「ミュージシャンの音が本当にクリア」になる ヒグチアイに聞いたオーディオテクニカ『ATH-TWX9MK2』がもつ 音への気付きと広がりの可能性

シンガーソングライターのヒグチアイが、前作『未成線上』からおよそ2年ぶりとなるニューアルバム『私宝主義』をリリースした。30代半ばという節目で出会った身近な出来事や価値観の揺らぎを背景に、「誰かのものさしではなく、自分自身の基準で生きる」というテーマを丁寧に掘り下げた作品だ。
サウンド面では、これまで共に作品を作り上げてきたTHE CHARM PARKや宮田“レフティ”リョウに加え、初タッグとなるサクライケンタ、FUJIBASE、『進撃の巨人』のエンディングテーマでも編曲を担当した兼松衆ら、多彩なプロデューサー/アレンジャーが参加。それぞれが異なる色を持ち寄りながらも、アルバム全体には揺るぎない一本の軸が通っている。今回は、そんなヒグチにオーディオテクニカのフラッグシップモデルTWS『ATH-TWX9MK2』を試用してもらい、自身のアルバムを実際に聴きながら、その音の立ち上がりや質感、使用感について語ってもらった。(黒田隆憲)
──まずはニューアルバム『私宝主義』のテーマやコンセプトについて、改めて聞かせてもらえますか?
ヒグチ:制作のきっかけを振り返ると、以前もお話ししたように「実家の取り壊し」が大きな出来事としてありました(※1)。でもそれだけでなく、自分自身が35〜36歳という年代に入ったことで、同級生たちの生き方の違いをこれまで以上に実感するようになったんです。家庭を持って子育てをしている人もいれば、独身で仕事に全力を注いでいる人もいる。やりたいことが思うようにできず、人間関係に悩んでいる友人の話を聞くことも増えてきて。そうしたさまざまな姿に触れるうちに、「人の価値って、本当にひとりひとり違うんだな」と痛感するようになりました。
だからこそ、つい誰かと比べてしまう。「あの人のほうが恵まれている」「自分の持っていないものを持っていて羨ましい」とか。この年齢になると、そういう感情がより表に出てきやすいんですよね。そこで考えるようになったのが、誰かのものさしではなく、自分自身のものさしで自分を見るという視点でした。他人ではなく、自分の内側にいる自分と向き合いながら生きる──そのスタンスが、アルバム全体を通して流れているテーマだと思います。
──そういう意味では、ヒグチさんと同世代の方々からの反応はいかがでしたか?
ヒグチ:お手紙をいただくことが多いのですが、その中でも特に印象的だったものがあって。その方は夢を追いながら仕事がしんどくて、「辞めようか」と思っていた時期に私の曲をよく聴いてくださっていたそうなんです。私はてっきり、「この曲を聴いてもう一度頑張ろうと思えた」というお話なのかなと思ったら、違っていて。「辞めてしまったら、頑張っていた頃の自分──その曲を聴きながら踏ん張っていた自分に、もう会えなくなるのが悲しい」という内容だったんですね。
年齢を重ねると、大きな事件よりも、こうしたほんの小さな視点の変化……曲の受け取り方や、そのときの心の状態が、実はすごく大きな意味を持ってくる。その感覚を、わざわざ手紙にして伝えてくださったことに胸を打たれましたし、自分も一緒に大人になっているのだな、一緒に年齢を重ねているのだなと感じられて、とても嬉しかったです。
──サウンド面では、前作と比べてどんな挑戦やこだわりがありましたか?
ヒグチ:今回は、「この曲にどんな楽器を入れたいのか」「どういう音像にしたいのか」を、以前よりも具体的に考えるようになりました。これまで同様ピアノは基本的に自分で弾いているのですが、さまざまなスタジオで録音したので、いろんな性格のピアノに触れられて。同じメーカーでも個体によってまったく音が違うんです。その違いを味わうのがすごく面白かったですね。「この曲とあの曲は同じピアノだな」とか、耳のいい方なら分かる部分もあるはずなので、そうしたピアノそのものが持つキャラクターも聴きどころかなと思います
──今回は、ヒグチさんのリスニングスタイルについても伺いたくて。普段はどんなモニター環境で音楽を楽しんでいますか?
