『ストリートファイター6』生ける伝説・ウメハラの試合が世界の話題に ヒット作×スタープレイヤーが生む相乗効果

 格闘ゲーム界のレジェンド、“ウメハラ”こと梅原大吾選手が、海外の強豪として知られるMenaRD選手(ドミニカ共和国)と4月29日に『ストリートファイター6』(以下『スト6』)で対決。YouTubeで実施された公式日本語放送は、最高同時視聴者数が約17万人に達するほどの盛り上がりを見せた。

 格闘ゲームは1対1で運要素もほとんど介在せず、選手のタレント性がもっとも露骨に表れる競技だ。『スト6』のヒット以降、その魅力が改めて広く伝わるようになっており、今回の盛り上がりはまさにそれを象徴する出来事だったと言えるかもしれない。

【公式日本語放送】ウメハラ vs MenaRD: Evo Legends Live

ウメハラが立ち上げた『獣道』 賞金なし、10先で実力を競う企画の意義

 ウメハラ選手とMenaRD選手の戦いは、『獣道』という格闘ゲームのイベントで実現した。同イベントは元々ウメハラ選手が自身の生配信番組の中で立ち上げた企画で、大会のような賞金もなく、ただどちらが強いのかを10先(10本先取)で決めるというもの。短期決戦のトーナメントより実力が反映されやすく、ウメハラ選手が無類の強さを見せてきたルールで、かつてのゲーセン文化を彷彿とさせるような、プライドを賭けた戦いが繰り広げられてきた。

 ただ今回の開催形態をめぐっては運営面で議論もあり、主催側からの謝罪も行われているが、それはそれとして、両者の真剣勝負そのものは多くのファンを画面に釘付けにする内容だった。

 MenaRD選手の熱い挑戦状をウメハラ選手が受ける形で実現した10先は、相手の対応にさらに対応を重ねるようなシーソーゲームの末、10-6でMenaRD選手が勝利。2名のレジェンドプレイヤーによる、見ているだけでも息がつまりそうになる攻防に、約17万人の視聴者が熱狂した。世界大会の決勝でもない、言ってしまえば2名だけの選手によるプライドファイトでここまで人々が盛り上がったのは、両選手のスター性と、戦いに至るドラマがあってこそだろう。そのドラマ/因縁を極限まで突き詰めたのが、そもそも「獣道」という企画だった。

『スト6』大ヒットの背景にある「モダン操作」と「CRカップ」

 『スト6』がここまで流行るに至った経緯自体も、いくつかの要因が重なり、大きなドラマを形成してきた。

 大ヒットの背景としてまず挙げられるのが、複雑なコマンド入力なしで必殺技やコンボを繰り出せる「モダン」操作の導入だ。初心者でも飛躍的に遊びやすくなったことで間口が大きく広がり、これが配信文化との相性の良さを引き出した。

 そのうえで、リリース直後に開催された「CRカップ」の存在も大きい。プロ格闘ゲームプレイヤーと人気ストリーマーたちが一堂に会したこのイベントは、言い訳なしの真剣勝負により大きな盛り上がりを見せた。それまで格闘ゲームをやってこなかった層に、個性豊かなプロたちの名前を広めたという側面も重要だろう。

 さらにこのイベントで大きかったのは、ウメハラ選手を擁するチームが優勝したことだ。それも劇的な逆転勝利も見せた華のある勝ち方で、なぜウメハラ選手が伝説と呼ばれているのか、リアルタイムで知らしめるような戦いだった。詳細は省くが、格闘ゲームの歴史でおそらく最も有名なシーンだと思われる「背水の逆転劇」を再現するようなプレイに、往年のファンが沸き立つとともに、ライト層にも強いインパクトを残したといえる。

『ストIV』時代から続く、ウメハラを起点にした格闘ゲームのリバイバル

 また少し歴史を遡ると、『ストリートファイターIV』が発売された時に、格闘ゲームのリバイバルブームのようなことが起こったのも、ウメハラ選手の復帰があったからだと言われている。ゲームセンターの通信対戦で実装されたランキングに突如として現れた1位のプレイヤーが「あのウメハラらしい」という噂が全国を駆け回り、熱狂を生んだのだった。

 当時は特定のコミュニティ内での大ニュースといった形だったものの、今では動画配信やSNSなどの普及で、より広く情報が伝播するようになった。新規プレイヤーの参入を妨げていた複雑な操作性が解消され、「遊びやすさ」が整い、この両輪が揃ったことで、現在の盛り上がりが生まれているのではないだろうか。

スター選手が支えるeスポーツ、ドラマを背負った格闘ゲームシーンの行方

 ほかの対戦ゲームに目を向けると、世界大会の決勝が驚異的な視聴者数を誇る『League of Legends』にはFaker選手という絶対的なスターが存在する。『Apex Legends』や『Valorant』、格闘ゲームに目を移せば『鉄拳』や『バーチャファイター』でも、当然ゲーム自体のクオリティー、面白さを大前提として、それぞれにレジェンドと言える選手の存在が人気を牽引してきた側面は大きい。

 特に日本において、eスポーツの中でもとりわけ格闘ゲームは長い歴史を持ち、長年にわたってプレイヤーのドラマが積み重なってきたドラマがある。「獣道」のような企画が今後コンスタントに行われていくかは不透明だが、さまざまな文脈を背負った強豪プレイヤーのプライドバトルが、さらにシーンを盛り上げていきそうだ。

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