グラミー賞に輝いた17歳歌姫 ロードはなぜ世界中の若者たちの心を捉えたのか?

 現地時間26日に行われた第56回グラミー賞授賞式にて、主要4部門のひとつである“最優秀楽曲賞(Song of the Year)”に輝いた弱冠17歳の歌姫、ロード。“最優秀新人賞(Best New Artist)”を受賞したマックルモア&ライアン・ルイスと並び、昨年大躍進を遂げたアーティストのひとりに数えられるロードとは、果たして何者なのだろうか?

 “ロード(LORDE)”というアーティスト名で活動する彼女の本名は、エラ・イェリッチ・オコナー。ニュージーランドのオークランド出身の17歳(!)だ。12歳のときに地元のコンテストに出演したのをきっかけに、13歳でレコード契約。しかし、“ロード”としての快進撃が始まるのは、ニュージーランドのソングライター/プロデューサー、ジョエル・リトルと共同作業を行うようになってからだった。ドラムマシーンとシーケンサーで作られた静謐なサウンドと多層的なヴォーカル。2012年の11月に、SoundCloud上にアップされた5曲入りのEP『The Love Club』が評判を呼び、翌年CD化。そこに収録されていた楽曲「ロイヤルズ」が、現地のオーディション番組などで次々とカヴァーされ、EP自体も大ヒットを記録する。そんな本国での盛り上がりを受けて、2013年6月、アメリカでも「ロイヤルズ」がシングルとしてリリース。約3ヶ月という長い期間を経て、見事シングル・チャートの1位を獲得したのだった。

 詩人である母親の影響もあり、幼少の頃からT.S.エリオットやアレン・ギンズバーグ、そしてレイモンド・カーヴァーなどの文学作品に親しんでいたという彼女の独創的な世界観と、とてもティーンエイジャーとは思えない肝の据わった歌声。そして、ジェイムス・ブレイクやボン・イヴェールにも通じるような奥行きのあるサウンドスケープ。しかし、彼女の音楽が多くの人々――特にヤングアダルトと呼ばれる層から高い支持を獲得したのは、彼女が紡ぎ出す歌詞の世界観に拠るところが大きいように思う。このたび最優秀楽曲賞に輝いた「ロイヤルズ」で、彼女はこんなふうに歌い上げる。「私たちは決して王族(ロイヤルズ)にはなれない。そんな高貴な血は流れていないの。その手の贅沢はあり得ない。私たちが必要としているのは、もっと別の種類の音楽」。いわゆるセレブリティ・ライフ――昨今のポップソングで頻繁に描き出される、きらびやかでゴージャスな暮らしからインスピレーションを得て書き上げたという「ロイヤルズ」。さらに続けて、彼女はこんなふうに歌うのだ。「私をあなたの支配者にして。私のことを女王蜂って呼んでもいいのよ。私が支配するの。そのファンタジーの中に私を住まわせて」。

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