これが13年の重み! 『黒猫のウィズ』13周年コンサートは“聖地巡礼船”に乗って、歴戦のファンが八百万のワールドを行く

 4月18日、神奈川県・川崎市のミューザ川崎シンフォニーホールにて『GAME SYMPHONY JAPAN 62nd Concert × クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ〜13th Anniversary〜』が開催された。

 同公演は、今年3月に13周年を迎えた人気スマートフォンRPG『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』(通称:黒ウィズ)の音楽世界を、フルオーケストラで体感する一夜限りの祝祭である。本公演はシリーズの膨大な楽曲群から厳選されたセットリストで構成され、第1部・第2部あわせて圧巻のボリュームで展開された。

 “聖地巡礼”というコンセプトで奏でられるコンサートは、各イベントごとに楽曲が分けられ、それぞれのストーリーを音楽と共に追体験するという趣があった。現在、本作では過去に実装されたイベントストーリーが「君の本」という機能を用いてプレイできるが、以前までは「魔道士の家」という名の場所に置かれていた。

 そこはまるで星間旅行のような世界観で、今回のコンサートでは当時の「黒ウィズ」も思い出す、まさに記憶を巡る旅のような体験だったように感じる。本稿ではゲームの思い出を振り返りながらイベントの模様をレポートしたい。

観客を冒険に連れていく鮮やかな演奏

 第1部は、作品の原点ともいえるメインテーマ「魔法使いと黒猫のウィズ」で幕を開けた。13年続けてきたユーザーにとっては、誇張ではなく幼馴染かそれ以上に付き合いが長い楽曲である。

 我々の友人とも言うべき旋律は、オーケストラ編成によって一層スケールを増し、プレイヤーが歩んできた冒険の記憶を呼び起こす。ゲームで言えば立ち上げの刹那が最序盤に用意され、一気に心は“聖地”へ向かった。

 続く「空戦のドルキマス 沈まぬ翼」や「艦隊殲滅のクロスファイア」では、重厚な金管と疾走感ある弦が戦場の緊張感を描写し、観客の集中力を一気に高めていく。作中屈指の人気キャラクターであるディートリヒ・ベルク(CV:森川智之)が元帥として辣腕を振るったイベント『空戦のドルキマス 沈まぬ翼』の実装が2015年10月。以降は「黒ウィズゴールデンアワード」(人気キャラ投票企画)などを含め、本作のアイコン的存在のひとりとして度々存在感を放ってきた。

 権謀術数に長けた策略家であり、長く愛され続けてきた男。その後には弟であるジーク・クレーエのモチーフ楽曲「その名はジーク・クレーエ 」が披露され、テイストが異なりながらも、紡がれてきた歴史の堆積を感じられた。

 「時計塔エターナル・クロノス」から「Ticktack! Ticktack!」へと続く流れも印象的だった。というのも、とりわけ「時計塔エターナルクロノス」の原曲はより室内楽的なニュアンスで、オーケストラで演奏されたときにどのような姿になるのか想像が難しかった。本公演ではどの楽曲が演奏されるのか観客側は事前に知らされていたため、我々は予習に勤しむことができたのだ。それゆえの老婆心だったかもしれない。

 だが、ラテン音楽で使われる民族楽器のギロやカスタネットをはじめとするパーカッションの活躍により、ミニマルながらも鮮やかに旋律を際立たせていた。キャッチーな「Ticktack! Ticktack!」が輝いたのも、この順番の影響が大きかったように感じる。

 続いて、これまた最初期からユーザーを楽しませてきたイベント『天上岬』より2曲。ここでも「時計塔エターナルクロス」と同種の杞憂があった。ファム・リリー(CV:花澤香菜)とフェルチ・リリー(CV:山下七海)のラブリーかつ穏やかな雰囲気に、オーケストラの荘厳な音色の相性は未知数だった。

 しかし「おさんぽ日和です!」や「ピクニック? いえ、冒険ですよ」といった軽快でコミカルな楽曲群では、木管楽器の柔らかな音色が会場に温かみをもたらし、物語のキュートでファンシーな側面を鮮やかに描き出す。特にファゴットの伸びのある響きはオーケストラを支えており、その強さは『天上岬』が勇気のストーリーでもあることを再認識させた。本公演のアレンジャー・穴沢弘慶氏はコンサートの前に「原曲の魅力を活かした場合もあれば、オーケストラ用に編曲したものもあります」と語っていたが、『天上岬』の2曲は“そのまま”のニュアンスが引き出されていたように思う。

