生成AIはゲームを面白くしているのか? NPC会話導入の現実と各社の思想の違い
近年ゲーム業界で盛んに導入されている生成AI。実験的な取り組みも数多く見られるものの、はたしてそれは本当に“面白さ”に寄与しているのだろうか。すでに時代はAIを導入することは当たり前で、そこから一歩進んで「どのように使うか」を考えるフェーズに移行しているのかもしれない。
『風燕伝』の事例が示す、AI会話NPCの自由度と限界
たとえば現在AIの活用方法としてよく見られるのが、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)との会話における導入だ。いわゆるAIチャットボットのような仕組みを使い、「ゲーム内NPCと自由に会話できる」という触れ込みのゲームをちらほら見かけるようになった。
NetEase Gamesが昨年11月にリリースしたオープンワールドRPG『風燕伝:Where Winds Meet』もその1つ。同ゲームでは一部のNPCとチャット形式での会話が可能で、それによって報酬を得ることもできる。
ゲームの自由度や没入度を上げてくれそうなシステムだが、あくまでも人間ではなく“システム”なので、攻略法も存在する模様。最近話題になったのは“現実改変”のような攻略法で、兄弟を探しているNPCに対しては「(突然兄弟が目の前に現れる)」とかっこ付きでト書きのようにチャットを送ると、本来兄弟を探さなくてはならないクエストを簡単にクリアできてしまうという攻略法が報告されていた。
なぜプレイヤーはAI搭載NPCに感情移入しきれないのか
AIのNPCならでは自由度を感じさせる面白い攻略法だが、一方でこのシステムがゲームへの没入度にあまり貢献していないことを露呈させているようにも思われる。結局のところプレイヤーはAIとの会話に感情移入することはなく、“所詮システムとの会話”と割り切られて攻略法が編み出されてしまうのかもしれない。
自由会話型のNPCを導入したゲームには、他にもいくつかの課題が指摘されている。たとえばプレイヤーが入力したチャットに返答するまでの数秒のタイムラグが、人によっては「わずわらしい」と感じられたり、そもそもNPCと会話する作業が「面倒くさい」と感じられたりするという。そのため自由会話型NPCとの会話に報酬を設定するのではなく、あくまでゲーム攻略に関係ないおまけ要素に留めるのが、今のところは無難なようだ。
堀井雄二の懸念と『ドラクエX』が選んだ“相棒AI”という答え
他方で『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親として知られる堀井雄二氏は、会話形式のAI導入についてまた違った思想を持っている様子。今年3月に開催された記者説明会で、『ドラゴンクエストX オンライン』のショーランナー・安西崇氏の口から、堀井氏がAIを用いたNPCとの会話システムに否定的であることが明かされていた。
この場合のNPCは村人などのいわゆる“モブキャラ”のことで、こうしたキャラクターにAIで会話をさせると、プレイヤーが処理すべきテキスト量が膨大になり、むしろ負担が大きくなってしまうという。そのため『ドラゴンクエストX オンライン』では複数のNPCにAIを導入するようなことはせず、「おしゃべりスラミィ」という冒険の相棒キャラだけに会話AIを導入したのだそうだ。
この「おしゃべりスラミィ」の設計思想の根底にあるのは、友達からのアドバイスのような「ちょうど良い攻略情報」の提供。外部の攻略サイトのようなそのものズバリの“答え”にアクセスすることなく、プレイヤーがゲームに没頭できるような環境作りとして、ガイドキャラにAIを導入する方針を取ったと考えられる。
他にもUbisoft Entertainmentが進めている生成AI研究プロジェクト「Teammates」では、プレイヤーと共に戦うバディとしてAIキャラクターが実装されている。相棒としてのAI搭載NPCという考え方だけなら、「おしゃべりスラミィ」と同じような設計思想と言えるかもしれない。
“技術の進歩”より“発想力”が問われる時代へ
今後のゲーム業界は、AI技術をどのように“ゲームの面白さ”に繋げていくのだろうか。技術の進歩だけでなく、新しい時代の発想力に注目していきたい。