ENHYPEN初のVRコンサートツアーを体験 ENGENEにとって夢のような光景が広がる没入体験型ライブの見どころは

デジタル技術が日々発展を遂げ、メタバースを含むXR分野への関心も高まる中、その波動はエンターテインメントの形を着実に前進させている。8月8日より東京・大阪・愛知・福岡の4都市で開催されるENHYPEN初のVRコンサートツアー『ENHYPEN VR CONCERT : IMMERSION』は、世界でもまだ数少ない、究極の没入体験型ライブだ。本項では、事前に開催されたプレス向け試写会で本ライブを体験した筆者の視点から、本作の見どころをご紹介する。

日本と韓国を皮切りに世界40カ国の映画館で上演予定の本作は、昨年、同事務所のTOMORROW X TOGETHERによるグループ初のVRコンサートとして上演された『HYPERFOCUS : TOMORROW X TOGETHER VR CONCERT』も手がけ、99.5%の満足度を得たAMAZE社のVR技術によるもの。最大の特徴の一つはなんと言っても、リアルライブの最前列よりも至近距離で、メンバーの細かな表情まで見られることだ。なお、今回はAMAZE社のVR体験史上最多となる8曲のパフォーマンスが上演されるという。
鑑賞時間は約45分間。実際に体験してみると、あらゆる発見が一気に押し寄せてきた。専用のVRゴーグルを着用した後、上演開始前に認証リングに手を通すと、VRペンライトを握ることができる。もちろん上演中に自由に振って応援することが可能だ。
これから何が目の前で繰り広げられるのかとドキドキしながらVR世界の無機質な廊下に入ると、NI-KIを筆頭にメンバーが至近距離で登場してこちらをじっと見つめ、全員が横を通り抜けていく。その距離、数十センチほど。肌のきめ細やかさから瞳の透明感まで、本当にすぐ目の前にいるメンバーに見つめられているようなリアルさに驚き、思わず声が出そうになった。ENGENE(ENHYPENのファン)にとってはまるで夢のような光景が、このVRコンサートには広がっている。







冒頭の「No Doubt」は、広々としたシンプルかつ無機質な場所にオフィスのような机と椅子が並んだ空間でパフォーマンス。ビジュアルの美しさを間近で実感できるのもさることながら、これほど至近距離でENHYPENのパフォーマンスをしっかりと目撃できる機会もなかなかない。フォーメーションやメンバー一人ひとりのダンスの差異、さらにはこちらにまで波動が伝わってくるようなヒット(筋肉を弾く動き)の強さ(特にHEESEUNGのダンスのダイナミックさが目を引いた)まで、すべてを目の前で確かめることができる。
また、「Sweet Venom」をパフォーマンスしたビルの屋上のような場所では、鮮やかなネオンサインが夜の街の怪しげな輝きを演出。ステージの後ろでは、激しい稲妻がビルを突き破る光景やその衝撃音もリアルに響き渡る。直後、一気にダークな世界観に引き込む「Bite Me」では、ひときわ感慨深さと高揚感が押し寄せる、懐かしい衣装のチョイスも大きなポイントだ。その真相は劇場で確かめてみてほしい。



さらに、後半は“ユートピア”という言葉が浮かぶような、穏やかで美しい花畑を背景に、白シャツに黒ネクタイ、デニムという揃いの衣装で「Highway 1009」を含む数曲を歌唱。最後には一気に雰囲気を変え、室内施設で「Go Big or Go Home」を披露。真っ白な空間のあちこちにカラフルなストリートグラフィティが施された空間は、それまでの無機質なコンクリートの壁や近未来のような空間ともまた異なり、ラストまで見応え満載のコンサートに仕上がっていた。
どのシーンにも共通するが、VRコンサートではパフォーマンスだけでなく、天井から床まで、左から右まで、目の前にある空間をとことん見渡し、そのディテールやCGによる再現度の高さを楽しんでみるのも非常におすすめだ。もしかしたら一回では目が足りず、何度も映画館に足を運びたくなるかもしれない。細かな部分までこだわり抜かれた作品をどう味わい尽くすか――その楽しみ方は、あなた自身がどこに目を向けるかによって如何様にも変化する。
一方、本作にはこうしたパフォーマンスパートだけでなく、要所にMCも挟まれる。メンバーはその度に素の表情で体験者にいたずらを仕掛けたり、目の前まで手や顔を近づけたりしてくれるのだが、近づいてきた瞬間、本当にすぐ近くに手があるような感覚になるのが驚きだった。

上演後にはAMAZE社のイ・スンジュン(Steve Lee)CEOと本作を手がけたキム・キョンクック監督が登壇し、メディアインタビューに応じた。キム監督によれば、本作の制作期間はトータルで4~5カ月ほど。「今回のVRライブは、普通に試聴するパフォーマンスビデオを超えて、ENGENEの皆さんがアーティストとともに仮想空間で体験できることに重点に置いた」「単にライブコンサートを撮影するのではなく、実際にVRのステレオで撮影した後、高クオリティのCGと合成するプロセスで制作した」そうだ。
ENHYPENの登場シーンはグリーンスクリーンで撮影したのだが、観客からどう見えているかを想像しつつ、カメラを見ながら撮影しなければいけなかった点が難しかったポイントだという。キム監督はこの日、何度も「驚くべきことに、メンバーの皆さんが本当にすぐ理解してくださったので何の問題もなく進めることができた」と口にしていたが、何でもENHYPENメンバーは本作の制作に入る前、TOMORROW X TOGETHERのVRコンサートを視聴したそう。そして自分たちのVRコンサートを体感して「距離が近い以上に同じ空間にいるような感じがする」とそのリアルさに驚いていたようだ。特に、リーダーのJUNGWONは、あまりにもリアルな自分自身が目の前に現れて驚いていたのだとか。


イCEOは今後の展望について、劇場に足を運べない方向けにオンラインプラットフォームを活用したアクセスの拡大を行っていくとした上で、「これからは全てのアーティストがアルバムリリースやライブ開催のたびにVRコンサートも開催するようになれば」と話す。VRコンサートは通常のライブコンサートでは実現しづらいライブを実現できるため、アーティストにとっては自分たちの音楽をよりよく表現できるツールになり、ファンにとっても他では経験できないことを経験できる場となっていくのだろう。「音楽の聴き方がCDからストリーミングに変わったように、私たちは音楽を新しく経験できるように変えていきたいと思っています。そして、日本国内でも日本のアーティストたちがそういうものを作って流通できる時代が来ると信じています」――イCEOの言葉を最後に、試写会は幕を閉じた。
『ENHYPEN VR CONCERT : IMMERSION』は、8月8日より東京、大阪、愛知、福岡の4都市の映画館で上演される。本作は、ENGENEはもちろん、コアなファンではないがENHYPENの曲は好きで聴いているという方、K-POPを聴く機会は少ないがこうした最新技術に関心を寄せている方にもお勧めしたいと断言できるものだ。ぜひ、この機会に新たな音楽体験の形を、そしてデジタルの可能性を体感してみてはいかがだろうか。
公式サイト:https://enhypen.hybejapan.events/vr-immersion