ヒグチ:曲作りのために最新の曲をチェックするときなど、家で音楽を聴くときは基本的にヘッドホンを使っています。ただ、作曲中はスピーカーで音を鳴らすことが多いです。耳を密閉した状態でデモを作っていると、イメージがそこで固定されてしまう気がして。純粋に音楽を楽しみたいときは、移動中にイヤホンで聴くことが多いですね。そもそも無音が好きなので、イヤホンをつけていても音を流さず歩いていることもありますが(笑)。家ではほとんど音楽を聴かないんですよ。
──ミュージシャンは、意外とそういう方も多いですよ。
ヒグチ:やっぱりそうなんですね。家で音楽が流れていると、気になりすぎちゃうんです。テレビから音楽が漏れ聞こえるだけでも、「誰が歌ってるんだろう?」「今の音なに?」って全部気になってしまう。特に日本語の曲だと言葉が耳に引っかかって、気持ちがそっちに持っていかれるんですよね。ながら聴きができないタイプなんです。
──そんなヒグチさんに、今回はオーディオテクニカの『ATH-TWX9MK2』を試していただきました。まずはファーストインプレッションから教えてもらえますか?
ヒグチ:まず、ケースのこのマットな質感にグッときました。こういう手触りがすごく好みで、あまりテカテカしていない落ち着いた雰囲気がいいなと。ブラックもホワイトも両方とも可愛いと思いました。形も少し独特で、角の落とし方や、開けたときにスッと斜めに入るラインがきれい。開閉も軽いし、本体そのものもすごく軽い。何より前面の5つのライトが印象的でしたね。
──このライトは除菌機能の状態も示していて、ケースを閉じるとUV除菌が作動するんです。
ヒグチ:え、そうなんですか? すごい……最高です。除菌したいです(笑)。
──カラーは白と黒、どちらが好みでしたか?
ヒグチ:うーん、迷いますね。普段から服も黒が多いので、黒はやっぱりしっくりきます。ただ、全身黒になりすぎるのも気になっていて。「イヤホンくらいは違う色でもいいのかな」と思うこともあるんです。『ATH-TWX9MK2』の白は、金色のアクセントが肌になじんで可愛いんですよ。
──装着感はいかがでしたか?
ヒグチ:耳に入る部分がカナル型ほど深くなくて、すごく優しいつけ心地でした。浅いとブレやすいのかなと思っていたのですが、『ATH-TWX9MK2』は全然ブレない。そこも大きなポイントでした。今回、新幹線で神戸から横浜までずっとつけていたのですが、それでもまったく疲れなくて。いつも使っているイヤホンは、長時間つけていると耳がすぐ疲れてしまうので、家ではあまり使わなかったんです。でもこれは本当にストレスがなくて、「家でも普通に使えるかもしれない」と思いました。
──『ATH-TWX9MK2』は新開発の「Pure Motion Driver™」を採用し、過渡特性や解像度の高さを追求したハイレゾ音源対応モデルです。実際に聴いてみた印象はいかがでしたか?
ヒグチ:いつも使っているイヤホンよりも、音がぐっと立体的に感じられました。普段のイヤホンだと音が中央にぎゅっと凝縮されて、塊のように聞こえることがあるのですが、これは広くて奥行きのある空間に音が配置されているような印象でした。ドラムはドラム、ギターはギターと、ひとつひとつの音の位置も分かりやすいですね。細部がちゃんと拾われている感覚もありますし、レコーディング後に音を確認するイヤホンとしても重宝しそうだなと思いました。
──ちなみに、この『ATH-TWX9MK2』でまず聴いてほしい『私宝主義』の1曲を挙げるとしたら?
ヒグチ:アルバムの最後に収録した「ぼくらが一番美しかったとき」ですね。ストリングスを生で録っているので、弦の質感や空気の揺れがすごく伝わると思います。それから「雨が満ちれば」。チェロのボウイングがけっこう癖強めなんですよ。『ATH-TWX9MK2』だと、そういうニュアンスまでしっかり感じられるので、ぜひ聴いてみてほしいです。
──ヒグチさんは普段、ヘッドフォンやイヤホンを選ぶとき、リファレンスとして聴く音楽は決まっていますか?
