のん、将棋のために家族を捨てた父と激突 復讐物語がついに完結『ミス・キング』最終話

のんが主演を務めるABEMAオリジナルドラマ『MISS KING / ミス・キング』最終回は、飛鳥(のん)と彰一(中村獅童)の親子ゲンカに終止符が打たれる。史上初の女性棋士となるまでの最終関門・棋士編入試験の最後に待ち受けていたのは、実の父であり、復讐の相手でもある彰一だった。
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最終対局の直前、飛鳥は衝撃の事実を知ることとなる。それは、彰一の自伝から削除された原稿に書かれていた本心。かつて、1年以上勝ち星を上げられず引退の瀬戸際にあった彰一は、愛する妻の桂子(奥貫薫)と飛鳥の家族を手放すことで自分自身がまた強くなれるという邪な黒い感情に囚われていた。そこに至るまでには、彰一が長年たどり着けなかった至高の手を、まだ7歳の飛鳥という“天才”が打っていたという嫉妬、恐怖から目を背けることで自分の将棋に集中するという意味もあったのだろう。家族よりも将棋を選ぶ、という将棋に呪われた化け物がそこにはいた。
彰一への復讐心、憎しみのエネルギーを武器にここまで勝ち上がってきた飛鳥。同じく将棋に呪われた者として彰一の気持ちが分かる藤堂(藤木直人)の心配をよそに、飛鳥の気持ちは「クーーーーーッソ、ムカつきました!」と自分に酔ってるだけの“スーパークソ自分主義野郎”=彰一を倒す覚悟ができていた。
日本中が注目する2人の対局がついに幕を開ける。序盤、怒涛の攻めを見せる飛鳥だったが、いつの間にか攻守が入れ替わり徐々に劣勢となっていく。彰一からの迫撃の王手に成す術なしの飛鳥だったが、しぶとく切り返し、形成逆転の王手を仕掛ける。詰みとなったのは、飛車の駒。自由にまっすぐどこまでも進めることから、彰一が名前につけた“飛鳥の駒”だ。
その天才の片鱗に恐怖していた彰一は、今ではそれが嬉しいといったように安らかな表情を浮かべる。対局中に彰一の口から発せられる「どうした飛鳥、もう終わりか」という言葉は、彰一の脳内での言葉という見せ方の部分もあるように思うが、投了後に彰一がかけた「強くなったな、飛鳥」という一言は、棋士として、父として、ようやく伝えられた本心である。撮影中、役としての関係性も考え、あまりのんとは話さないようにしていたという中村獅童。涙を溜めた瞳でのんを見つめ、溢れる感情を抑え込みながら思いを伝えその場を去っていく中村、感情が追いつかずにその場に座り込むのんとの対比が、壮絶な対局であったことを物語っている。
最終回のサブタイトルは「終わりと始まり」。将棋連盟の会長の座を辞任し、棋士としても引退する彰一と、女性初の棋士としてだけでなく、これから将棋界の歴史を作っていく存在の飛鳥。親子ゲンカの終わりと結城家の本当の親子としての始まりなど、多くのミーニングが考えられるが、辞めると宣言していた飛鳥が香(山口紗弥加)のもとで棋士としてさらなる高みへと挑んでいく姿に希望を感じた。
鉄斎(西岡徳馬)がかつての弟子である香に言った「ここから始まるんだろ、お前さんたちの時代が」という言葉。由奈(鳴海唯)や香が自問自答していた“超えられない壁”を超越し、飛鳥が切り拓いていった前人未到の道。それは女性の時代とも捉えられる一方で、「めんどくさいから、ちょー面白い」という一見すると矛盾しているように思える飛鳥の言葉は、例えばエンタメにおけるスポーツや音楽、お笑いなど、好きなものに熱中し夢を掴もうとする全ての人に当てはまる、ポジティブなメッセージだ。
最後に、SNSでもファンの間で話題になっていた、回を増すごとに『MISS KING』のタイトルロゴの中央線が右に伸びていく謎について。本当の意味は別にあるとして、筆者は自由にまっすぐどこまでも進んでいく飛車の駒=飛鳥を表しているのではないかと感じていた。『MISS KING』全8話の先も、飛鳥は道なき道を進んでいく。
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