峯田和伸と豊田道倫が語る、音楽の生まれる場所「街は静かだけど、心のノイズは増えている」

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左、豊田道倫。右、峯田和伸。東京・下北沢にて。

 9年ぶりのオリジナルアルバム『光のなかに立っていてね』と、ライブアルバム『BEACH』を同時リリースし、轟音ノイズに満ちたサウンドで2014年初頭の音楽シーンを震撼させた、銀杏BOYZの峯田和伸。そして、90年代半ばよりパラダイスガラージおよびソロ名義でオルタナティブな音楽作品を連発し、峯田を含めた後続世代からもリスペクトされている孤高のミュージシャン、豊田道倫。バンドサウンドに深く取り組んだ新作『FUCKIN' GREAT VIEW』をリリースした豊田は、銀杏BOYZの新作から近年にない「カオス」を感じ取ったという。リアルサウンドでは今回、奇しくも同じ日に新作を発表した両者の対談が実現。和やかな雰囲気のなかで、二人の会話は互いの音楽に対する思いから、「街」「ノイズ」をめぐるディープな考察へと展開した。

峯田「豊田さんの声は、出そうと思って出せる声じゃない」

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ツアーの際は、車で豊田の音楽をよく聴いていたという峯田。

峯田:昨日、豊田さんの昔のパラダイス・ガラージの音源を聴いてみようと思って。『グッバイ大阪』とかあったじゃないですか。なんかあの、風俗店のような空気感がすっごい面白かったです。編集盤って感じしなかった。なんか映画みたいな、いい感じのところで「移動遊園地」が流れてバーンって。「おやすみ、ねずみくん」とか、ハーモニカの音が鳴らないで、息が「ふーっ!」って、ああいう感じとかがすごいですね。なんていうんですかね、ベッドルーム感というか。

豊田:当時はああいうのがあちこちであったんだよね。アメリカの音楽だとローファイとか。自分ではぜんぜん意識していないんだけど、同時多発的にああいうのがちょこちょこあって。それは90年代の特色かもしれないね。でも、今の日本のロックと欧米のロックがリンクするかというと、あんまりわからない。僕は、2000年の時にちょうど30歳で、その時くらいから自分はロックシーンとは違うところにいるんだなって思っていて。それからしばらくして峯田くんとか、また違ったバンドがどーっと出てきて、自分と違うロックファン、あるいは若者たちの熱気を感じてた。ただ、当時は雑誌とかメディアとかの言葉がこそばゆすぎて、若いバンドを聴こうっていう気持ちがあんまりなかった。もしかしたら、僕の世代はそうかもしれない。でも、自分が39歳のときに昆虫キッズっていうバンドと一緒にアルバムを作って、そこから初めて若いバンドとやるようになった。で、彼らが銀杏を聴いていた世代だったので、やっと2000年代のCDを聴いて、「あぁ、彼らはこういうこと歌っていたんだ」と理解した。

峯田:99年にGOING STEADYって言うバンドでCD出させていただいたんですけど、そこからレコード会社と契約、アーティストになって、セカンドアルバムが2001年。その頃にUK.PROJECTの人に「これ聴いてみな」って、パラダイス・ガラージの『かっこいいということはなんてかっこいいんだろう』を渡されて。そっから俺は豊田さんのファンになりました。豊田さんの声は、出そうと思って出せる声じゃなくて。俺、好きなアーティスト何人かいますけど、なんで好きなんだろうと思うと、メロディとか歌詞とかもあると思うんですけど、一番は声なんですよ。発声法とかボイトレじゃなくて、その人の体、その人の器官、その人の体の仕組みからしか生まれないものをちゃんと出せる人が好きなんですね。やっぱ豊田さんは、なんか叙情性とかいろいろあると思うんですけど、俺は声が好き。その声は一回聴くと、あーもう充分だって思うくらいにわかっちゃうんですよね。スタジオにマイクがあって、マイクの前にこう、網になっているのがあって、そこで歌っているのとは違う。室内の環境とか過程とか、そういうのも含めた“声の鳴り方”もちゃんと自分でわかっていて、「俺はこうしないと歌えないんだ」とか、「こうして歌いたいんだ」っていうのがすごく伝わってくるんですよね。

豊田:数少ない支持者だね(笑)。

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