上手すぎる「ドイツの広場」の絵、“おじいちゃん先生”の添削でどう変化? 力を抜いて魅力を引き出す技術に脱帽
YouTubeで「添削動画」が賑わっている。視聴者から寄せられた漫画やイラストについて、プロならではの視点で添削を行なうもので、素人ではなかなかわからない目から鱗の内容と、劇的なビフォー・アフターという視覚的な面白さが人気の要因だ。
そんななか、水彩画を中心とした絵画の添削を行なっているのが、海外にも人気を広げている水彩画家&絵画講師、“おじいちゃん先生”こと柴崎春通氏だ。柴崎氏は、1970年に和光大学芸術学科を卒業し、2001年には文化庁派遣在外研究員としてアメリカに留学。「The Art Students League of New York」等で水彩の研究を行なっていたキャリアを持つ。添削動画では常に描き手に寄り添った優しい語り口と、高い技術を惜しげもなく、わかりやすく伝えるお手本のクオリティの高さが相まって、多くのファンを獲得している。
10月21日に公開された最新動画「なぜあなたの絵は上手いのに退屈なのか|プロが1時間かけて教えた"魅力"の秘密」で添削されたのは、旅行時に訪れたドイツ・マルクト広場を描いた作品で、柴崎氏が「おっ、上手だね」とこぼすのも頷ける力作だ。素人目にはとても上手く描けているように思えるが、作者本人は「写真と比べるとパースが違う」と分析し、またその広場にいた「人物」について、描くのが難しくてカットしてしまったという。これに対して柴崎氏は、広場の盛り上がりを表現するためにも「人物はいた方がいい」として、実際に筆を取って描いていくことになった。
詳しくは動画を観てほしいところだが、冒頭から印象的なのは「力を抜く」というアドバイス。元の絵は正面に見える建物に力が入っており、それはそれで素晴らしいが、力を抜いてパースを大事に、広場に奥行きを作り、余った力で人物を描こう、という提案だ。今回のように写実的な絵でも、「何を見せたいか」がはっきりすれば、「何をどこまで細かく描くべきか(どこまで絵として説明すべきか)」が見えてくる。例えば、窓の反射などを細かく説明するより、単純化してしまった方がテーマが際立つこともある。実際、柴崎氏はサラサラと筆を走らせながら、「人で賑わう広場」の活気が伝わる絵を仕上げて見せた。
繰り返すように、元の作品も素晴らしいが、同じ写真を元に絵を描いても、「意識」によってこれほど違うメッセージが伝わる絵になるのかと驚く。自分では絵を描かない、という人でも審美眼が磨かれる動画で、世の中の見え方も少し変わってきそうな内容だ。気になる人はぜひチェックしてみよう。























