なぜAnthropicは広告を拒み、OpenAIは導入するのか ChatGPT広告の日本上陸で考える生成AI各社の“哲学”

OpenAIの広告導入に透ける、各社の哲学

 AIとの会話に広告は出していいものか。業界はいまこの一点で見事に割れている。

 火をつけたのはOpenAIだ。米国で2月に始めたChatGPTの広告を、いよいよ日本にも広げる。同社は6月10日、広告に関する規約を加えた新しいプライバシーポリシーを定めた。これが22日に発効する。その日を目処に、無料版と月額1400円の「ChatGPT Go」で広告の表示が始まるとされる。

 同じ「チャットに広告」という話に対して、対話型AIを提供する各社の構えはまるで違う。その違いの中身に、各社がAIとの会話を何と見ているかがそっくり表れている。

OpenAI・Microsoft・Googleが広告へ向かう理由

 まずOpenAI。広告を出す側の筆頭だ。背景には巨額の赤字がある。消費者向けサービスが収益の柱で、膨大な無料ユーザーをどう支えるかという課題が常について回る。その問題に対して、広告は自然な答えになりやすい。同社はこれを「意図ベースのマネタイズ」と呼び、ユーザーが何かを調べて決めようとするその瞬間に広告を差し込む。会話を、次の意思決定が起こる“売り場”に変えたい。そんな思惑が透ける。

 Microsoftはもっと露骨だ。検索エンジンBingと広告ネットワークをすでに抱えており、その資産をそのままAIへ流し込みたい。そこで、Copilotには分割画面で商品を眺められる「Showroom Ads(ショールーム広告)」を導入した。名前がそのまま思惑を語っているように、チャットを、ブランドが接客する展示場をイメージしているのだろう。

 一方で、Googleの足取りは重い。それには検索という巨大な金鉱を別に持つぶん、AIで急いで広告を出す必要に迫られていない背景が考えられる。検索のAI要約にはすでに広告を載せているものの、チャット型のGeminiアプリについては、長く「広告を出す予定はない」と否定してきた。風向きが変わったのは今年4月だ。同社はGeminiへの広告導入を検討中だと認めた。想定されているのは、無料ユーザーを広告の対象とし、有料のGemini Advancedは広告なしのまま残す形だという。

Anthropicを筆頭に、会話を“汚したくない”企業たち

 反対側の筆頭がAnthropicである。収益の多くを企業向け契約と有料サブスクで得ており、そもそも広告に頼る必要が薄い。だからこそ「出さない」を差別化の武器にできる。

 2月に同社は「Claudeは考えるための空間だ」と題したエッセイを公開しており、回答に一切影響しない広告でも拒むという徹底した構えだ。広告が収益の柱になれば滞在時間を最適化したくなるが、最も役に立つ対話はしばしば短く、一度で終わるものだからだという。同社はこの思想を約800万ドルのスーパーボウル広告で打ち出した。「広告はAIに来る。でもClaudeには来ない」。

 Perplexityはさらに踏み込んだ。出した広告を自ら引っ込めたのだ。2024年にいち早く回答の下へ広告を置きながら、2026年にはそれを畳んだ。サブスク中心のビジネスへ舵を切ったうえでの決断だった。理由は技術ではなく信頼にある。ユーザーは「これがベストな答えだ」と信じられなければ使い続けない。広告が1つでも混じれば、答え全体を疑われてしまうため、精度こそが商品だという“読み”である。

 ちなみに、Metaはどちらの陣営にも属さない。会話の中に広告は出さないが、代わりにAIとのやり取りから得たデータを使う。Facebook・Instagram・WhatsAppの広告ターゲティングへ流し込むのだ。巨大な広告事業を別に持つ同社にとって、チャットは新しい広告の“場所”ではなく、既存事業を太らせる“燃料”であるというわけだ。

結局は「誰が代金を払うか」の問題か

 OpenAIのサム・アルトマンは「回答そのものには広告を入れない」と明言してきた。だがAnthropicは、その線が時間とともに動くと警告する。広告のインセンティブは一度入り込むと、境界を少しずつ曖昧にしていく。

 各社の“会話観”は、結局のところ「思想」として天から降ってきたものではない。誰がそのAIの代金を払っているか、それが態度をほぼ決めているのだ。哲学とビジネスモデルは同じものの裏表である。

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