恋愛ソングの名手・コレサワが書き下ろし グローバルガールズグループ・UNISが新曲で見せた“可愛さ”と“わがままさ”の両立

UNISが両立した“可愛さ”と“わがままさ”

 8人組ガールズグループ、UNIS(ユニス)は、2023年11月から放送されたオーディション番組『UNIVERSE TICKET』(韓国SBS/ABEMA)から誕生した、日本・韓国・フィリピン出身のメンバーが在籍する、国際色豊かなガールズグループだ。

 TikTokフォロワーが260万人を超えるなど、アジアのティーンを中心に人気を博している。9月12日にリリースした日本ファーストデジタルシングル「もしもし♡」が大ヒット。「可愛くてごめん」(2022年)のヒットで知られる、日本のクリエイターユニット・HoneyWorks手掛けた本曲は、TikTokで“もしもしダンス”が大バズを起こしてブームとなり、UNISが日本のポップカルチャーに自然に溶け込むきっかけとなった。同曲は、iTunes J-POPチャートで、ルクセンブルク、カタール、フィリピン、オーストラリアの4か国で1位、アメリカとドイツで2位、イギリスで4位を獲得。9月15日にリリースしたEnglish ver.「MoshiMoshi♡」は、同チャートのフィリピンとアラブ首長国連邦で1位となったほか、世界16か国でチャートインする快挙を成し遂げた。

 まさに旋風を巻き起こしているUNISが、12月17日に、日本セカンドデジタルシングル「幸せになんかならないでね」をリリースする。作詞・作曲を手掛けたのは、シンガーソングライター・コレサワだ。自身初の日本武道館公演を満員御礼の大成功に収めたことも記憶に新しい。楽曲提供者としても、アイドルグループ・超ときめき♡宣伝部に書き下ろした「最上級にかわいいの!」(2024年)で、第66回日本レコード大賞の作詩賞を受賞している。アレンジには、EDMやTrapを軸にしたバウンス感のあるビートに定評があるTeddyLoidと、瑛人「香水」やAdo、K-POPグループの作品などを手がけるヒットメーカー、Carlos K.が担当。コレサワのメロディ、TeddyLoidのビートメイクは、どちらも中毒性が高いが、その両方がぶつかり合う一歩手前でせめぎ合い、いい形でスリリングさをもたらしている。そんなスリリングな楽曲の中で、UNISのボーカルを立体的に粒立たせているCarlos K.の手腕もお見事である。

UNIS(유니스) '幸せになんかならないでね(mwah…)' M/V

 「幸せになんかならないでね」は、ハミングのフレーズから始まる1曲だが、実際には「ンマ、ンマ、ウン」と歌っているように聴こえる。この「ンマ」という、リップを塗った後や投げキッスを彷彿させる言葉がリズミカルに繰り返される。UNISの溌溂としたボーカルアプローチもあり、イントロから可愛らしさが全開で、聴いているこちらも思わず笑顔になってしまう。そして、サビに登場する〈幸せになんかならないでね〉〈あたし以外の女の子と だめだめ〉というフレーズは、コレサワならではのパンチラインだ。毒っ気がある要素を並べて使うことで逆説的に恋愛感情を表現するのは、コレサワの得意技のひとつ。既述したパンチラインで、恋の相手に対する“独占欲”を“可愛いわがまま”に変換している。

 さらに、UNISのメンバーが歌い紡いでいくことで宿る、放課後の女子トークのような賑やかさとの相乗効果で“可愛いわがまま”が、“わがままも可愛い”に変わり、最後には〈あたしを好きと思うのが大正解なの〉と自己肯定に至る。また、日本語、英語、「マジで」という意味の韓国語も入れるなど、コレサワがUNISの可愛らしさを研究し、オリジナリティに咀嚼して、この曲を書き下ろしたのが歌詞からも伝わってくる。コレサワは、自分に求められている“大正解”をしっかり把握しつつ、正解を狙って曲を作ることができる。稀有な存在のシンガーソングライターだと思う。

 そしてこの楽曲にストーリー性を加えているのが、TeddyLoidとCarlos K.のアレンジである。まず耳をひくのが、クセになる打ち込みのリズムとシンセサイザーの音色。カラフルなスーパーボールが飛び交うようなバウンス感は、この曲の最大のフックになっている。さらにポップスではあるが、1番と2番のAメロのメロディやリズムが違うなど、トリッキーな一面もある。1番ではストレートなリズム感に合わせ、語尾も短めに切るような歌を聴かせている。対して2番のAメロは、メロディラインも1番とは変わり、ヒップホップに通ずるグルーヴィーなリズムに合わせ、日本語で歌いながらも英語的な滑らかさを意識したボーカルアプローチをしている。

 また、曲中に3度繰り返されるサビのブロックでは、同じメロディを前半では語尾をほとんど残さずアタックを強く出し、後半では語尾のトーンを丁寧に伸ばし、透明感ある高音域を聴かせている。曲の途中で、既述した最大のフックであるバウンス感をスパッと全部ひっこめるサウンドメイキングで、UNISの歌声に潜む湿度や感情表現を際立たせている。また、UNISも新曲での“可愛いわがまま”をしっかり理解し、ハミングや語尾処理で“少女の感情の揺れ”を立体化しようとしていることが窺える。

 おしゃべりがそのまま歌詞になったようなリアルな言葉、キャッチーなメロディ、中毒性の高いリズム、曲のシンボルでありフックになるハミングのフレーズ、そしてUNISの抜群のリズム感と、それぞれの個性が見える歌声とボーカルアプローチ。UNISの日本における存在感を大きく更新する1曲になりそうだ。

8月28日“ハニワの日”に振り返る、HoneyWorksの歴史と活躍 UNISとタッグを組んだ背景とは

8月28日は“ハニワの日”。本記事では、HoneyWorksの歴史と活躍、UNISとタッグを組んだ背景について振り返る。

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