『トモダチ100人よべるかな?』は単なる芸能人の交友録ではない バラエティの枠を超えた心理実験が面白い

『賞金1億円の人脈&人望バトル トモダチ100人よべるかな?』©2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

 Amazon Prime Videoで2025年8月1日より独占配信中の『賞金1億円の人脈&人望バトル トモダチ100人よべるかな?』(全6話)は、賞金1億円を懸けた前代未聞のバラエティ番組。バナナマン・設楽統とバカリズムがMCを務め、さらば青春の光・森田哲矢、元A.B.C-Zの河合郁人、Mattの3人が、制限時間以内に最も多くの「トモダチ」を集める挑戦に挑む。この番組は、豪華芸能人の意外な交友関係、過酷なルールが引き起こす駆け引き、そして人間の本性が剥き出しになる、バラエティの枠を超えた心理実験だ。

※以下より本編のネタバレを一部含みます。未視聴の方はご注意ください。

 まず始まって開始数分で感じるのは緻密に作り込まれたセットの不穏な世界観。参加者が入室する際のドアに掲げられた「こんにちわ」の文字は、「こんにちは」ではなく「わ」という一文字の遊び心が不気味な雰囲気を醸し出す。まるで『GANTZ』や『イカゲーム』を彷彿とさせる壮大なスケール感で素人目にも死ぬほど高額な予算が投じられたことが窺える。モニターが参加者を俯瞰する配置や殺風景な待機部屋の無機質さはデスゲームさながらの緊張感を演出している。視聴者はこの異様な空間に引き込まれ、最初の瞬間から「何が起こるんだ?」と期待に胸を膨らませる。

『賞金1億円の人脈&人望バトル トモダチ100人よべるかな?』OFFICIAL本予告① 賞金1億円のバトル開幕|プライムビデオ
『賞金1億円の人脈&人望バトル トモダチ100人よべるかな?』OFFICIAL本予告②|プライムビデオ

 この番組の核心は、シンプルだが残酷なルール設計にある。プレイヤーは電話で「とりあえず来て欲しい」「できるだけ長くいて欲しい」とだけ伝え、芸能人・有名人のトモダチをスタジオに呼び出す。ルールの詳細は一切明かされず、呼ばれたトモダチたちは椅子も飲食物もない「ただの部屋」で待機を強いられる。このルールは参加者の人脈だけでなく、どれだけ信頼される「人望」があるかを試す。STARTO ENTERTAINMENTや若手芸人との強いパイプのある河合、モデルや女性アイドルなどに強い人脈を持つMatt、芸人だけでなくミュージシャンから格闘家まで異常な顔の広さを持つ森田と、三者三様の交友関係の違いが見どころの一つだ。

『賞金1億円の人脈&人望バトル トモダチ100人よべるかな?』悪魔的ルールブック|プライムビデオ

 さらにプレイヤーがトモダチに提供する水1杯は10万円、カレーは100万円と、優しさを見せるたびに賞金が減る仕組みだ。極めつけは「ねずみカード」で、トモダチが退出時に他のトモダチを連れて帰れば1人につき10万円を得られるという誘惑が、友情に亀裂を生む。また、中間発表でトモダチが最少のプレイヤーは即脱落、集めたトモダチも全員帰されるという非情なルールが緊張感を一層高める。

 例えば、相席スタート・山添寛(森田のトモダチ)が「ねずみカード」を手にチーム全員を説得するも失敗し、潔く負け顔を見せる姿は、バラエティのプロとしての覚悟とギャンブラー魂を垣間見せる。一方、森田が終盤で那須川天心に情報を託し、「誰が言うか」で信憑性が変わることを利用する戦略は、芸人としての鋭い洞察力を示す。これらの選択と葛藤は、視聴者に「自分ならどうする?」と問いかけ、単なるゲームを超えた心理実験の様相を呈する。

 番組の華は、3人が呼びつける総勢100人を超える豪華芸能人の登場だ。黒夢・清春の意外すぎる1人目登場、覇王・木村拓哉の圧倒的な存在感、NON STYLE・井上裕介やデヴィ夫人など、ジャンルを超えた顔ぶれが集結。特に、エピソード2で河合郁人が呼び出した木村拓哉の登場シーンは番組のハイライトだろう。電話で一度は苛立ちを見せた木村がまさかの降臨。全員が騒然とするなか、木村は一瞬でその場を「キムタク色」に染め上げる。すぐさま河合は200万のこぼれいくら丼、40万の水、60万のアイスコーヒー、さらに400万のビーズクッションを使い木村を接待。そこから「木村が頼んだものは全て注文する」という木村タイムがスタート。何十万もする水やビールを湯水の如く使う河合。もはや勝敗関係なく、いかに木村に嫌われないかだけが河合の生きる道なのだ。途中、元AKB48の前田敦子と2人きりで話す場面はまるで映画のワンシーンようだった。木村登場から1時間半以上が経過した頃、河合は夕方から仕事だという木村を気遣い帰ってもらう旨を報告。できる限りのヒントをチームに残し木村は退出していく。その後ろ姿はまさに主人公だった。その後木村拓哉はMC部屋に降臨。「(退出後に)久々にスタッフに覇気を使ったら、なんでも教えてくれた」とスタッフから情報を得たことを自身で語っている。

 一方、Mattのトモダチとして登場した小室哲哉や板垣李光人、森田のトモダチのKing Gnu 勢喜遊など、普段見られない組み合わせが新鮮な驚きを与える。普通の状況では一堂に介することのない他ジャンルの芸能人が、説明のない状況で困惑し、時に苛立ち、時にプレイヤーを信頼して待つ姿は、芸能界のリアルな人間関係を映し出す。オズワルド・伊藤俊介が蛙亭・イワクラを励ますために駆けつけるシーンや、亀梨和也が母の誕生日に花を届けてから河合のためにわざわざ現れるも門前払いされる場面は、友情の美しさと儚さ、しかしゲームの無情さと残酷さを同時に描き出す。

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