OSTER projectが語るボカロシーンの変化「今は視聴者も多様な曲を受け入れる体勢ができている」

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『Attractive Museum』では、さまざまな音楽ジャンルに挑戦している。

「ボーカロイドという存在自体が、アーティストイメージに引っ張られることが少ない」

――萌えキャラ的な方向で見られていたということですね。それが一気にムーブメントになり、ある種のコミュニケーションのツールにもなっていきました。当事者としてはどう見ていましたか。

OSTER:意外でしたね。最初はこんな商業的に展開されるという予想も全然ありませんでしたし、着うたで配信されただけでも大騒ぎになっていた頃を経験しているので、よくこれほどまでになったな、と感慨深いです(笑)。

――「声が良い」ということでしたが、ご自身で歌入れをすることは考えられなかったんでしょうか?

OSTER:あったと言えばあったんですけど、聞くに耐えなかったです(笑)。それに当時はオーディオ系統の知識があまりないし、録音の仕方もよくわからなくて、MIDIで完結させてきたような感じでした。その中で、マイクなどの機材を使わずに、全部パソコンの中だけで完結させることができる、という新鮮さに惹かれたのも、ボーカロイドを買った理由の一つですし。生歌とボーカロイドを比べると、「やっぱり生いいな」とは思っちゃいますけど(笑)。

――では、生歌ではなくボーカロイドだから出せる魅力とは?

OSTER:ボーカロイドという存在自体が、アーティストイメージに引っ張られることが少ないことが一番大きな強みかもしれません。例えば辛辣な歌詞をアーティストに歌ってもらうと、どうしてもその人のアーティストイメージや意向が絡んできて、意図しない方向へ向かう場合があります。それに対してボーカロイドは、作り手の伝えたいメッセージを、ボーカリストのイメージを挟まずに直に発表できるツールだと思います。

――今作『Attractive Museum』では、いろいろな形で活動してこられたキャリアを総括するような、様々なジャンルの楽曲が収録されています。この作品はご自身の中でどんな位置付けなのでしょうか?

OSTER:かわいい系の曲がメインだった最初の頃に比べて、最近は曲のバリエーションを広げていこうと取り組んでいるんです。今回の『Attractive Museum』もタイトル通りの意味で、博物館の展示のように様々なジャンルの楽曲があって、制作スタイルの変化が見えてくるアルバムになりました。

――「制作スタイルの変化」ということですが、具体的には初期のかわいい系からどのように変わってきたのでしょうか。

OSTER:変わってきたというより、インスト楽曲を作っていた頃に戻った感じです。ボーカロイドシーン自体が多様化してきて、かっこいい楽曲も最近では増えているので。初期の2007年頃は、かわいい系の楽曲で「私頑張って歌うよ」という、ボーカロイド自体をテーマにしたような曲が中心でしたよね。でも今は視聴者もいろいろな楽曲に対して受け入れ体勢ができたと思います。そういう流れの中で、自分も色々なことがやってみたくなったわけです。

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