 『超魔道列伝 アルティメットガールズ 』からは「グレェェート珍道中」や「結集!アルティメットガールズ!」が披露。『天上岬』の楽曲が原曲の魅力を引き出していたならば、ラテン調の小気味の良いリズムが付与された「結集!アルティメットガールズ!」は新たな表情を見せていた。アリエッタ・トワ(CV:黒沢ともよ)の破天荒な言動と行動は、むしろ情熱的なテンポが良く似合う。

 さらに「STELLA☆DASH!」や「響命クロスディライブ」など、SF的雰囲気を持つ人気イベント楽曲では、リズミカルでポップな要素とシンフォニックな厚みが融合。「響命クロスディライブ」は原曲がバンドの存在感が強いので、オーケストラ編成での再現にとりわけ難易度が高かったはずだが、完璧だったと言って差し支えないだろう。ほとんど2小節で世界観に引き込むコンサートマスターの物集女純子氏の演奏は圧倒されるものがあった。

 人気イベント『FairyChord』からは「Relation」と「Melodious Chord」が続けて演奏された。「Relation」のアレンジが素晴らしく、ピアノとヴァイオリンの協奏は物語で輝いていた「ガール・ミーツ・ガール」を際立たせ、ルミスフィレス(CV:佐倉綾音)と鶴音リレイ(CV:野口瑠璃子)の2人の関係性を改めて強調しているようだった。楽曲の再現性も特筆すべきだが、そこは百戦錬磨のマエストロ・志村健一。各ストーリーへの解像度が極めて高く、レジェンドウィザード(間欠的に行われる対人トーナメントで上位1%)たる手腕を発揮していた。

 再現の難しさという点では、2025年3月実装の『嗚呼、Humanization』にも言及する必要がある。シンセが印象的に鳴っている「嗚呼、Humanization」をどう表現するかはアイデアの見せ所だったと推察するが、打ち込み主体のプロダクションをカバーしたのは木管をはじめとするパーカッションだった。

 そして殿堂入り級の人気イベント『双翼のロストエデン』の楽曲群を挟んだのち、今年最大のサプライズのひとつ『追憶のレディアント』から「REMINISCENT」がお目見え。イベントストーリー『追憶のレディアント』の実装から約10年。待望の続編『追憶のレディアント 銀の慟哭、金の祝福』が2026年1月に開催。界隈に閃光が走った、いや稲妻が轟いた本イベント。新しいイベントだからということで今回は選ばれたのだろうが、もはや大御所のバンドがインディーズ時代に作った楽曲を披露する感慨深さすらあった。このイベントストーリーでは“思い出”が重要なモチーフであることから、本公演とも親和性が抜群に高かったような気がする。

 そして第1部完結の大役を担ったのは、『ARES THE VANGUARD』シリーズの楽曲群。「英雄大戦」から「GOD NUMBERS」へ至る流れはまさに圧巻で、近年の黒ウィズを支えてきた人気イベントの矜持を示す迫力があった。「英雄大戦」ではコーラスマスターの榛葉薫人の独唱をはじめ、合唱隊が存在感を放つ。思えば同シリーズの2作目『ARES THE VANGUARD 英雄大戦』では、男性から向けられる矢印が色濃かったように感じられる。

 ヘパイストスⅪ(CV:辻井健吾)がアテナⅦ(CV:小若和郁那)に重ねる親心、真相を知ったアポロンⅥ(CV:保志総一朗)が取り戻したディオニソスⅫ(CV:井上和彦)へのブラザーフッド。そういった男性からの複雑な情緒を表現したのが、このパートにおける合唱隊だったように感じられた。もちろん世界観を演出する讃美歌的機能も持ち合わせているだろうが、同シリーズに漂う神々しいヒロイズムにあてられた1人のファンの主観として書き記しておきたい。

アンコールも大ボリュームの第2部

 休憩を挟んだ第2部は、『神都ピカレスク』の「神都syndrome」で再び幕を開ける。妖艶でダークな色彩が印象的なこの楽曲は、華やかな“神都”をそのままに彩る。イベントストーリーとしてはこのあと『SUGARLESS BAMBINA』シリーズへとつながるのだが、1部同様に順番には設計の妙が感じられる。音楽の内容は違えど、トーンで分けると両者の楽曲は同じ枠に入るような気がする。ジャジーでムーディーな雰囲気から「THE WORST BEAST」で再びオーケストレーションに戻る様は、あまりにも鮮やかだった。

