なぜ実写を活用するVTuberがいるのか バーチャルな人たちのさまざまな“在り方”を知る

リアルとバーチャルをつなぐパラレルシンガー、七海うらら

Kiss and Cry / 七海うらら (Official Music Video)
【FULL】IRIS OUT/米津玄師 【Covered by 七海うらら】

 元々シンガーとして活躍していて、その後VTuberになった、という来歴を持つのが、七海うらら。VTuberとして活動する以前から音楽・クリエイター活動をしていて、2022年6月24日にVTuberとしてデビュー、初配信を行っている。

 「リアルとバーチャルを行き来するパラレルシンガー」であることを明示している彼女は、現在エイベックス・エンタテインメント株式会社の「muchoo」に所属している。

 公式サイト(※5)や公式Xでのアーティストビジュアルもユニークだ。実写の身体を写しつつ、顔はフレームで隠し、そこにバーチャルの姿を投影している。彼女のパラレルシンガーとしてのスタンスがよくわかる1枚だ。

 ライブ配信などは基本的にバーチャルアバターを活用しているが、動画では時折顔を隠した状態で実写のシンガーとして登場しているのが見られる。

【ワンマンライブ映像】Nanami Urara 2nd Parallel Show "Prism" Special Live Video 【YouTube Music Weekend 10.0】

 パラレルシンガーならではの姿は、ワンマンライブでの映像が最もわかりやすいだろう。彼女はこのライブで、リアルとバーチャル両方の姿でステージに登場し、数多くのファンから声援を受けている。

猫から人へ、そして実写へトランスフォームした奏みみ

奏みみ、変身します。
奏みみ『進化論』/Official Live Performance Video

 2019年にバーチャルなぽっちゃり猫の姿でデビューした奏ミミ。後に2020年に猫耳人型の姿に生まれ変わると、2023年10月には実写の人間の姿にもなれるようにさらなる進化を遂げた(※6)。

 彼女は自身を「トランスフォームシンガー」と呼んでいる。変身出来るようになったのは「色んなイベントやフェスに出たい」「アーティスト人生で出来る限りチャンスを掴みたい」という理由からだと語っている。

バーチャル身体を持ちつつリアルの姿でもライブを行う心世紀、VARIS

少女革命計画 - 1st LIVE/第一幕『改変』【YouTube Music Weekend10.0】

 御莉姫・佳鏡院・硝子宮の3人組によるアーティストユニット、KAMITSUBAKI STUDIO少女革命計画の「心世紀」は、「リアルとバーチャルという二層の狭間から声を届ける、3人組のXtuberユニット」だ(※7 公式WEBサイトより引用)。現実の身体とバーチャルの身体両方でライブや動画投稿を行うユニットとして、2024年から活動している。

 普段の動画投稿や配信活動ではバーチャルの身体を使用しているが、ライブは現実の身体で出演するスタイルをとってきた心世紀。しかし、直近開催された『サンリオバーチャルフェスティバル』ではバーチャルアバターでのVRライブを行い、ファンを歓喜させた。

【オリジナルMV】VALIS − 021「熱愛フローズン」【VALIS合唱】

 SINSEKAI RECORDのVALISもバーチャルの姿、リアルの姿両方でライブや動画活動を行っているグループだ。CHINO(チノ)、MYU(ミュー)、NEFFY(ネフィ)、NINA(ニナ)、RARA(ララ)、VITTE(ヴィッテ)の6人(NINAは2024年3月8日に卒業)で活動していたVALISは、アバター姿での活動を主軸としながら、リアルの姿を「オリジン」と呼び、そちらの姿でも積極的なライブ活動を行っていた。

【VALIS】黄昏シミュレイド #喝采カーテンコール Live ver.【Act.2】

 2025年6月11日にグループの無期限活動休止が発表され、現在は主だった活動はなされていない。バーチャルとリアル、両方において復活が待たれるグループだ。

バーチャルとリアルをまたいで活動する覚悟

ぶっちゃけ実写撮影って楽なん?

 実写撮影の技術的な苦労、メリット・デメリットについては、おめシスの動画を参照するとわかりやすいだろう。実写だと衣装小物が楽、食べ物系を見せやすい、身振り手振りの表現がしやすいなど、数多くのメリットがあると同時に、デメリットとしてリアル衣装の置き場問題、ライトやバッテリーなどの物理的問題などを挙げている。

 おめシスの挙げた例に限らず、VTuberがリアルとバーチャルをまたいで活動することには、一定程度デメリットがあるだろう。特に大きいのは世界観が崩れることだ。バーチャルなアバターにキャラクター性を持たせ背景も作っている場合、実写の身体を出すことは自身の物語性にノイズを乗せてしまうことになる。

 またバーチャルアバターが好きでファンになった人たちからすれば、実写のアクターに困惑するかもしれない。上記のような先駆者たちの活動の甲斐もあって、今でこそ実写でも受け入れられやすい土壌ができているが、それでも実写が苦手なファンが離れてしまう可能性は十分にありうる。

 それでもリアルとバーチャルの両方で活躍しようとする人が増えているるのは、実写で表現したいと感じているものがあったり、活動をする上での利便性など、それぞれの理由があるからだろう。実写に挑む際は「なぜVTuberなのに実写の姿も見せるのか」を視聴者に納得してもらうためのはっきりとした方向性の明示と、両方でやっていく覚悟が必要になってくる。

 VTuberは、あくまでも表現の幅を広げるための自由な手段であって、しばりや枷ではない。アバターで世界観を守るタイプのVTuberもいれば、実写を見せるタイプのVTuberもいる現在は特に、「VTuber」という言葉でひとくくりに語るることはできないところまで広がってきている。そんな今だからこそ、言葉に束縛されることなく、活動者それぞれの信念で、自由に新たな表現を模索していってほしい。

〈参考〉
※1:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000159425.html
※2:https://panora.tokyo/archives/81645
※3:https://uomusume.com/
※4:https://e.usen.com/news/news-event/-2025-2025121328.html
※5:https://avex.jp/nanamiurara/
※6:https://www.moguravr.com/real-vtuber-mimi/
※7:https://girlsrevolutionproject.jp/

七海うらら×いかさん対談 時代を駆け抜ける歌い手同士が語り合う“戦略的な活動論”

昨年春より第1回目が開催された株式会社ドワンゴ主催による“歌い手と歌ってみたファン”のための『歌ってみた Collection(…

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