『ドラクエ7R』体験版の配信は自信の表れか? スクエニが前例を覆した狙いを考察

『ドラクエ7R』体験版配信は自信の表れ?

 スクウェア・エニックスは1月7日、『ドラゴンクエストVII Reimagined』無料体験版の配信を開始した。

 『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』『ドラゴンクエストI&II』と、ナンバリング作品のリメイクが続く「ドラゴンクエスト」シリーズだが、発売日より前に無料の体験版が配信されるのは、『ドラゴンクエストVII Reimagined』が初めてである。なぜスクウェア・エニックスは、3作目で初めて、そのような施策に打って出たのだろうか。無料体験版の配信をめぐる同社の思惑を推測する。

ナンバリング第7作をリメイクした『ドラゴンクエストVII Reimagined』

『ドラゴンクエストVII Reimagined』 アナウンストレーラー

 『ドラゴンクエストVII Reimagined』は、2000年8月にPlayStationで発売された「ドラゴンクエスト」シリーズのナンバリング第7作『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』(以下、『ドラクエ7』)を現代風にアレンジし復刻したリメイクタイトルだ。プレイヤーは、エスタード島という孤島で暮らし、海のむこうの広い世界に憧れを見せる主人公の目線から、「ふしぎな石板」をめぐる冒険の物語を見つめていく。

 特徴となっているのは、シリーズではおなじみのファンタジックな世界観と転職システム、鳥山明氏が手掛けた魅力的なキャラクター、すぎやまこういち氏による音楽など。「シンプルさ、手軽さのなかに奥深い体験を持つ」という“ドラクエらしさ”を、圧倒的なシナリオボリュームで体現した同作は、現在もなお、ファンに根強く支持されている。

 リメイク版では、原作にあったジオラマ風の世界を3DCGで再現。特に人形のようであたたかみのあるドールルックのキャラクターデザインは、最大の見どころであると言えるだろう。このほか、ボイスの追加や新たな職業システム、UIの良化など、さまざまな変更点を盛り込む。シリーズでも有数の人気を誇るナンバリング作品が、初の復刻によってどのように生まれ変わるのか。そのインプレッションに注目が集まっている。

 今回、「旅のはじまり先行プレイ版」と銘打たれて配信が開始された無料体験版では、冒険の始まりから、主人公たちが最初にたどり着く世界、「ウッドパルナ」クリアまでの物語をプレイできる。セーブデータは製品版へと引き継ぐことが可能。先行プレイ特典として、登場する仲間キャラクター・マリベルの見た目装備「おやすみワンピース」も手に入れられるという。

 『ドラゴンクエストVII Reimagined』は、2026年2月5日発売予定。対応プラットフォームは、PlayStation 5、Nintendo Switch 2/Nintendo Switch、Xbox Series X|S、PC(Steam/Windows)で、価格は、通常版が税込8,778円となっている。なお、税込10,978円で展開されるデジタルデラックス版(ダウンロードのみ)には、リリースの48時間前から先行してプレイできるアーリーアクセス権が同梱される(※)。

※…通常版、デジタルデラックス版のほか、豪華版、超豪華版も展開される。価格や特典内容については、公式サイトを参照のこと。

無料体験版の配信に見る、スクウェア・エニックスの思惑とは

 開発/発売元のスクウェア・エニックスはここ数年、自社で抱える人気IPの復刻に力を入れている。「ドラゴンクエスト」シリーズからは、2024年11月にナンバリング第3作が、2025年10月にナンバリング第1作と第2作が、それぞれ『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』『ドラゴンクエストI&II』としてリメイクされ、リリースに至った。

 『ドラクエ7』の復刻もまた、そうした流れのなかにある取り組みであると言える。ナンバリングが持つ数字どおりの順で発売されていないのは、おそらくスクウェア・エニックスが時系列でリメイクに臨んでいるからだろう。ファンのあいだでは、2017年発売の第11作『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』を起源に、第3作→第1作→第2作→第7作…と、シリーズの物語が続いていると言われている。現状では、この流れで復刻のプロジェクトが進んでいるというわけだ。

