生活を彩る名作たち、2025年グッドデザイン賞「注目プロダクト」5選

2025年グッドデザイン賞「注目プロダクト」

 2025年度グッドデザイン賞の結果が発表された。今年は4月1日の募集開始から5,225件が審査対象となり、国内外のデザイン分野を代表する審査委員による二次審査を経て、全1,619件が受賞を果たした。

 各ユニット上位5件によって構成される「グッドデザイン・ベスト100」も選出され、さらに20のユニットから最優秀とされた20件の中から「グッドデザイン大賞」1件と「グッドデザイン金賞」19件が決定。加えて、「2025年日本国際博覧会」を契機に新設された「未来社会デザイン特別賞」などを含む特別賞33件、「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」などが選出された。

 ここでは、これら受賞作の中からガジェット・家電ジャンルの注目すべき5つのプロダクトをピックアップした。

“撮る喜び”を極限まで純化したモダン・カメラ『Sigma BF』

シグマ『Sigma BF』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 デジタルカメラが高機能化・複雑化するなかで、シグマが向き合ったのは「カメラとは何か」という根源的な問い。17世紀の「カメラ・オブスクラ」に着想を得て、レンズと暗箱という最もプリミティブな構造を現代的に再構築したのが『Sigma BF』だ。被写体を捉える主役をあくまでレンズに据え、ボディは“撮るための箱”として極限まで純化されている。

 評価されたのは、機能を削ぎ落とす潔さと、それを支える構造美。アルミインゴットを約7時間かけて削り出す筐体は、精密機器としての剛性を担保しつつ、手にしたときの存在感が圧倒的だ。天面に配置されたのは撮影ボタンひとつのみ。サブ液晶に必要な情報が集約され、UIはシンプルで迷いがない。情報を削ぎ落とした画面は、撮る行為そのものに集中させるためのデザイン的回答でもある。

シグマ『Sigma BF』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 審査委員からは「もし現代に“カメラ”という製品が存在していなかったら、その原初の形はこのSigma BFになっていたかもしれない」と評され、iPodやiPhoneを初めて手にしたときのような新鮮な衝撃を与えるデザインとして高く評価された。

◼︎受賞対象の詳細
・プロデューサー:株式会社シグマ 代表取締役社長 山木和人
・ディレクター:イワサキデザインスタジオ 岩崎一郎
・デザイナー:イワサキデザインスタジオ 岩崎一郎+株式会社シグマ(UIデザイン) 
・発売:2025/04/24
・価格:385,000円 (オンラインショップ価格)
・詳細情報:https://www.sigma-global.com/jp/cameras/bf/
・受賞ページ:https://www.g-mark.org/gallery/winners/28619?years=2025

“浮くように動く”日本仕様のスリム掃除機『Dyson PencilVac Fluffycones™』

ダイソン『Dyson PencilVac Fluffycones™』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 ダイソンが新たに提案する『Dyson PencilVac Fluffycones™』は、日本の住宅事情を徹底的に研究して生まれたコードレス掃除機。本体質量1.8kg、直径38mmという極限までスリムな設計により、わずか高さ95mmの家具下や幅5cmの隙間にも自在に入り込む。短時間で効率的に掃除を終えたい日本の生活リズムに合わせ、軽快でストレスのない操作性を実現している。

 評価されたのは、軽さとパワー、そして形の美しさを共存させた設計思想。新開発のクリーナーヘッドには、4つの円すい形ブラシを搭載し、髪の毛の絡まりを防ぎながら、壁際や部屋の角までしっかり吸引。吸い取ったゴミは内部で自動的に圧縮され、シリンジ式の構造で手を汚さずにゴミ捨てができる。1.8kgという軽量ボディながら、ダイソン史上最小・最速の新モーターが搭載されており、パワフルな吸引力と全方位の取り回しを両立した。

ダイソン『Dyson PencilVac Fluffycones™』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 審査委員からは「性能に紐づく矩形フォルムが唯一無二の存在感を放つ」と高く評価され、従来の“モーターを中心に据えた造形”からさらに踏み込み、新しいデザインアイコンを創出した点に注目が集まった。エンジニアとデザイナーが高次元で融合した結果、“掃除機を超えたプロダクト”として完成した本機は、機能と造形の統合によって暮らしの中に美しさをもたらすダイソンの哲学を体現している。

◼︎受賞対象の詳細
・デザイナー:ダイソン 創業者 ジェームズ・ダイソン 
・発売:2025/05/22
・価格:オープンプライス
・詳細情報:https://www.dyson.co.jp/vacuum-cleaners/powerbroom/pencilvac/fluffycones
・受賞ページ:https://www.g-mark.org/gallery/winners/33737

安全と倫理を内包した次世代バッテリーのかたち『ナトリウムイオンモバイルバッテリー』

エレコム『ナトリウムイオンモバイルバッテリー』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 リチウムイオン電池の普及とともに、モバイルバッテリーは現代の生活に欠かせない存在となった。しかしその裏側では、発火事故や資源採掘に伴う環境破壊、人権侵害といった問題が深刻化している。エレコムは、そうした現実に正面から向き合い、持続可能なエネルギー利用のあり方を模索した。その答えとして生まれたのが、世界初の「ナトリウムイオンモバイルバッテリー」だ。

 評価されたのは、技術革新そのものに倫理を組み込んだ設計思想。リチウムやコバルトの代わりに、海水に豊富に含まれるナトリウムを採用しており、希少資源の使用を抑えるだけでなく、採掘に伴う環境負荷や労働搾取といった社会的課題の低減にも貢献している。安全性も極めて高く、釘を刺しても発火しにくい構造を持つほか、−35℃から50℃までの幅広い環境下で安定動作するタフさを実現。さらに約5,000回という高寿命で、一般的なモバイルバッテリーの約10倍もの耐久性を誇る。

