結月ゆかりMμが歌い踊る、VRライブアプリを観て 声優・石黒千尋が手がけた『VR Live 結月ゆかりMμ - あなたと一緒に』をレビュー

結月ゆかりMμのVRライブアプリをレビュー

 VRアプリケーションの中には、様々なキャラクターが眼前で歌い踊るライブパフォーマンスを観賞できるものがいくつか存在する。こうしたVRライブは、近年では映画『超かぐや姫!』がそうしたように『VRChat』内に実装してしまうケースも多いが、もともとはスタンドアロン(独立した)アプリとして開発されるのがスタンダードだ。

 最近はこの手のアプリはあまり見られなくなってきたが、先日気骨のあるタイトルが一つ現れた。クラウドファンディングを経て実現した『VR Live 結月ゆかりMμ - あなたと一緒に』だ。

 合成音声キャラクター「結月ゆかり」の派生キャラクター・結月ゆかりMμ(ミュー)を主演に据えた本アプリは、担当声優・石黒千尋が自ら企画・監修を手がけ、30分にわたるライブ体験を楽しめるというものだ。

 今回筆者は、ご厚意で本作を先行体験しつつ、リリース後にも提供いただいた。そして、キャラクターVRライブアプリとしてはひさしぶりに好感触を得たので、本記事にてその概要をお伝えしよう。

“石黒家の結月ゆかり”が歌い踊るVRライブアプリ

 まず最初に、『VR Live 結月ゆかりMμ - あなたと一緒に』の背景について説明していこう。

 本作は、2019年に実施されたクラウドファンディングにて、539人のファンから約977万円の支援を獲得したことで開発がスタート。SocialDivaがパブリッシャーを、アルテマ・エンターテインメントが開発を担当した。

 メインで登場する「結月ゆかりMμ」は、“石黒家の結月ゆかり”と表現される、担当声優の石黒千尋発案の結月ゆかり派生キャラクタープロジェクト。企画元であるVOCALOMAKETSの公認を得た、非公式プロジェクトという建付けだ。キャラクターデザインはイラストレーターのLAMが手がけている。

 なお、本アプリはVR専用アプリとしてリリースされているが、通常のPCモニターだけでも観賞できるビデオデータも無料DLCとして提供されている。このため、ライブ観賞そのものにVR機器不要ではあるが、本アプリの真価を発揮するのはもちろんVRモードだ。

モニターからゆかりさんが降臨 自室が夢のステージ

 『VR Live 結月ゆかりMμ - あなたと一緒に』は、基本的には観賞特化のアプリとなる。体験時間は約30分。この手のアプリとしては、かなりボリューミーだ。

 最初のシーンは、PCモニターが置かれたデスクの前からスタート。モニターから結月ゆかりMμが飛び出し、すぐ眼前で歌い始める。

 さらに、光のステージに乗った結月ゆかりMμを追いかけるように、視点が自動的に追尾していく。

 フィギュアサイズの結月ゆかりMμは小ぶりで、結月ゆかりや石黒千尋のVTuberの姿などが描かれたイラストが点在する部屋の中では、さながら「トイ・ストーリー」のおもちゃのようにも見える。自動掃除機の上に乗っかって歌う瞬間は、なおさらそう見えるだろう。

 PCから飛び出した結月ゆかりMμが、部屋の中をぐるぐるを飛び回って歌い踊る、キャラクターのファンがついつい自室で妄想してしまうような光景と言えるが、これをVR視点で、しっかりとしたクオリティで体験すると、なかなかインパクトがある。

 そして、デスクの前に戻った結月ゆかりMμはモニターの中へ戻り、鑑賞者は彼女を追うように、モニターへと飛び込む。

森の中で“あなただけのライブ”をお届け

 続く第2シーンは、木漏れ日が差し込む森の中が舞台。ここでは、等身大サイズとなった結月ゆかりMμによるジャズ演奏会が繰り広げられる。

 バックバンドはジャケットを羽織ったうさぎたち。モニターへ飛び込むシークエンスも相まって、気分は『不思議の国のアリス』のようだ。

 このシーンの結月ゆかりMμは、鑑賞者のすぐ目の前に立っている。言うなれば“ガチ恋距離”だ。ジャズのスタンダード・ナンバー「Fly Me to the Moon」から始まる演奏会は、時にしっとりと、時に軽快に、おしゃれな歌が響く。

 その間も、視点はたえず動き続ける。ライブを撮影するカメラマンのような視点は、自らの視界がそのままMVとなるような体験だ。VRで観賞する場合、ユーザーのちょっとした動きで視点や見え方が変わってくるため、複数回観賞しても異なる発見がある。

 その後は、サイバーなステージで歌い踊る第3シーンと、海辺でアカペラも交えて披露される第4シーン、そしてエンディングパートへと、次々にシーンが移り変わる。手を変え品を変え、結月ゆかりMμは様々な楽曲で鑑賞者たる“あなた”を魅了することだろう。

リッチでボリューミーなパフォーマンスに大満足

 本作でめぐる全てのシーンは、「結月ゆかりMμがあなたのために披露するライブ」という体裁をとっている。

 こうした1対1の関係性を持ち込む体験は、VRとすこぶる相性が良い。約30分という長さも相まって、「自分のために実施されるライブ」は大きな満足感を与えてくれるはずだ。

 繰り返しになるが、本作はVRのオンラインライブ、ライブアプリの中でも比較的ボリュームが多いといえる。体験時間の面で比較対象となるのは、『VRChat』の「Sanrio Virtual Festival」で披露されるようなライブだろう。そちらと比較した場合、アプリをインストールするだけで体験できる手軽さがポイントだ。

 懸念されるポイントは、本作の魅力でもある「動き回る」演出だろう。身体が静止した状態で視界が前後左右に動かされるため、乗り物酔いと同様の症状(いわゆる「VR酔い」)が引き起こされる可能性がある。

 幸いにも、本作は全シーンに渡って中央に立つ結月ゆかりMμに視点を集中しやすく、比較的症状は回避しやすい。とはいえ、約30分という長丁場なライブであることも相まって、VRに不慣れな人だと酔ってしまう可能性は十分にある。不安ならば事前に酔い止めを服用したり、いつでも休憩できるように備えておくのがおすすめだ。

 『VR Live 結月ゆかりMμ - あなたと一緒に』は現状、Steamでのみ配信されているため、体験するには一定スペックのPCとVRヘッドセットが必要となる。ハードルはやや高いものの、相応の体験ができるのは間違いない。魅力的なキャラクターのパフォーマンスをVRで体験したい人にはぜひ紹介したい一作だ。

◾️VR Live 結月ゆかりMμ - あなたと一緒に
https://store.steampowered.com/app/4276630/VR_Live_Mm/

声優・石黒千尋に聞く“異色のVTuberデビュー”の裏側 マルチな活動の軌跡と根底にある「ものづくりにかける想い」

VOICEROID「結月ゆかり」の中の人としても有名な声優・石黒千尋。声優としての活動だけでなく、ニコニコ動画やYouTubeに…

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