“書く”に特化したAIノート TCL『Note A1 NXTPAPER』が示すタブレットの新しい選択肢

“書く”に特化したAIノート

 「タブレットは万能であるべきだ」という前提は、いまや疑う余地のない常識になった。動画もゲームもブラウジングも仕事も、一台でこなせる。それが当たり前になった2026年に、TCLの『Note A1 NXTPAPER』は、その流れからあえて距離を取る。

 この端末が重視するのは多機能さではない。「書く」「読む」「考える」という行為を中心に据え、そこから外れる要素を抑え込む。万能機ではなく、用途を絞ったAIスマートノートという立ち位置だ。

 興味深いのはGoogle Playが標準搭載されていないこと。GmailやLINE、Slackといった日常的なアプリも、そのままでは使えない。動画視聴やゲームも不可能ではないが、積極的に勧められる体験ではない。バッテリー持ちも電子ペーパー端末のように10日以上とはいかず、実使用で2〜4日程度にとどまる。

 一見すると不便にも思える仕様だが、実際に触れてみるとそれが明確な設計思想に基づく選択であることがわかる。

「書き心地」と「読み心地」を重視した新開発のディスプレイ

 『Note A1 NXTPAPER』の核となるのは、新開発の「NXTPAPER Pure」ディスプレイだ。従来のNXTPAPER 3.0/4.0が動画視聴など娯楽用途における“目の保護”を重視していたのに対し、Pureは「書き心地」と「読み心地」を最優先に設計されている。

 文字はくっきりと表示され、斜めから見ても視認性が落ちにくい。画面の明るさも向上し、光沢を抑えた落ち着いた表示に仕上がっている。ブルーライトも大幅に抑制され、長時間ノートを取り続けても目が疲れにくい。11.5インチというサイズながら軽量で、片手でも扱いやすい点も、「書く時間」を前提とした設計思想を感じさせる。

 特に印象的なのが、あえて残されたディスプレイ表面の“ざらつき”だ。ペンで紙に書くときの摩擦感を再現するためのもので、透過率とのトレードオフとして、指紋が完全につかないわけではない。防汚コーティングは施されているが、気になる場合は付属のクリーナーで拭き取る運用が想定されている。

 書き心地は「紙に近い」という言葉だけでは足りない完成度だ。NXTPAPER PureとT-Pen Proの組み合わせにより、ペンを走らせた瞬間、わずかな抵抗が指先に返ってくる。8192段階の筆圧検知と低遅延設計により、残像感はほとんどない。

 120Hz駆動でありながら表示はあくまで穏やか。「これまでで一番書きやすい」と評価するユーザーがいるのも理解できる。

 AI機能も充実している。手書き文字の整形やテキスト化、会議録音からの自動文字起こしと要約、40以上の言語に対応する音声翻訳、ノート内容をもとに質問やアイデアを広げる機能まで備える。しかも、これらは追加課金なしで利用できる。

 興味深いのは、AIが前面に出過ぎない点だ。派手な生成体験を強調するのではなく、「書いた内容を整理し、補助する裏方」に徹している。この距離感は、娯楽用途を切り捨てた端末だからこそ成立している。

 AI機能は基本的にクラウドベースで動作するため、フル活用にはWi-Fi環境が必要。ただし、文字起こしと翻訳は精度がやや落ちるものの、オフラインでも利用できる。

 TCLが想定するユーザー像も明確だ。ビジネスパーソンや学生、そしてデザイナー。1670万色表示に対応しているが、プロ向けペンタブレットと比べれば色再現には差が出る可能性がある。本格的な商業イラスト制作よりも、構成案作成や脚本、アイデアスケッチといった用途に向く。

日本市場で拡大するTCLの存在感

TCL JAPAN ELECTRONICS Senior Marketing Manager 白天石氏
TCL JAPAN ELECTRONICS Senior Marketing Manager 白天石氏

 『Note A1 NXTPAPER』は、TCLの日本市場戦略においても重要な意味を持つ。テレビ市場でシェア第5位を獲得し、タブレット市場でも2022年参入以降、家電量販店チャネルではAndroidタブレットとして第2位(約16%)まで成長している。

 TCLは日本市場でのスマートフォン展開にも強い意欲を示しているが、その前段階として選んだのが「NXTPAPER」シリーズだ。独自のパネル技術という明確な強みを、日本のユーザーにまず体験してもらう。その入り口として、よりコンセプトが明快な「書く特化型」デバイスを投入した。こうして日本の量販店チャネルで実績を積みながら、独自技術の認知を広げ、日本市場でのブランド定着を狙う。

 もちろん、この端末には割り切りが求められる。Google Play非搭載という選択は、「本気で書くために使う」という覚悟をユーザーに問う。動画もゲームも漫画も楽しみたいなら、iPadや一般的なAndroidタブレットを選んだほうがよいだろう。

 だが、用途を絞ったからこその快適さがある。通知に引き戻されず、アプリに寄り道しない。ペンを持ち、考え、まとめる。その流れが途切れにくい。

 9万9800円という価格は安くはないが、「思考専用機」として見れば意味は変わってくる。日常的に会議メモやアイデア出しを行う人にとっては、単なるタブレットではなく、作業環境への投資と捉えられるはずだ。

 『TCL Note A1 NXTPAPER』はすべてをこなす端末ではない。だが2026年現在、ここまで「書く」体験を中心に据えたAIスマートノートは希少だ。

 ペンを走らせるリズムや、わずかな線の揺らぎ。整わないメモや走り書きも含めて、思考の過程がそのまま残る。キーボードでは生まれにくい発想が、手書きから立ち上がる瞬間がある。

 多機能化が進む市場の中で、あえて用途を限定する。その潔さが、この製品の最大の個性だ。

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