 ロック調の印象が強い『喰牙RIZE』からも「Razor-Will」や「Tear-River 」といった、まさに激情的な楽曲が披露された。オーケストラとバンドがミックスしたシンフォニック・ロックは今日の音楽シーンでは広く知られているが、今回はエレキギターやベースなしで表現しきらなければならない。加えて、どちらも原曲はボーカルトラック。これまた難易度が高い編曲とみられたが、弦もホーンも渾然一体でヴォーカルパートをカバー。転調も激しい「Tear-River」を乗りこなしたリズム隊もひたすら見事だった。

 『幻魔特区スザク』シリーズの楽曲でパイプオルガンの荘厳な音色を聴かせたあとは、第2部のハイライトのひとつである『SOUL BANKER』から計4曲が披露。このセクションではピアノを奏でる白石光隆が終始獅子奮迅の活躍を見せ、「SOUL BANKER」や「バトルバンカー」に至ってはワンフレーズで一気に会場を幻想銀行ローカパーラに染め上げた。これまでのコンサートで演奏されたことのない「きみはいい子」でオーディエンスの心は抉られ(主にシリーズ4作目『SOUL BANKER Frozen Inferno』の記憶によって)、あやうく心象風景が奈落と化すところだった。

 そこに光をもたらしたのが、和テイストの楽曲3連発。『八百万神秘譚』と『八百八町あやかし捕物帳』、そして『ASHURA: VERMILION EDGE』のストーリーイベント群だ。純朴で正義感が強いミコト(CV:大亀あすか)、気分屋だがやるときはやるアヤツグ・アシハラ(CV:古川慎)、最強の名を欲しいままにする朱羅シュリ(CV:沢城みゆき)、それぞれのシナリオをけん引する主要キャラ3名は作中でも特に推進力のある人物だが、彼ら/彼女らに代表されるように、このセクションは和の国のニュアンスを前面に押し出していた。

 和楽器チームの「ファミ箏」もここで登場し、「修羅朱/SLASH」でひとつの結実を見せた。混声合唱も旋律の中に現れ、さながら和の国オールスターのような感触があったように思う。

 そして本編の最後を飾るのはやはり、『黄昏メアレス』シリーズの楽曲。本公演最多の5曲が演奏され、昨夏に突如として配信された同シリーズ最新作を祝うような厳かでクライマックス然とした空気が流れていた。黒ウィズの看板シナリオといって差し支えないだろう、イベントストーリーの金字塔。「MIMICKING BATTLE」から「黄昏mareless ~MUGITUS LEONINUS~」に繋がるときのピリッとした緊張感はこの日随一だった。最新シナリオ『黄昏メアレス Rethread 想影pureness』の「TWILIGHT CRY」でフィナーレを迎え、本編は幕を下ろした。

 アンコールも盛況で、3曲が演奏される大盤振る舞い。ここでひとつ余談だが、昨年のコンサートでは同じタイミングで『聖サタニック女学院2~アルトーパークの惨劇~』のイメージソング「恋してアイアンヘルム」が披露された。川崎市屈指のコンサートホールをワクワク魔界フェスティバルに変えたが、今回は小娘(リルム・ロロット)に翻弄される気の毒な魔杖の悲哀が厳かなスケールで描かれた。「グレェェート魔杖王 〜ローア! ローア!〜」で壇上は再びコミカルな黒ウィズ世界へと変貌し、真のラストスパートへ。

 「未来へ」から「黒ウィズグランドフィナーレ」で、再び1曲目と同じメインテーマの旋律が流れる。13年にも渡ってユーザーが聴き続けてきたメロディが、コンサートの大団円に繋げていった。

 改めて本作および本公演の凄みを実感するのは、帰途に就く観客の多様性。これだけ長く続いてきたゲームのため、今回のコンサートで披露されなかった楽曲、あるいは“巡礼船”が辿り着かなかった世界もある。それでも、出番がなかったクレティア・ブライユ(『聖なる空のエステレラ』シリーズ)の缶バッジを大量に付けたファンや、ガトリン・G・U(『戦え!魔轟三鉄傑』)のアクリルスタンドを手に持つ人も見かけた。

 ゲームの歴史を紡いできたのは開発や声優だけではなく、ユーザーもその一端を担ってきた事実を改めて再確認できた。公演に不在のキャラクターにさえ愛を伝えるファンの姿に、13年の歴史の重さをみる。

『黒猫のウィズ』12周年コンサートにみる“圧倒的ストーリーテリング” 川崎に鳴り響いた「レジェンドオーケストラの音色」

スマートフォン向けアプリ『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』は3月8日、神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホールにて12周年記…

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