、良い具合のグルーブ感の生まれ方、それぞれ違うリズムを奏でて合わせたときにグルーブが生まれる、というところを探ります。

――では、今までの曲の中で、ターニングポイントになったものやその中での工夫を伺います。初期ではどの曲が印象的ですか?

杉本:いろんなインタビューで言っていますが、「トキドキセカイ」は僕たちの中でも大きなターニングポイントになっています。この曲が生まれる半年くらい前までの僕たちは、僕ともう一人のギターとのツインギターバンドでした。そのメンバーが抜けて、どうしようかと悩んでいた時期に、ずっとお世話になっていたライブハウスのスタッフさんが「ピアノでやってみたら」と提案してくれました。最初はギターでやっていた曲を頑張ってピアノアレンジにしていたんですけれど、どうしてもピアノである必然性が曲の中で表現できていませんでした。ピアノの持ち味をしっかりと表現できる曲を、と悩んで作り上げたのが「トキドキセカイ」です。

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