『アナ雪』熱唱で改めて注目 歌手・松たか子の実力とキャリアとは?

 現在大ヒット中の映画『アナと雪の女王』の勢いが止まらない。4月18日の公開36日間時点で累計動員数が800万人を突破し、4月19日には累計興行収入が100億円に到達したことが明らかになった。

 この勢いは音楽業界にも波及しており、劇中で使用されている「レット・イット・ゴー」などの曲は、本国アメリカ版で同曲を歌っているイディナ・メンゼル、日本語吹き替え版の劇中で同曲を歌っている松たか子のほか、ヒットチャートを席巻しつつある。(参考:CDチャートには反映されない、史上空前の『アナと雪の女王』旋風

 その中でも歌手としての評価が一気に高まっているのは、同作品でエルサの声を務める松たか子である。俳優として一般的には認知されている彼女だが、音楽ファンの間では歌手として評価されることも実は少なくない。

 6枚目のオリジナルアルバム『harvest songs』では小田和正や片寄明人(GREAT3)などを迎えて制作され、7枚目の『僕らがいた』ではスキマスイッチ、TRICERATOPS、真島昌利を、8枚目の『Cherish You』では竹内まりやを迎えるなど超一流の制作陣を迎えたアルバムをリリースしている。

 豪華ゲストを迎えて高い評価を得てはいたものの、売上という面ではここまで日の目を見ていなかった彼女。その理由とは一体何なのだろうか? 音楽業界関係者はこう分析する。

「1997年に『明日、春が来たら』でデビューしたとき、既に彼女はトップ女優としてドラマや舞台で大活躍していました。同曲は話題性が先行して50万枚以上の売上を記録、自身最大のヒットとなりましたが、その後はどうしても『本業は役者』というイメージが払拭できなかった。また役者業が多忙なため通常のミュージシャンのように積極的なプロモーション露出ができなかったことも彼女の歌手業を一般に浸透できなかった要因でしょう」

 最後にシングルがリリースされたのは2009年の「君となら」、その前だと2006年の「みんなひとり」まで遡る。その間アルバムこそリリースしていたものの、コンスタントにシングル盤をリリースできなかったことも「歌手・松たか子」として認知が高まらなかった理由かもしれない。

 マルチな才能を持ったが故の不遇。しかし、ミュージシャンのなかには以前から松たか子のシンガーとしての実力を高く評価しているものも多い。山下達郎は自身がパーソナリティを務めるラジオ番組「山下達郎のサンデーソングブック」のなかで彼女について「松たか子さんは実はピアノが上手で読譜力も抜群なんです。(竹内まりや作詞作曲の『リユニオン』を聴きながら)こういうリズム感や安定感はさすがですね」と評した。また高橋優は「たまたまテレビで流れていた『ほんとの気持ち』という曲に一目惚れならぬ”一聴き惚れ”をしました。声や唄い方にビビッと来て、一気に松たか子という存在が僕の中で大きくなるのを感じました」と語っていた。

 前述の業界関係者も「元々もっていた声質や音楽的素養に加え、ミュージカルの舞台を数多く経験することで歌の表現力が大きく広がった。キャリアを重ね脂が乗ったこの時期に『レット・イット・ゴー』が大ヒットしたことは必然だったのかもしれません」と話す。

 4月26日(土)からは新たなバージョンとして、3D吹替え版の上映が全国でスタートするほか、映画にあわせて歌うことができる特別興行「みんなで歌おう♪歌詞付版」の上映も実施されるなど、『アナ雪』現象はまだまだ止まる所を知らないようだ。
(文=北濱信哉)

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