 ここに第11作が含まれないのは、他のナンバリングと比較して近い時期にリリースされており、現行機でもプレイが可能であるからだろう。今後もこのとおりに進んでいくのであれば、第6作→第4作→第5作……と、リメイクタイトルの制作が続いていくはずだ。

HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』ファイナルトレーラー

 前日に突如アナウンスされ、配信が開始された『ドラゴンクエストVII Reimagined』の無料体験版。一方で、シリーズの復刻プロジェクトからすでにリリースに至っている『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』『ドラゴンクエストI&II』では、同様の取り組みは行われてこなかった。なぜスクウェア・エニックスはこうした“前例”を覆し、『ドラゴンクエストVII Reimagined』で無料体験版を配信しようと考えたのだろうか。ここには「高まる話題性や期待値と、実際のプレイインプレッションのギャップを埋めたい同社の思惑」と「その完成度に対する同社の自信」が存在していると推測する。

 先にも述べたとおり、シリーズからはすでに『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』『ドラゴンクエストI&II』という2つのリメイク作品が登場しているが、そのどちらもが主にゲームバランスの面において、一部のプレイヤーに不評を買う結果となっている。

HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』ファイナルトレーラー

 国民的RPGシリーズといっても過言ではない「ドラゴンクエスト」であるだけに、満場一致の好評を獲得することがほぼ不可能であるのは言うまでもない。しかしながら、そうした各作品をめぐる賛否が、今後も続いていくであろうシリーズの復刻のプロジェクトに対する評価に影を落としていることもまた事実だ。

 おそらくここには、事前の話題性や期待値と実際の出来のギャップからくる影響があると考えられる。「誰もが注目する人気シリーズの、満を持してのリメイク」であるだけに、多くのプレイヤーがそこに完璧を求めてしまうのではないか。

 「発売日より前に、無料の体験版を配信する」という施策は、こうしたギャップを減らす緩衝材になると考える。手に取ったプレイヤーの多くは、その出来に納得したうえで購入を決めるからだ。そのため、発売後に思わぬ形で物議を呼ぶ可能性も最小限にすることができる。スクウェア・エニックスはシリーズの復刻のプロジェクトの求心力を霞ませたくないからこそ、『ドラゴンクエストVII Reimagined』では無料体験版を配信しようと考えたのではないか。

 他方、万が一、「これじゃない」と感じさせてしまえば、製品版の売上は減ってしまうことになる。「発売日より前に、無料の体験版を配信する」という施策には、「予期せぬ不評を生まない」というメリットがある一方で、「注目度を前提にした購買意欲を沈静化させかねない」というデメリットも存在している。

 それでも、スクウェア・エニックスが配信に踏み切ったのは、そのクオリティに自信を持っているからだろう。実際に無料体験版を手に取ったプレイヤーからは、好意的に受け止める声が多く聞こえてきている。結果として、前例を覆す同社の施策は、「さらなる売上につながる」という最高の成果をもたらすことになりそうだ。

 少なくとも現時点では、送り手である制作側の自信と、受け手であるプレイヤーの感想に乖離が生まれていない『ドラゴンクエストVII Reimagined』。業界ではここ数年、人気作品の復刻がトレンド化しているが、高評価作品が生まれた例は珍しい。『ドラゴンクエストVII Reimagined』は「価値のあるリメイク」と多くのプレイヤーに認められるタイトルとなれるだろうか。発売まであと2週間ほど。ひとりのファンとして、数少ない成功例となることに期待したい。

『ドラゴンクエストVII Reimagined』体験版が1月7日配信決定 製品版への引き継ぎ&プレイ特典も

スクウェア・エニックスは、『ドラゴンクエストVII Reimagined』の体験版となる「旅のはじまり先行プレイ版」を1月7日に…

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