ヒグチ:自分の曲を聴くことが多いですね。「どう聴こえてほしいか」が明確ですし、制作過程で何度も聴いているので比較しやすいんです。なので今回は『私宝主義』と、高木正勝さんの『Marginalia』をよく聴いていました。ピアノの響きの中に自然音が入っている作品で、まずピアノの鳴り方を確かめたかったんです。
ピアノって本来、弦にフェルトのハンマーが触れる音まで全部入っているはずなんですよ。でも、それをしっかり聴き取るのはなかなか難しくて。一番わかりやすいのはペダルを外す時の音。すごく小さいけれど、ピアノ弾きには気になる音なんですよね(笑)。
『ATH-TWX9MK2』では、その空間の音まで自然に聴こえる気がしました。逆にそれが入っていないと、エレピみたいに感じてしまうこともある。ギターも同じで、指が弦に触れるキュッという音だったり、楽器の周りに存在している細かいノイズが聴こえてくると、音のリアルさが全然違うんですよね。
──いい環境で聴く人が増えたら、音作りへのモチベーションやこだわりも変わりそうですか?
ヒグチ:変わると思います。私の声は情報量が多いタイプなので、本当はいい音で聴いてほしいんです。もちろん、どれだけイヤホンやスピーカーに投資するかは人それぞれですが(笑)、高音質で聴くことがもっと一般的になれば、機材も手に取りやすくなるはずですし、「このストリングス、本当に丁寧に録っているんだよ」とか、もっと伝えたいことが増える気がします。聴く環境が変わるだけで音の見え方は全然違うので、そういう機会が広がるといいなと思います。
──『ATH-TWX9MK2』のノイズキャンセリング(NC)の印象はいかがでしたか?
ヒグチ:私はノイキャンがないとしんどいタイプなんですよ。飛行機や新幹線など、とにかく周囲の音が苦手で……普段からほぼ常に使っています。というか、周囲の音をできるだけ遮断したくて。人の話し声など、いろんな音がどうしても気になってしまうんですよね。歌詞を書くときも、外で誰かがいる気配だけ感じていたいので、イヤホンをつけていることが多いです。だから「疲れないイヤホン」は本当に重要で、『ATH-TWX9MK2』のノイズキャンセリングはその点がとても良かったです。
──『ATH-TWX9MK2』には低遅延モードも搭載されていて、タイミングがシビアなゲームでもズレを感じにくい仕様です。ヒグチさんは普段ゲームもされますか?
ヒグチ:やりますよ。すごくハマっていた時期もあるくらい。Nintendo Switchで遊ぶことが多いのですが、Bluetoothイヤホンが使えるようになったときは本当に嬉しかったですね。特に『スプラトゥーン』は、音のタイミングがかなり大事なんです。潜っているときの音など、画面に映らなくても聴けば分かる情報がいろいろあって。でもBluetoothだと遅延が出ることがあって、チェーン(遅れ方)が違うだけでプレイが難しくなるんです。『ATH-TWX9MK2』でも試してみたいですね。『スプラトゥーン』、もっと上手くなるかもしれない(笑)。
──ユーザー目線に立ったとき、このイヤホンはどんな人に勧めたいですか?