エレコム『ナトリウムイオンモバイルバッテリー』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 外装にも環境への配慮が貫かれており、筐体には再生プラスチックを採用。表面にはマットな質感の樹脂を用い、傷や汚れが目立ちにくい仕上げとした。パッケージもプラスチックレスとし、管理された森林由来の紙素材を採用するなど、製品全体でサステナブルデザインを体現した。

◼︎受賞対象の詳細
・プロデューサー:エレコム株式会社 商品開発部 コンダクション課 田邉明寛
・ディレクター:エレコム株式会社 商品開発部 コンダクション課 パワーサプライデバイスチーム 山口武志/久保田貴之
・デザイナー:エレコム株式会社 商品開発部 コンダクション課 田邉明寛 
・発売:2025/03
・価格:オープンプライス
・詳細情報:https://www.elecom.co.jp/pickup/contents/00113/?loc=tpf20250313
・受賞ページ:https://www.g-mark.org/gallery/winners/27994?years=2025

プロのための没入型制作環境、XRヘッドマウントディスプレイ『SRH-S1』

ソニー『SRH-S1』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 ソニーがシーメンス社と共同開発した『SRH-S1』は、3D制作や工業デザインの現場に“現実と同等の没入環境”をもたらすXRヘッドマウントディスプレイ。4K OLEDマイクロディスプレイと独自のレンダリング技術を組み合わせ、質感や陰影の微細なニュアンスまで忠実に再現。6基のカメラとセンサーによる正確な位置認識と、リング型・ポインティング型コントローラーによる精密な操作性が、従来のVRヘッドセットを超えた“制作の道具”としての完成度を実現している。

 評価の中心となったのは、圧倒的な没入感と、人間工学的に練られた快適性の両立だ。ディスプレイの前後重量を緻密に設計し、装着時の支点を顔ではなく額と後頭部に置くことで、長時間の作業でも疲労を感じにくい。さらに、オープンシェード構造とフリップアップ機構を採用し、装着したまま現実世界を確認したり、休憩を挟んだりできるシームレスな操作性を備えた。曲面で包み込むような外観デザインは圧迫感を抑え、制作空間の中に自然に溶け込む。

 リング型コントローラーは指を通すだけで前後方向を自動検出し、手の延長のような感覚で仮想オブジェクトを操作できる。ポインティングコントローラーも高精度な入力を支え、複雑な3Dモデリング作業を直感的に行える設計だ。審査委員は「美しいデザインを生む道具は、美しくあるべきだ」と評し、機能・操作・造形が高次元で統合された“クリエイションの新しいスタンダード”として高く評価した。

◼︎受賞対象の詳細
・プロデューサー:ソニー株式会社 ニューコンテンツクリエイション事業部 XR事業部門
・ディレクター:ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター 高橋 正宏
・デザイナー:ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター 石津 雄登、野久尾 太一、高橋一 真、大野 恵里佳、石井 智裕、反畑 一平 
・発売:2025/01/23
・価格:オープンプライス
・詳細情報:https://www.sw.siemens.com/ja-JP/digital-transformation/sony-head-mounted-display-vr/
・受賞ページ:https://www.g-mark.org/gallery/winners/29646?years=2025

日常に溶け込む血圧計『HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計』

ファーウェイ『HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 医療機器としての信頼性と、日常的な使いやすさを両立させたスマートウォッチ、それが『HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計』。日本国内で管理医療機器認証を取得した血圧計を内蔵し、さらにプログラム医療機器として承認された心電図機能を搭載。自宅や外出先でも手軽に正確な血圧測定が行える。スマートウォッチとしての利便性を保ちながら、医療レベルの計測精度を実現した点が高く評価された。

 デザイン面では、前モデルから約10%の軽量化と約12%のスリム化を実現し、血圧計内蔵とは思えないコンパクトなフォルムに進化。カフへの空気送気も静音化され、夜間の自動測定時でも快適に使用できるよう配慮されている。TPU樹脂製のベルトは柔らかく、長時間の装着でも肌への負担が少ない。画面も1.82インチへと大型化しつつ、全体としてはよりスマートな印象に仕上げられている。

ファーウェイ『HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計』/GOOD DESIGN AWARD/(C)JDP

 また、新たに導入された「HUAWEI TruSense」生体センシングシステムにより、血圧測定の精度は前モデル比で約10%向上。−35℃〜50℃の環境にも耐える耐久性を備え、仕事中や外出先でも安定した測定が可能だ。医療機器としての信頼性を確保しつつ、生活の一部として自然に身につけられるデザインは、まさに「日常に医療を溶け込ませる」アプローチといえる。

 審査委員からは「これまで困難だった睡眠時の血圧測定を可能にした技術力」や「静音性と装着性の両立」が特に高く評価された。すでに医療現場での活用報告もあるなど、ウェアラブルデバイスの枠を超えて、医療と生活の橋渡しを担う製品として期待が寄せられている。

◼︎受賞対象の詳細
・プロデューサー:Huawei Device (Shen Zhen) Co., Ltd.
・ディレクター:Huawei Device (Shen Zhen) Co., Ltd.
・デザイナー:Huawei Device (Shen Zhen) Co., Ltd. 
・発売:2025/02/13
・価格:オープンプライス
・詳細情報:https://consumer.huawei.com/jp/offer/huawei-wearable/watch-d2-buy/
・受賞ページ:https://www.g-mark.org/gallery/winners/30605?years=2025

***

 これら全受賞対象は、11月1日より東京ミッドタウンで開催される「GOOD DESIGN EXHIBITION 2025」にて展示される予定だ。今年の「デザインの現在地」を知るうえで、見逃せない展示となりそうだ。

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