シリーズ初の常設施設『ポケパーク カントー』はファンの期待に応えられるか 成否のカギは“特別感の演出”に?

株式会社ポケモンは7月22日、「ポケットモンスター」(以下、「ポケモン」)シリーズの最新情報を届ける番組『Pokémon Presents 2025.7.22』のなかで、2026年春を目処に『ポケパーク カントー』を開業することを発表した。
ファンが待望していたシリーズ初の常設施設ということもあり、すでに大きな話題性を獲得している『ポケパーク カントー』。本稿では、同施設の開業/運営を通じ、株式会社ポケモンが描くシリーズの未来図について考えていく。
よみうりランド内に「ポケモン」シリーズ初の常設施設『ポケパーク カントー』が誕生
『ポケパーク カントー』は、ポケモンの魅力に触れることができる体験型のエンターテインメントパークだ。東京都稲城市と神奈川県川崎市にまたがる遊園地・よみうりランドの一角に約2.6ヘクタールの広さで誕生する予定で、「ポケモン」関連では初の常設施設となる。名前の由来は、シリーズの第1作『ポケットモンスター 赤・緑』の舞台となった「カントー地方」。よみうりランドが位置する「関東」になぞらえ、このように名付けられた。
『ポケパーク カントー』は、森のなかでポケモンたちの生態を観察できる「ポケモンフォレスト」と、グッズの購入などを楽しめる「カヤツリタウン」から構成されている。前者では、全長約500メートルの散策道が通る森のなかで、さまざまな表情・しぐさを見せるポケモンたちを間近で観察し、一緒に写真を撮ることができる。また、後者では、マーケットでのショッピングのほか、心くすぐる2つのアトラクション、ポケモンたちが集うパレードを楽しめる。両エリアには、600匹を超えるポケモンたちが存在しているという。

開業にあたり、株式会社ポケモンは、株式会社よみうりランドと株式会社読売新聞東京本社と協業。3社の連名で設立した「合同会社ポケパーク・カントー」として、同施設の運営にあたる。チケットは2025年秋ごろより販売開始予定。詳細は決まり次第、あらためてアナウンスされる。
「ポケモンたちとのふれあい」に潜むシリーズならではの課題
『Pokémon Presents 2025.7.22』で発表されたさまざまな新情報のなかでも、指折りのサプライズとなった『ポケパーク カントー』の開業。「ポケモン」からは過去、愛知県名古屋市に『Pokémon The Park 2005』が設けられていた(愛知万博のサテライト会場として開業された経緯もあり、約半年間でクローズ)時期もあったが、以降は類似するテーマパークが登場しておらず、ファンにとっては待望の施設となった面がある。
実際にSNS上には、「楽しそう」「絶対行きたい」「オープンが待ち遠しい」「(アクセスの良い)関東の人がうらやましい」といった好意的な声が相次いだ。2025年秋に開始予定とされるチケットの販売には、多くのファンが殺到すると予測される。開業からしばらくは、プレミアチケットとなる可能性もありそうだ。

一方で、年齢・性別を問わず支持される「ポケモン」シリーズの現在地を考えると、このような施設が世界中のどこにも存在していなかったことが不思議なくらいだった。今回のよみうりランド内での開業は、朝刊における連載や「ポケモン竜王戦」の開催など、現在に至るまでさまざまな形でコラボレーションを続けてきた読売新聞との取り組みの一環であると考えられるが、仮にこうした形ではなく、株式会社ポケモン単体で運営される独立したテーマパークだったとしても、充分に魅力的で採算の取れる施設となっていたのではないだろうか。
また、「他社が運営するテーマパーク内に専用のエリアとして誕生する」という建て付けは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン内に存在する任天堂の常設エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のそれと重なる。両者に共通するのは、IPホルダーから提供されるさまざまなコンテンツが屈指の人気を誇っているという点だ。もしかすると、株式会社ポケモンや任天堂は、遠くない未来に単独での施設の開業を見据えているのかもしれない。2024年10月、京都府宇治市に誕生した任天堂の博物館「ニンテンドーミュージアム」は、そうした同社の構想が具現化したものとも考えられる。
現時点では好意的に迎えられている今回の発表だが、開業後に相応の評判を獲得できるかは、施設内で得られる体験の良し悪しにかかっていると言える。シリーズのファンに愛されるために、『ポケパーク カントー』にはどのような要素が求められるだろうか。
私は“特別感の演出”がカギになると考える。他の場所ではできない体験こそが、『ポケパーク カントー』の無二の価値となるからだ。アトラクションに乗ること、パレードを鑑賞することなどはその一例である。
また、これら以外では、自身の推すポケモンたちとのふれあいも、ファンにとっては貴重な体験となるはずだ。たとえば、他のテーマパークと同様に「等身大のキャラクターたちと記念撮影ができる」といったイベントがあれば、来場者の満足度はより高まるのかもしれない。
しかしながら、ここには他のテーマパークにはない、「ポケモン」ならではの課題もある。同シリーズには、あまりにも多くのキャラクターたちが登場するため、全来場者の希望に応えられるようなラインアップを用意することが難しいのだ。仮に上述のようなふれあいの機会を設けるのならば、ファン一人ひとりの想いに向き合う方法を考える必要が出てくるだろう。もしもそのハードルをクリアすることができたならば、『ポケパーク カントー』は、これ以上ない特別感を演出することができるのかもしれない。
はたして『ポケパーク カントー』は、ファンの聖地となれるだろうか。開業まではあと8カ月ほど。今後の続報に注目したい。






