ヒグチ:まず、日常的に音楽をよく聴く人ですね。ただたくさん聴くだけではなく、もう一段深い楽しみ方を求める人に試してみてほしいです。私の音楽に限らず、一度作品を聴いてもらうところから始まりますが、その先にある楽器の鳴り方やアレンジの細部まで味わいたい人にはすごく合うと思います。
それに、「今の楽しみには満足しているけれど、音楽の奥にあるもう一歩先の世界も知りたい」という人にもおすすめです。『ATH-TWX9MK2』は、その“先の楽しみ”を開いてくれるはず。人生で初めてのイヤホンとしては贅沢かもしれませんが、これからの音楽体験を広げたいなら、心強い相棒になってくれると思います。
──では、この『ATH-TWX9MK2』で『私宝主義』を聴くとき、どんなポイントに注目してほしいかを最後に聞かせてください。
ヒグチ:発売から1カ月ほど経って、歌詞やアレンジはすでに深く聴き込んでくださっている方が多いと思います。なので、このイヤホンでは演奏しているミュージシャンの存在に注目してほしいですね。「この曲はこの人が弾いている」という気づきが、「じゃあこのミュージシャンの他の作品も聴いてみよう」という広がりにつながって、音楽の楽しみ方が一気に深くなると思うんです。
最近は配信でも演奏クレジットが見られるようになりましたよね。CDが減って、しばらく演奏者の名前がどこにも書かれない時代があったので、私はずっとクレジット文化が戻ることを願っていました。ようやく辿れるようになった今こそ、ぜひ活用してほしい。
『ATH-TWX9MK2』は、一人ひとりのミュージシャンの音が本当にクリアに“見える”イヤホンなので、そこから推しのミュージシャンを見つけてもらえたら嬉しいです。
※1:https://realsound.jp/2025/08/post-2113327.html
商品&キャンペーン情報 (最後には読者プレゼント情報も!)
◯商品情報
オーディオテクニカ/『ATH-TWX9MK2』オーディオテクニカがフラッグシップと位置づけるワイヤレスイヤホンで、新開発の「Pure Motion Driver™️」を搭載。これにより「過渡特性」を高めており、高音域から中低域までクリアな音を届けることで、「音の世界に没入できる」性能を備えるイヤホンだ。インタビューでヒグチアイさんが驚いていた深紫外線照射による自動除菌システムや、耳に自然とフィットする「キャビティフィット設計」など機能・機構にもこだわりが満載。なお、撮影時の余談として12種類ものイヤーピースが付属しているなどの細かい配慮にヒグチアイさんも感嘆していた。まさに、これ一台あれば音楽ライフは豊かになるアイテムだ。価格はオープン(公式オンラインストア価格:3万8500円)、カラーはブラックとホワイトの2色で展開。
◯キャンペーン情報
2026年1月12日(月)まで『ATH-TWX9MK2』を購入すると5,000円分のデジタルギフトがもらえる“キャッシュバックキャンペーン”を実施中!この機会をお見逃しなく。
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ヒグチアイさん最新情報
◯リリース情報
ヒグチアイ 6thアルバム『私宝主義』 絶賛発売中!
<CD収録内容 ※初回限定盤、通常盤共通>
・初回限定盤[CD+BD]:PCCA-06430 6,600円(税込)
・通常盤[CDのみ]:PCCA-06431 3,300円(税込)1. わたしの代わり
2. 花束
3. バランス
4. 雨が満ちれば(TBSドラマストリーム『地獄の果てまで連れていく』主題歌)
5. エイジング
6. 一番にはなれない
7. 誰(映画『あのコはだぁれ?』主題歌)
8. 静かになるまで
9. 恋に恋せよ(Huluオリジナル『おとなになっても』主題歌)
10. もしももう一度恋をするのなら (ABEMA『さよならプロポーズ via ギリシャ』『さよならプロポーズ via スペイン』テーマソング)
11. ぼくらが一番美しかったとき(『アークナイツ』(中国大陸版)6.5周年記念イメージソング)
・アルバム『私宝主義』特設サイト
https://www.higuchiai.com/shihousyugi◯ライブ情報
HIGUCHIAI solo/band tour 2025-2026 “ただわたしがしあわせでありますように”-
「solo」
2026年1月10日(土) 広島 CLUB QUATTRO
2026年1月11日(日) 高松 オリーブホール
2026年1月17日(土) 福岡 RESOLA HALL
2026年1月24日(土) 札幌 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド
2026年1月31日(土) 長野 千石劇場「band」
2026年2月13日(金) 東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
2026年2月22日(日) 大阪 GORILLA HALL OSAKA
2026年2月23日(月祝) 名古屋 NAGOYA ReNY limited
2026年3月15日(日) 韓国 Shinhan Card SOL Pay Square


























